桃太郎と受験生の天敵
こんにちは。札幌で英語講師をしているアラと言います。
さて、今日は禁断の話題、日本語の「は」と「が」のお話です。これの何が禁断なのかというと、副助詞「は」と格助詞「が」は共に主語を表しているのかどうかで論争というか、意見の不一致が学者さんの間でずーっとあるからです。
「は」「が」問題
例を見てみましょう。象は鼻が長い。僕はうなぎだ。こんにゃくは太らない。これらの文の主語はなんでしょう。「象は鼻が長い」の場合、長いのは鼻であって象じゃないですね。でも象が主語のように見える。「僕はうなぎだ。」は、ウナギサヤカというプロレスラーがいるので、「私はウナギだ。」は意外と普通の文かもしれないけど、苗字がウナギでない人がいつ言う文かというと、ファミレス行って「僕はカレーだ。」と言っているような場合です。そのような発言を聞いて「え、君カレーなの、人間に見えるけど。」と反応する人はいませんね。じゃあこの場合の「僕は」は何を表しているんでしょう。そして「こんにゃくは太らない。」ももちろんこんにゃく自体が痩せたり太ったりするはずがないですね。じゃあこの「は」にはどういう役割があるんでしょう。こういった例文を前にすると、中学校で習った主語と述語の分け方って何の意味があるんだろう、と思っちゃいますよね。
とはいえ、ここでは難しい日本語の話は置いといて、難しい英語の話をしましょう。難しい日本語の話はYouTubeの「ゆる言語学ラジオ」を聞いてみてください。
英作文の季節
さて、もう10月になって、受験生の英作文を添削する機会が増えました。そして英作文で常に受験生の頭痛の種となるのが定/不定の問題です。つまり「昨日、本を読んだ。」と言った時の「本」が”a book”なのか”the book”なのか、という悩みです。今年の受験生も悩みまくってます。
このa/anとtheのことを冠詞といいますが、日本語にはないものなので、直感や慣れだけで太刀打ちできる代物ではありません。と言って理屈でなんとかなるかというと、複数の理屈が絡み合っている上、慣用的な用法も多く、ま、受験生のみならず僕たち日本生まれ日本育ちの日本人にとって本当に難解なものです。
先程の例でいうと、話し手が「聞き手はこの本がどの本かわからないだろうな。」と思えば”a book”となります。これが不定名詞句です。逆に話し手が「聞き手はもうどの本のことかわかっているはずだ。」と思えば、”the book”となり、定名詞句になります。これが基本の考え方です。日本語ではどちらも「本」なのに、英語では区別しなくてはいけません。理屈だけでなく話し手の意図が重要な役割を持っていますから、文を正確に読む力がないと定/不定の判断ができず英作文で苦労することになります。
手がかりはある
しかし、確かに日本語に冠詞はないですが、定/不定の考え方は日本語にもあるのです。だから僕たちが理解できないなんてこともないのです。石居康男、桒原和生著『日本語を活用して学ぶ英文法』によると、英語は名詞の前にくっつく冠詞で定/不定を表現していましたが、日本語では名詞の後ろにくっつく「は」「が」を使って表すことがあるといいます。
本書で挙げられている例は、まさに日本人が腹の底から納得できる例でしたのでそのまま書いちゃいます。
昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
そう、『桃太郎』の出だしです。おじいさんとおばあさんが最初に登場する文では「が」が使われて、次の文では、もうどのじいさんとばあさんなのか聞き手は知ってますから、「は」になっていますね。英語ではa/anとtheで表現するものを、日本語では「は」「が」で表現しているわけです。
二次試験対策ができるのは今だけ!
これで定/不定の問題は解決!となるわけではないし、「は」と「が」の問題も全く解決しないのですが、何せ桃太郎で理解できる部分もあるんですから、僕らにとってまるで手が出ない話でもないのです。なので尻込みせずに英作文にチャレンジしてみてください。もうすぐ共通テスト対策をせざるを得ない時期が訪れます。それまでにとにかくたくさん書いてスピードを身につけましょう。
添削受けてね
その際、自分で英作文の出来を判断するのは難しいので、学校や塾の先生に添削してもらいましょう。ネイティブの先生だとかなーり添削が甘くなる印象がありますので注意しましょう。日本語で詳しい添削を書くにはとんでもないレベルの日本語力が必要ですし、本気の英語で添削すると高校生には読めません。なので日英語両方できる先生の添削を受けるのが英作文上達の早道です。
ではまた。
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