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相席屋にはもう行かない。

はじめましての男女が仲良くなる場を相席屋とか相席居酒屋というらしい。接客が目的のキャバクラとかホストクラブとは違う。女性は基本的に無料で席を陣取ることができ、男性がその分高いをお金を出すシステムで成り立っている。

ある日相席屋に猛烈な興味を持った。というのも、友人が相席屋で出会った人と結婚するというからだ。上記のシステムは頭に入っていた。しかしネット上の情報と現場に行くのはやはり違うはず。相席屋童貞の私はネット上で入念に調べてからぼったくられなさそうなお店を慎重に選んだ。1軍の服に身を包み、お気に入りの時計をはめ、ガチガチのワックスで向かうことにした。

店に着くなり、薄暗い店内の暖かい照明、重低音が鳴り響くBGM、きつめの香水の匂い、五感がもぎ取られ帰りたくなる。入り口で何度か後戻りしたが意を決して中に入っていく。
「はじめてですか?お店のシステムを紹介させていただきます。」どうやら調べてきた通り、ぼったくられなさそうだ。
「今ですと男性一人、女性二人の席にすぐにご案内できます。」落ち着いて考える。雰囲気に飲まれてYESと答えちゃいけない。男性と出会いに来たわけじゃない、だから断る。
「少しお待ちいだたきますが、女性一人の席にご案内できます。その際は少しグレードが下がってしまいますがよろしいでしょうか。」ん?落ち着け、なんだグレードって。入場の時にテストでもしたのか、センター試験があるのか、面接をくぐり抜けてきたのか。「お願いします。」案内されてわかったが店員の主観で容姿の段階分けをしているらしい。

一席目は年上の女性。なんでも、相席屋でカウンセラーとのカウンセリングを行うらしい。出会う目的ではなかったようだ。世間話をして次の席へ。
二席目も年上の女性。お店によく来るというOLだった。趣味の話で意気投合し連絡先を交換。そのまま二軒目に向かうことに。
一席目と二席目の待ち時間が異様に長く、その時間も料金が発生しており、予想より高い会計だったが軍資金は超えなかったため安堵する。今思うと、それがぼったくりなんだろう。女性の連絡先を手に入れた喜びから、その時はお金のことは気にしていなかった。

二軒目は近くの居酒屋へ。飲食代のみ請求されるから安心して居座ることができる。仕事の話や旅行の話などで盛り上がり、これは脈あり!と思い、後日のデートを提案してみる。女性はすぐに快諾してくれた。気分は有頂天、うはうはだ。会計でも男を見せようと全額支払ったが、気分が良かったからその時もお金のことは気にしなかった。

怖いのはそこから。帰路でお礼のLINEをして返事を心待ちにしていた。携帯を気にしながら帰るが、返事がないまま家に着いてしまった。どれだけ待ってもその日は返事が来なかった。連絡先が間違ってたか、なんて考えてるうちに眠ってしまった。次の日、1件だけLINEが来ていた。「右の鼻から鼻毛が出てる。」

その後一切返事がないまま、デートもなくなった。鼻毛のケアをして行かなかった私が悪いが、鼻毛を指摘されるだけに数万円払ったと思うと割高な気がする。だから相席屋にはもう行かない。





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