見出し画像

アウシュビッツ強制収容所と杉原千畝の「人道の丘」~国家悪と個人の英断

 ピアノの詩人・ショパンは1831年にポーランド首都のワルシャワ陥落を聞き、祖国再興の思いで「革命のエチュード」を作曲しました。
 2005年5月、ポーランドが欧州連合(EU)に加盟して1年の現場を見るため、私はポーランドへ入りました。
 ポーランド南西部の14か所の経済特別区の一つ、バウブジフにはトヨタ自動車のポーランド工場が本格稼働していました。EU域内の大競争時代のなかで、海外からの企業誘致という「経済革命」の練習曲(エチュード)が流れ始めていたことを肌で感じました。
 この旅で、オシフィエンチムにあるアウシュビッツ強制収容所を訪れました。正式には国立オシフィエンチム博物館です。

国立オシフィエンチム博物館の案内書

 日本語案内書には、1939年9月の戦闘のあと、オシフィエンチム市一帯がドイツ第三帝国の一部に加えられ、同時にナチスは名前をアウシュビッツに変更したとありました。
 博物館の建物や保存された遺品を見て、ただただ胸が塞がれる思いでした。
 その後、岐阜県で勤務したときに八百津町にある「人道の丘公園」を訪ねました。公園内にある杉原千畝記念館に入り、館内を一巡する間に涙がこぼれてきました。
 杉原はナチスから逃れ、ポーランドからリトアニアへ逃亡してきたユダヤ人を救出するため、通過ビザを発給した外交官です。
 涙がこぼれたのは、本省の命令に背き、人道上拒否できないと領事館を退去後もホテルで渡航許可書を書き続けたという説明文を読んだときでした。
 一方ではナチスの非人道的な行いがあり、一方では省令に背いてまで人道を優先させたひとりの英断。戦争のただなかにあっても、できることがあるんだと強く感じたものです。
 表紙写真に国立オシフィエンチム博物館を使おうと思いましたが、ポーランドを訪ねた5月の広遠なる菜の花畑が目に焼き付いていましたので、青空の下でどこまでも続く黄色の絨毯の写真にしました。過去からも現在からも目をそらさないために…。
(2022年8月17日)
 14、15、16日付のnoteに引き続き、17日付の読売新聞地域版を一覧してみます。(記事・見出しに著作権があるため、項目のみの紹介です)
【北海道】100歳の元兵士、戦地の体験を証言
【青森】青森中央高演劇部が劇で青森空襲(1945年7月28日)伝える
【岩手】岩手大准教授に聞く 太平洋戦争とロシアのウクライナ侵攻の類似性は抑留、戦争犯罪
【秋田】64歳元教員女性が紙芝居で土崎空襲(1945年8月14日夜)紙芝居で読み聞かせ
【茨城】鹿島海軍航空隊旧庁舎の活用模索(映画「永遠の0」ロケ地で注目)
【群馬】戦艦陸奥の部材で造った鐘のある寺の慰霊祭で42歳女性が艦内の食事を再現(「陸奥の記憶」連載下)
【千葉】戦艦「武蔵」元少年兵の94歳男性の証言(「少年兵と戦艦武蔵」連載中)
【横浜】93歳男性らの証言(「人間爆弾桜花」連載4回目)
【山梨】91歳女性の証言
【長野】阿智村の満蒙開拓平和記念館で戦時中のポスター展示
【岐阜】熊野市の80歳男性作家、地元の戦争体験者からの聞き取りをまとめ、出版
【三重】岐阜県関市の73歳男性絵本作家、地元の従軍看護師で戦後、フローレンス・ナイチンゲール記章が送られた小野ゆき(1901~45年)に光あてる
【滋賀】98歳天台宗座主、平和の訴え。自身は滋賀海軍航空隊での訓練経験も
【京都】54歳女性が米国に集まった日章旗を遺族会に変換する取り組み進める
【奈良】薬師寺で見つかった陶製プレート。皇紀2598年の「五九八」の文字。1937年の日中戦争勃発からわずか1年で金属製から陶製へ世相反映
【鳥取】沖縄戦で戦死した兵士の万年筆が遺族のもとに届く
【広島】世界を旅して被爆体験を伝えている91歳男性の資料
【徳島】阿波市の98歳男性、満蒙開拓青少年義勇軍の体験語る
【香川】81歳女性、沖縄戦から送られた父のはがき
【愛媛】佐田岬半島の砲台や監視哨、見学ルート整備
【福岡】67歳男性が戦時中に使われた実物を収集。戦闘機「震雷」のタイヤなどで平和教育目指す
【長崎】旧佐世保無線電信所(針尾送信所)完成から100年。真珠湾攻撃の暗号を送信したとされる歴史の生き証人。11月にシンポジウム開催など存在を伝える動き進む
【大分】豊州戦史研究会の31歳男性。遺構のない大分海軍航空基地など米国立公文書館から取り寄せた映像で後世に伝える活動
【鹿児島】薩摩川内市・八重地区に入植した93歳女性らの記録{「開拓魂 八重地区の歩み」連載下)
 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?