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キーワードは「フラット」、少年から青年へと視座は高まっていく〜表現者たちの伏線Vol.3長利和季②〜

様々な発信活動をする方々に、その活動を続けるに至った「過去の伏線」と、今現在の活動から導かれる「未来の伏線」、2つの視点から迫るインタビュー「表現者たちの伏線」。第3回となる今回は、シンガーソングライターを経て、現在Calm Room代表を務め心理士、音楽家、ラジオパーソナリティなど様々な顔を持つ長利和季さん。第二話となる今回は、長利さんの中学〜高校時代のクラス内のポジション、その読書観から、その「フラット」なスタンスの根源を探っていく。(第一話はこちらから)

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ー自分のクラス内での「給食だけ食いにきて、掃除して帰るやつ」っていうポジションをある種道化的に捉えられたんだよね。

ヤケクソ勉強感というか、自分の中での鬱屈した内向的なムードはその後和らいでいくんですか?

徐々にだけど、その感じが和らいで行ったのは中3あたりかな。一緒に小学校から合唱をやってた双子の兄と、合唱で出会った男子の6人グループがあって。兄が学校帰りにそのグループを家に連れてきたりしてた。だから、学校は休んでいたけど、「友達と遊ぶ」っていう時間はあったんだよね。

人と関わる時間というか、気心知れた仲間ときゃっきゃする時間はあったわけですね。それはお菓子食べながらダベるみたいな感じですか?

いや、うちに集合してゲームが多かったかな。「スマブラ」とか「どう森」とか、みんなで遊べる系のもの。グループのうち6人中2人いる場所だし、なにかと「じゃあ長利家集合で」ってなることが多かったから。で、そういう時間があったことも作用したのか、中3ぐらいの時は内向的すぎる部分が薄れてきて、持ち直していったと思う。

それって決定的な何かはないけど、って感じですよね。なんとなくグラデーションで。

そうだね。今まで自分の人生に対して悲劇的な捉え方しかできてなかったのが、なんとなく喜劇的になっていったかな。

なるほど。なんかこの流れだとインタビュアーである自分が撃たれる気が笑

そうかも笑。ニッコニコでね、メディアの前でね笑(この下りの意味がわからない方は是非映画『joker』をご覧ください)。でもそれこそジョーカーみたいな感じで、自分のクラス内での「給食だけ食いにきて、掃除して帰るやつ」っていうポジションをある種道化的に捉えられたんだよね。完全にキャラクター化して、その中に自分が入るっていう。

それができるようになって、それができたことによってクラスの中に得た場もあった、っていうのが大きいですよね。

そうだね。かなり自覚的に「自分をエンターテイメントにしよう」って思ってた。あと、ある種決定的だったのが、このタイミングで音楽部に戻ることにしたことかも。小3の担任の合唱部の先生が、学校の外に合唱団を作っていて、そっちにはちょくちょく行ってたのね。で、中3に上がったタイミングで、学校の音楽部の方で、「コンクール出場のために、男声合唱が必要だ」っていう話を聞いて。そこで僕は、「やりたいです」って申し出て混ぜてもらった。その事実と、中学校の音楽部の先生の存在は大きかったと思う。その先生から「音楽の厳しさ」を教わった経験というか。

その厳しさっていうのは「期日までにクオリティを上げてやり切らなきゃいけない」みたいなことに対してですか?

それもあるね。合唱も吹奏楽も強い学校だったから、規律みたいなものがしっかりしていたし、その先生を頂点に置いた統率もあって。音楽を仕上げていくことって意味で、「厳しさ」を学んだ。

あ〜〜〜、強い吹部の先生だ笑

理解が早くてよかった笑。

そういう性格が変わるきっかけ的なことになっていることを踏まえると、やっぱり長利さんの中で音楽ってかなり自己肯定感の源な感じがしますね。

そうだね。「あいつ髪長くてキモいし学校来ないけど歌うまいよな」みたいな、一定のポジションを得やすい特性だったと思うしね、「歌」ってもの自体が。

わかりやすいですよね、ことスクールカースト内においては。その、特性というところでちょっと勉強に話を戻したいんですけど、「一番点数が取れた科目」ってなんですか?

国語かな。

ー特定の作品、というよりは膨大な量の読書をしたこと自体が、今にも影響しているかも。

それは現代文と古典の間でできるできないの差ってあったりしました?

いや、満遍なくできたかな。自分の中で「なんで国語が得意だったか」ってことを改めて振り返ると、内向的だった時期にずっと読書していたっていうのが大きかったと思っていて。

なるほど。どういう本を読んでました?新書っぽいものなのか、小説っぽいものなのか...

う〜んそれも満遍なくかな。小説で言うと推理小説系が好きだった。「怪盗ルパン」とか「シャーロック・ホームズ」とか。あとは「ダレン・シャン」とか「デルトラクエスト」とか、そういうのも読んでた笑。

うわーーーー!!懐かしい笑。あの毎巻ギラギラした色の...笑(デルトラクエスト)。結構海外文学が多めなんですね。

そうだね、日本文学っぽいものを読むようになるのは高校になってからだったかな。でも本当に活字をずっと追ってたというか。ひたすら読んでた。雑多に読んでたね。

その、「長利和季サブカルチャー史」的にこの頃読んですごく影響を受けた!みたいなものってあったりします?

特にこれ!ってものは、正直上げられないんだよね。本当に雑多に読み漁ってたから。ただ、割とクラシックなものの方が好きだったかも。特筆して今ここであげられないのは、フラストレーションの発散として読書をしてたっていうのが原因だと思う。勉強と同じく、「これが好きで読む!」じゃなくて「これしかないから読む」っていう感じだったから。当時は、あんまり前向きな気持ちで本を読んでなかったね。

あくまで「夢中になれるもの、没頭できる時間を作るもの」としての読書だったんですね。

あ〜そうだね。それが妥当かも知れない。作品の良し悪しに目を向ける時間や余裕はなかったかな。

でも、逆にいうと今やれって言われてできるスタンスの読書じゃなかったりしますよね。

そうだね。というか昔からそうやって読書してなかったとしたら今もっと抵抗感あると思うし、活字そのものに。特定の作品、というよりは膨大な量の読書をしたこと自体が、今にも影響しているかも。

結果的に「サブカル基礎体力」がしっかりついたんでしょうね、その経験を通して。

だと思う。それに付随して基礎知識とか語彙力もついていったように感じるし。

なるほど。さっきの自分を道化っぽく見るのもそうだし、作品から等距離に読書をするっていうのもそうですけど、ここでかなり長利さんっぽさの根源たる「フラット」なものの見方が出てきているような気がしますね。「自分史」的なものに対してすごく俯瞰して見れてるというか。その明確なタイミングが中3だったんだろうなっていう。

まあ中学校ってすごく多感な時期だしね。この時期に切り替わった性格が、今の自分の性格の骨格になってると思う。

長利和季1.0的な。

そう。「率先的に自虐してエンタメにする」とか「おちゃらけてお茶を濁す」とかっていう感じはこの辺からかな。

あと、個々の作品に対しての姿勢と、少し前におっしゃっていた自分の周りの人間に対しての姿勢に、共通するところがありますよね。それも「フラット」に見ているというか。それは音楽に対してもですか?

演るものに関しても聴くものに関しても、やっぱり特筆してってものはないかな。流行りとか友達が聴いてた音楽でいいと思うものを聴いてた。

ー誰とでも話せるし、誰とでも仲良いけど、誰にも誘われないし、誰とも遊ばないみたいな。

やっぱりそうなんですね。では、時系列をそろそろ進めて行きたいと思うんですが笑、高校受験ってどんな感じでした?

まず前提として全然出席日数が足りてないから笑、成績は問題無いんだけど、公立には受からなくて。あと学校に対する希望としてあったのは、プールがないこと。

水はトラウマっていうのがここで笑

伏線回収笑。プールの授業だけは嫌だったから。だからプールのない私立に進むことになって。そして高校生になった頃には、体調は相変わらず悪いものの、その体調の悪さを肯定的に武器として捉えられるようになっていったかな。

かなり「自分」というものが確立されてきた感じがありますね。

そう。そして、クラスの中のグループ、スクールカースト的なポジションもすごく中立なものになっていった。誰とでも話せるし、誰とでも仲良いけど、誰にも誘われないし、誰とも遊ばないみたいな。

それすっごくわかります、僕もそうだったので笑「一緒に俺も飯食ってもいい?」って言うとみんな受け入れてくれるけど、「一緒に飯食おうよ」とは誰も言ってくれない感じですよね。

そうそう。「別に長利がいてもいいけど、いないとダメなわけじゃない」っていう自由なポジション。これもうこの先ずっとこうなんだよね。

ー「あ、合唱以外の音楽もあるんだ!」「バンド組んで歌うってなんぞや」っていう。

そういう自分のポジションに、在学中から自覚的でした?

うん、在学中から思ってた。「今自分がこう見えるな、こう見えてるな」っていうことは分かってたし、気にしていた。授業中に「はい、◯人組になってください〜」みたいな時に、自分から「余ります」って申告して前に出たりして。それで「あいつおもしれーな」っていうコミュニケーションというか。内向的な自分も丸ごとネタにしていたところがあった。

「おれはもうドロップしてますよ」っていう笑

「長利和季は最初から一人だから、いいところに采配してくれみんな!」っていうスタンスでいた。もうそういう処世術だよね。1人でいるのはいいんだけど、「独りだ」って見られるのは嫌だったというか。

あ〜〜!処世術ってすごくしっくり来る表現ですね。なるほど。あと、高校で部活とはどうやって向き合っていくんですか?

高校一年の時にたまたま新歓時期のビラ配りを中庭で目にして、「軽音楽部」に出会うんだよ。それが結構自分の中でカルチャーショックだった。「あ、合唱以外の音楽もあるんだ!」「バンド組んで歌うってなんぞや」っていう。それで最初、パートはギターで入部した。

いや、この企画で取材させてもらう人ってなぜか皆さん今やってる楽器じゃないものから始めてるんですよね笑。なんなんでしょうね笑。それで楽器買ってもらって練習始めて、って感じですか?

いや、ありがたいことにね、双子の兄がギターを持ってて、でもその頃にはもう飽きてたから笑。「いらないからあげる」って言われて、それをもらったんだよね。

あ、そうだったんですね笑。ちなみに、初めて練習した曲ってなんですか?

1年は最初に課題曲みたいなのを練習するんだけど、うちの代は、Simple Planの「Perfect」だったね。その後、自分たちで初めて選んで練習したのは、DOSEの「修羅」だったかな。

出た〜〜〜!やっぱりみんなDOSEは通る道なんですね。

そのDOSEをやった時にボーカルがいなくて、僕がギターボーカルをやることになった。それからひとしきり部活に勤しんで、そして高2の時に先輩からの推薦で部長になった。で、このとき相変わらず外部の合唱団でも歌っていて。同じタイミングで、その合唱団の団長を任されるようになって。だから当時はかなり忙しかったかな。

じゃあもう高校の音楽界を統べる存在に笑

ドンだったね笑。もうその頃には結構部活の中でボーカリストとしての地位が確立されてきてて。どっちもちゃんと立場がありながら、なんとか両立していくことになる。

(続く)

合唱と軽音、2つの音楽活動を経て、「進路選択」という壁にぶつかることとなる長利さん。その経緯から、より直接的な「現在の伏線」について掘り下げる第3回は3/19更新予定。

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