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受験英語学習法・オブ・ザ・デイ いまむかし

こんにちは。札幌で英語講師をしているアラと言います。

世の中なんでもそうですが、流行り廃りがありますね。服にしても食べ物にしても。そして受験の英語学習法もその例外じゃござんせん。今日はそんな英語学習法の流行り廃りを見ていきたいと思います。

パラグラフリーディング

二十年くらい前、僕が学生だった頃はパラグラフリーディングが流行ってました。パラグラフリーディングとは、パラグラフ、つまり段落ごとの内容を意識して読もうね、という読み方です。元ネタがどこらへんにあるのかは知りませんが、英語圏でよく行われる作文指導のやり方に、Five-paragraph essayというものがあり、導入→主張の補強や展開x3→結論というように5つの段落で文章を構成しよう、という指針なのですが、このあたりがパラグラフリーディングの前提っぽいですね。

パラグラフリーディングは文章が一定の形式に沿っている前提なので、当然、形式に沿っていない文章には当てはまりません。また、Five-paragraph essayとて万能ではなく、このような形式優先の書き方をすると、せっかくの考えの幅を狭めてしまう、という批判もあるわけです。なので、世の中の英文が全部Five-paragraph essayで書かれているはずもなく、パラグラフリーディングが使える場面も限られます。

しかし、カタカナで「パラグラフリーディングだ!」と言われれば、「お、なんかスゴそう!」と思うのが人情ですね。僕も当時は「パラグラフリーディングができないとダメなんだ」と思い込んで不安になったりしてましたね。しょーもない。

いやいや、パラグラフリーディングが役に立たないと言いたいのではないです。今となっては多くのテキストで当たり前のように載っているテクニックでもあるので、「なるほどなー、段落に注目するのかー」と納得できればそれいいのだろうと思います。日本語でもそうですが、段落分けって個人個人の感覚でやっていくものですからね、あまり思い詰める必要はないよ、ということです。

受験の英語はテストの英語

ただ、受験とはつまりテストですから、どうしてもテストに焦点を当てた学習法が注目を浴びがちです。英文を正確に理解しろ!と言われるのは、その英文の面白みを味わうためではなく、それがテストのために必要だからです。なので、どうしても図式的なものがウケます。毎度文句を言っている5文型もそうですよね。とても図式的。

そしてこれは今回の結論とも関わってくるのですが、図式的なものというのは、初めは「なるほど〜、そういうもんか〜」と感じるのですが、段々と退屈で、どこまで意味があるのかわからなくなってきます。美意識とか価値観が感じられないので、これを自分がやる意味があるんだろうか、と思っちゃうんですね。

パラグラフリーディングがもしも全ての文で使えるのなら、誰が読んでも同じってことですから、自分が読む意味あるのかな、と感じちゃうでしょうね。英語に限らず、図式的な対策は持続力がないなあと感じています。難関大学を目指す人は、勉強の入り口では図式的な考え方を学ぶとしても、そのままでいてはいけないと思います。理解が深まらないし、やる気もでないのではないでしょうか。

ディスコースマーカー、あるいは談話指標

パラグラフリーディングの次に流行ったのを覚えているのは、ディスコースマーカー、談話指標ですね。これもまた横文字&四文字熟語でばーんと突きつけられたら、「うわー、スゲー」ってなっちゃいますよね、人情として。

談話指標ってのは、「しかし」とか「つまり」とかそういう言葉のことです。話の方向性を指し示す言葉っていうことですね。話の方向性を指し示す言葉に注目すると話の方向性を掴めるよ、という、ま、そりゃそうだろ、という話。

今から10年くらい前の長文テキストにはよく載ってました、談話指標。受験生に、談話指標ってどういう意味なんですかって質問されたのを覚えています。元は言語学の語用論の用語なんでしょうかね、よく知りません。いずれにしても、かっこいい響きの専門用語を受験参考書の世界に持ってきて、それが大当たりしたってわけです。流石に「つまり」程度の表現をわざわざ談話指標と呼ぶのは面倒なのか、最近のテキストでは目にしなくなりました。

じゃあ今時の学習法は?

では、今流行りの英語学習法はなんでしょう。僕は「音読」だろうと思います。音読とはもちろん、声に出して英文を読むことです。今はどのテキストにも音読の重要性が謳われているほど流行っていると思います。

音読は横文字でも四文字熟語でもないせいか、僕はあんまり「うわー」ってなりませんでした。「ふーん」て感じです。僕自身は今でも音読をします。今ひとつ読書に集中できないときや、文の意味がうまくとれないときなんかにやりますね。お風呂で本を読むのでそのときは特にやっています。なので別に音読に効果がないなどと不遜なことは思っていません。やって損はないと思います。

因果関係を示せとまではいわないが…

ただね、やっぱり流行り物ならではの落とし穴はあると思っています。音読も流行り物にありがちな過剰評価を受けていると思うのです。今はYouTubeの教育系チャンネルでも音読のおかげで点数が伸びた!という話が当たり前のように語られていますが、さて、それって本当なんでしょうか? どうやって音読と点数の伸びの関係性を発見したんでしょうか?

単語帳を頑張ったので模試で点が伸びたことを確かめるには、単語テストをやってみれば、ま、無関係ではないだろう、と思えます。単語テストでも模試でも点が良ければ、両者に関係があってもおかしくないと言えそうです。同様に英検準一級が取れれば、ま、出鱈目な読み方はしてないよね、と思えます。では何をやったら、音読ができていることを確かめられるんでしょう? ちょっと思いつきませんよね。

今は音読が流行っていることもあり、ちょっと大袈裟に効果が謳われているように感じます。そんなに素晴らしい効果がある方法を、過去の受験生たちはどうして発見できなかったんでしょうか。

僕は音読に効果があると思っていますが、確かめようのないことでもあるので、生徒さんたちにはあまり強くお勧めしません。長文を読んだら一、二度声に出して読んでみたら、という程度です。英語の音声を追っかけて読むシャドーイングもそうですが、とにかく手応えがないので続きにくい学習法だと思います。気分転換的にちょっとやるのはとても良いと思いますが、1日30分!みたいにがっつり毎日の学習に組み込むのは難しいでしょう。飽きちゃう。

教える側にとって都合が良すぎる

また、成果を確認しずらいやりかたというのは、教える側にとっても大きな罠になってしまうと思います。音読をやったが点が伸びなかった、という人がいた時、「それは音読の量が足りないのだ。」と言えば簡単に責任を回避できてしまいます。もちろん本当にいろいろ足りなかったのかもしれないけどね。

勉強なんてどこまでいっても本人の頑張りが全てですが、とはいえ、特定の学習法をお勧めする以上は、あまり言い訳はしたくないものですよね。もちろん音読以外全否定の背水の陣で望む必要なんてないですよ。要は絶対の攻略法が存在しないってだけで、受験生は結果を出したいなら全部やれっていう話なんですから。

じゃあ、どうすりゃいーの

勉強を続けられるという点を重視するべきだ、と個人的には思っています。その際に重要なのは、手応え、楽しさ、高めの難易度の三つだろうと考えます。この三つが具体的にどういう作業になるのかは、人によって違うのでしょう。なのでどうしたって試行錯誤が必要です。時間がかかるのです。まずは勉強が続く環境づくりをを意識して、効率とか流行とかはその後考えるくらいでいい。音読が上手くいっているかどうか気にするよりも、まずは勉強時間を増やす工夫をしていきましょうね。

あ、音読に効果がないなんて思ってないですよ、そこんとこ誤解なきよう、くれぐれも。

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