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昔の新聞見出しはシャレていた~こどもの日の「マリ」をける少年とは?

 ときどき古い新聞スクラップをながめていると、見出しを付ける整理部(当時)のみなさんが、苦心しながら読者のアイキャッチを狙っていたことに気づき、その職人芸に驚かされます。
 5月5日の「こどもの日」に私が書いた記事が見つかりました。
 「さっそう武者人形」
 「全力で”しょうぶ”」
 「『マリ』をける少年」
 この見出しの記事は、1986年5月5日の地域版です。「第10回全日本少年サッカー愛知県大会」のワッペンとともに載っています。
 サッカー県大会の取材は前日4日でしたが、私は掲載日の「こどもの日」を意識していました。お決まりの試合の結果と雑感記事だけではなく、当代こども事情のような世相を織り込めないかと考えたのです。
 参加したチームの監督さんの了解を得て、4チームの計50人の小学生に当時人気だったファミコンゲームについて聞いて、「参加50選手にアンケート」としてコラム風の記事を付けたのです。
 もうおわかりでしょう。見出しはサッカーボールの「マリ」と、一世風靡(いっせいふうび)していたファミコンゲームの主人公「マリオ」をかけたものです。さらに、こどもの日ですから、武者人形と、端午の節句の菖蒲湯の掛詞(かけことば)で「しょうぶ」も盛り込む熱の入れようでした。
 アンケートの結果は、ファミコンを持っている子が41人で、パソコンの一人と合わせて84%が所有していました。「1日1時間以上遊びますか?」と聞いたところ、「ハイ」と答えた子はわずか3人だけ。記事では「さすがサッカー少年」と持ち上げつつ、30人が「親からやっちゃダメと言われているから」という事情も紹介しました。
 「視力が落ちて医者から止められている」という子もいました。付き添いの親に取材すると、「勉強とサッカー中心だから、ファミコンはたしなむ程度にしてほしい」と言っていました。
 当時は任天堂のファミリーコンピューター(ファミコン)発売から数年で、ゲーム中毒を心配する親が多かったと記憶しています。
 では、36年後の当世こども事情は、どう変わったでしょうか。いまはファミコンではなく、スマートホンを使いこなしている少年たちが多いでしょう。コンピューターゲームの人気ソフトも多彩です。
 コロナ禍で家に閉じこもりがちでしたが、ようやく野外のレジャーにも活気が出始めてきました。
 36年前の記事の端っこに小さな活字で見出しがありました。
 「きょうはこどもの日……外へ出て遊ぼうよ」
 今も昔も、大人の思いは変わらないものです。
(2022年5月5日)
 

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