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新聞の年始企画にみる2023年のトレンド~46地域版一覧表

 新聞社に勤務していたときのやりがい。そのひとつは年始の連載企画を書くことでした。地域版には記者、デスクとして関わってきたので、思いれもひとしおです。
 2023年の読売新聞の正月企画は多彩でしたが、ふるさとを見直す企画が多いという印象です。(読売新聞オンライン・沖縄県除く46都道府県版から)
 ■長野県版は「信州再生」
 長野県の長野版(中南信版)のタイトルは「Re:信州 この場所で」。Reは生まれ変わること、再生を意味するrebor(リーボン)です。ふるさと信州を再生させようと奮闘している人や伝統を再生している人を取り上げていました。
 元旦の初回は大阪から南信州の平谷村に移住した人の話。人口387人の村の再生へ向けて教育に力を入れようとしています。移住コーディネーターの主人公は志願して教育委員になり、山村留学、それも「親子留学」を受け入れる環境づくりに奔走しています。
 2回目の3日付は野沢温泉スキー場の再生。スキーブームだった1991~92年に110万人以上を集めたそうですが、2014~15年は38万人、20~21年は22万人まで落ち込んでいます。スキー場の開場100年を迎えた今年は、国内常連客と外国人客の受入れのため、設備投資を進めています。
 3回目(4日)は、生薬や加工食品に使われるオタネニンジンの国内最大産地の再生。佐久市や上田市の東信地域で栽培されている、別名「信州人参」だということを知りました。4回目(5日)は国宝・松本城近くの「裏町」エリアのにぎわい再生に動く会社員や学生ら。各地域に共通しているのは、地域住民がまず動いていることです。
 ■周年事業もタイミング
 秋田「秋田犬の100年」や関東大震災100年を節目とした都民版「水都 東京ものがたり」、宇奈月温泉開湯100年の冨山「宇奈月100年」、富士山の世界文化遺産登録から10年を迎えた山梨「世界遺産10年」、和歌山「空海 生誕1250年」、関門橋50歳を支えた技術者物語の山口「往来みらいへ」など盛りだくさんです。
 広島は今年、先進七か国首脳会議(G7)の開催地。「ヒロシマ発 伝統×革新」は、G7広島サミットをきっかけに文化も発信しようという内容です。
 ■私の「推し!」
 鹿児島県版「ひっとべ!鹿児島弁」は、ふるさとを見直す一丁目一番地です。元旦紙面の「ふるさとの言葉 次代に」「おもしてか!方言」の見出しに興味をそそられました。鹿児島弁検定や沖永良部島で文化庁が今月末に開催する「危機的な状況にある言語・方言サミット」が紹介されています。
 連載1回目(3日)は、鹿児島大など県内の大学生が方言の記録と保存のため発信している動画とネット辞書について。2回目(4日)は、鹿児島弁を使った地元企業のご当地テレビCMでした。
 「どけいっと」「よかくいまをこっきたな」
 意味不明の鹿児島弁の意味は、「どこ行くの」「良い車を買ったね」~。方言にはさすがの翻訳機も対応していないでしょうから、現地を訪ねて「かごっま弁」の文化を味わいたくなりました。
 地域ジャーナリズムの大切さを痛感しています。
(2023年1月5日)

読売新聞オンラインの地域版より抜粋

※併せてお読みください
 2022年1月4日の「最近新聞紙学~元旦の地域版から見えてくるもの」

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