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コロナなんて大したことない。倒すための自分自身の心構えが大変なんだ。

コロナ陽性判定を受けて病院で隔離生活を送るにあたり、「隔離」という言葉が人によってはとてつもなく辛い意味を持ちます。
これが嫌な人はコロナにならないように、なってしまった人は、どうしても覚悟を持たないといけないことを、心情をなぞらえて書いています。


<ここがどういう環境か気にしてしまった>


「退院の条件ってなんだっけ?」
2020/8/1時点では国の基準で、こう定められていた。
「37.5℃以下で呼吸安定が24時間で、PCR検査をして陰性が出てから24時間後に再度検査して、24時間後の陰性結果が出たら退院可能」

「俺、解熱剤飲まなくても38℃超えなくなった。でも、遠いな。。。熱は楽になったし、倦怠感もない。でも第一段階の条件から外れてる。37.5℃前後では落ち着いてきているものの、遠い」
他の3人が検温の報告をしている声が聞こえるが、みんな37℃以下。

「え?俺だけやん」
「だめだ。考えないでおこう」
「覚悟してきただろ?」
「今出たら、抜け出して銭湯行った奴と一緒。気持ちわからなくはないが」
「でも、何より周りに迷惑をかけることが根っから嫌な性分だろ」


寝ようにも寝れない。
「昨日までみたいにSNSで書く?いや、外の世界を思い出して余計ダメかも(負のスパイラル化)」
「刑務所とかもこうか?でも、時間になれば外に出る時間あるよな?」
「でも刑務所はテレビ自由に見れないし、刑務所よりはマシか」
「でも、違う次元だな。。。」
「扁桃腺炎や鬱病の方が辛かったけど、これはこれで」
「鬱病で不安に襲われたとき、なにやったんだっけ?散歩だ。出れねぇ。。。」
「誰かと話した。でも病室じゃできない」
「身体動かしたな。動かせる?ヨガやったの効果的だったな」


と、携帯でヨガのポーズを探してベッドの上で深呼吸しながらやる。
少し落ち着いたが、テレビを見ようとしても、片耳イヤホンでしかできない環境が気になりだした。テレビも見れなくなった。
バラエティを見て笑うことが自分の活力なのだが、それもできない。

ふと思った。
「自分の経過や感情を書き起こしたら、心の整理ができることあったな」

と思い、これを書き出すこととした。
おかげでだいぶ落ち着いてきた。
夕食も喉を通らなかったが、次第に通るようになってきた。
だが、米はほとんど残してしまった。

逃げ道は見つけた。

落ち着いたところで連絡が来ていた親友の1人に返信して、葛藤を打ち明けた。
だいぶ上向きにして理解してもらい、励ましてくれたおかげで気が楽になった。

だが、寝る直前にまた襲われ、微妙に寝付けない。
自分の両手をそれぞれ強く握りしめ、手首の内側を上に向けて横に並べ、それを見つめながら

「頑張れ俺!」
「逃げ道はない!」
「勝つしか道はない!」
「自分自身の細胞は、コロナと戦ってくれている。だから熱も出る。自分の細胞が戦ってれてるのに、精神が負けてどうする」
(それがこのテーマのTOP画像です)

「頑張れ!」
「頑張れ!」
「頑張れ!」
「勝つ!」
「勝つ!」
「勝つ!」

ヨガのポーズで気持ちを落ち着かせては、

「頑張れ!」
「頑張れ!」
「頑張れ!」
「勝つ!」
「勝つ!」
「勝つ!」

何度も繰り返し、勇気づけるというよりは自分に諦めさせ、できる範囲のことしかできない、と意識づけている。

少し落ち着いたころ、まどろみから寝付くことができていた。


<3日目>


奇妙な夢を見た。
だが、肝心なところははっきりと覚えている。

誰かと会って話をする場面で、相手が体を寄せてきた。
ふと気づいて俺は自分から「いや、離れて」と体をそらし、相手に距離を取るように促した。
普通なら失礼な行為ともとれる。このコロナ時代ではおかしくないにしても、それまでなんともなく話をしていた人に対して、相手はいい気がはしない。
でも、言った。
「俺が陽性だから」と。
街中にいること自体が奇妙だが、はっきりと自分がそうである認識を取った。

次の場面では、知人女性に連絡事項を話し、預かっていたものを渡さなければいけない。
その女性は目を離すとどっかに移動していたりと、なかなか接触できない。
そうしているうちに別の女性が話かけてきた。
「何かあるなら伝えようか?」
その人に言伝をお願いした。そして預かっているものを渡そうとした時
「あ。やっぱ、これは渡せないです」
相手のものであるにも関わらず、渡せないと伝えた。
陽性者の自分が触ったものをそのままわたすことはできない。

そこで軽く眠りから意識が戻った。

「自分の内面に自分が励まされてる。自分自身は自覚してんじゃねーか。」

軽く笑えて来た。

「よし。これを意識しすぎても良くない。寝よう」


そして6時20分まで、思ったよりも寝ることができた。
起きてすぐにも一瞬不安が顔をのぞかせたが、
「ネガティブになるな」
「鬱病になる前の自分みたいにスーパーポジティブに」
「やれる、と決めてつっぱしる自分を取り戻すいい機会」
「鬱病後は自分に甘えることをしてきたが、あれからもう9年。そろそろいいんじゃないか」
こぶしを握って
「頑張れ!」
「頑張れ!」
「頑張れ!」
言い聞かせた後に、落ち着かせるためにトイレに行った。


内部の自分がいっぱい戦ってくれたんだろう。起きた時の体温は37.3℃だった。看護婦さんからは「微熱ですね」と言われたが、一時期の高熱からはなんてことない数字だし、体も軽い。中身の細胞が戦ってくれてる数字だ、と誇らしく思えた。

という建前とは別に基準値の37.5℃を下回っていることに、そうとうな安堵感で胸をなでおろしてた。
でも、同部屋の3人はみな36℃中盤。
うらやましいと、究極的なないものねだりである。


携帯でプロ野球選手が感染、J選手が感染も試合決行していた、などのニュースを目にした。
「考えたら、数千人という感染者が同じ状況で苦しんで、軽傷であっても自分のような精神状態の人も戦ってるんだよな」と勝手に自分の弱さを基準に勝手に底上げを図ろうと、自分に言い聞かせ奮い立たせる。

朝食が運ばれてきた。
昨夜の食事が摂りづらかったことがよぎったのか、手が止まる。
牛乳もある。
おなかは空いている。ものすごく空いている。
でも、喉も乾燥でカラカラでさらに食指が動かない。

すぐに心が負けてしまう。
初日、あんだけ軽く平らげた食事が進まない。

味噌汁の蓋を開ける。
インスタントのあの味噌汁だ。だしのにおいがいい。口に運ぶと、美味しい。
においも味もする。
ゆっくりでいいから口に運ぼう。
戦ってくれてる細胞には栄養をあげないと。

すでに自分の中の心と細胞は細胞が主従関係的に上のようだ。


隔離入院する際、何が必要なのか、時間つぶしにどういうものがあればいいのか考えていた。

足りなかったのは、DVDプレーヤーでも充電器でも現金でもなく
俺自身の覚悟だった。

コロナへの、とかではなく、弱い自分が出てきたときの立て直す覚悟だった。
最近の自分は、自分にとことん甘えてきた。
鬱病後、初めて自分を奮い立たせた事業立ち上げに失敗した3年前に決定的に自分から気力が消え失せていた。

食事が運ばれてから40分。普段は早食いの自分が、ちまちまとかかり食べ終えた。
牛乳は残したが。


少し、自分を取り戻してきた。
長い戦いに備えて、心に、自分に打ち勝ち、落ち着かせて、のんびりと、リラックスして身体に思う存分コロナを倒してもらおう。そして、いっぱい自分自身を褒めてあげよう。

長い2日目だった。

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