読書感想文(2)カフカ著、高橋義孝訳『変身』(新潮文庫)

はじめに

こんにちは。笛の人です。
ご覧になってくださってありがとうございます。

この本を買ったきっかけは忘れました。有名な作品をとりあえず読もうと思ってたくさん本を買った時に選んだ一冊です。
今回読んだのは新潮文庫で、平成23年に改版されたものです。

感想

カフカの『変身』については「虫になる」ということだけ知っていました。なので私はてっきり青虫みたいになって冒険でもするのかと思っていました。しかし実際は全然違いました。虫になるという非現実的な現象が起こった後、こうも日常を描けるものなのかと感心しました。思っていたストーリーとは全然違いましたが、とても面白かったです。120ページほどの短い作品なので、他人にもオススメしやすいです。

この作品を読み始めた時、まず1ページ目で「うっ……」となりました。というのも、主人公が虫になった事を自覚する描写がちょっと気持ち悪かったからです。主人公視点で虫の外観について淡々と説明されていくので、リアリティがあって気持ち悪かったです。私はグロいのが苦手であり、虫もあまり得意ではないのでちょっと先を読み進めて良いものか心配になりました。この点については他人に勧めにくいかもしれません。

以下、ネタバレを含みます。

解説によると、父との関係が重視されるようですが、私が印象に残ったのは妹でした。妹は一番主人公に対して理解を持っています。お互いに気を遣い合っています。これについて初めは主人公が一方的に好意的に解釈しているだけなのかなと思いましたが、そうでもないのかなと途中から思うようになりました。

しかし最終的に主人公を見捨てる決断をするのも妹です。これまで一番主人公に理解を示していてくれた分、私はショックを受けました。でも、主人公はそれを受け入れて、元いた部屋に戻ろうとします。その後ろ姿はなんとも哀れな感じがします(虫だけど)。この後、残った三人の家族は別の場所でそれなりの生活を送っていけそうな終わり方をします。主人公がいなくなった事で、万事解決したような終わり方は、主人公の存在価値を否定しているようで、やはり心を痛めずにはいられません。私がこのように考えてしまうのは恐らく自分の家族と少し重ねてしまうことがあるからです。私はここまで家族に疎まれてはいない、と思います、多分。でも自分がこの場にいなければもうちょっと家族のまとまりが良くなるんじゃないかなぁと思うことがよくあります。これは私が家族を遮断してしまっているせいなのですが、この点については本当に申し訳ないと思っています。自分がいなくなれば皆楽になるんだろうなぁと思うと、自分の居場所というものについて考えさせられます。でも最近はかなり前向きなので、今居場所がなくてもそのうちなんとかなるんじゃないかなぁと思っています(詳細は長くなるので省略)。

話が逸れているので作品の話に戻します。主人公の哀れな点は、主人公自身は何も悪くないところです。なぜ虫になってしまったのか、全くわかりません。それまで家族のために懸命に働いてきたし、虫になっても尚家族に配慮しようとする主人公は、虫になったために人間(家族)に疎まれるのです。こういうのを不条理っていうのかなぁと思いますが、その辺りは詳しくないのでよくわかりません。でもリンゴを投げられるシーンとか、ほんとに辛いですよね。

おわりに

感想を書きながら「不条理」という言葉を使い、カミュを思い出しました。『異邦人』は積読になっているので、近いうちに読もうと思います。


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