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声が出ちゃう
はじめに断っておくが、私はJAZZピアニストを大いに尊敬している。何千時間もの練習の積み重ねから繰り広げられる超絶技巧と表現力は天下一品だ。聞いていて引き込まれる演奏は到底真似できない。
ただ、JAZZライブに行くとたまーに出会う人がいる。それは声が出ちゃう人だ。決してバカにしているわけじゃない。演奏中にうめき声のような「ウウ」や「ァァ」の声は聞き慣れない人もいるかもしれないが、僕はただシンプルにすごいなと思う。考えてみればわかることだが、楽譜を指で覚えて演奏するクラシックと即興で演奏するJAZZは脳のにかかる負荷が違う。まるで会話をするように演奏しているため指を動かす運動野だけじゃなく言語野にも興奮が伝わっているんだと思う。
そんな負荷状態で声がでちゃう体験は私にあるだろうか。足の小指をぶつけた時は悶えるような声、お腹が痛い時はうめくような声がでることはある。ただJAZZ演奏とはカッコ良さが違う。考え事をした後は「んーー、」と高めの声を出すことがあるが、出ちゃうではなく明らかに出している。注目を集めるためなのか、自分の声を聞いて我に帰るためなのかわからないが、これもJAZZとは違う。社会性を保つために声が漏れ出ないよう脳がブレーキをかけていて、そのブレーキを振り切るような興奮状態には入り込めない。
そんなことを考えていると、ふと思い出したことがある。脳がブレーキをかけず、声が出ちゃう体験。それは寝言だ。一人で寝ていると気づけないが、私はまあまあ寝言を言うらしい。「言葉じゃなかったけど、何か叫んでたよ」とか、「うなされてたよ」とかを相方に教えてもらう。
ある日相方が起きるや否やニコニコして聞いてくる。「昨日の寝言すごかったよ、なんて言ってたと思う?」。「わからない」。「hey siri タイマーを3分、だって笑」。そう、私はJAZZピアニストにはなれないのだ。
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