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農業に見る選択と集中~愛知・あまイチゴ組合の取り組み~日本農業賞特別賞を受賞

 クリスマスに需要が増えるイチゴの話です。
 愛知県最大のイチゴ産地、愛西市と津島市の生産農家でつくる「あまイチゴ組合」は、もともと六つの生産組合でした。2014年に4組合に統合され、2017年に4組合がさらに統合して、「あまイチゴ組合」が誕生しています。
 「あま」というのは、愛知県東部の海部(あま)地方を表しています。組合員数は66人で、約800トンを出荷しています。最盛期に100人を超えていた組合員数は高齢化で減少していますが、農家1戸あたりの出荷量は44%増えています。6組合を統合する「集中」が理由のひとつです。
 これまで6組合でバラバラに売り先と交渉していましたが、一本化されて品質のバラツキもなくなってきました。スーパーが店頭に「あまイチゴ組合」の棚を確保してくれるようになります。出荷量が安定し、5個入りとか10個入り、業務用など「荷姿」を多様化できたため、地元のスーパーや大手製パン会社、コンビニチェーンへ取り引き先を広げることができました。
 もうひとつが「選択」です。各農家でバラバラだった品種を愛知県の育成品種「ゆめのか」一本にしたことで、集荷や栽培技術の共有化が進むというメリットが出ています。
 6組合当時は、生産農家から運ばれてくるイチゴの荷受けをする当番日数が年間130回という組合もあったそうです。統合してからは集荷場を1か所に集約したことで、荷受け当番の回数は年間15回に減りました。
 組合統合に尽力したJAあいち海部の村山靖園芸企画課長は、「合併への賛否があって、ライバル組合同士を統合することは難しかった」と振り返ります。ただ、栽培の時間が増えてイチゴの品質が良くなるといった効果も出ていると話していました。
 わが家の今年のクリスマスも「選択と集中」です。大粒で甘い「ゆめのか」ひとつで、気分はすっかりメリークリスマスです。
(2021年12月25日)
 ※ あまイチゴ組合は2022年1月31日、JA全中とNHK主催の日本農業賞集団組織の部で特別賞を受賞しました。

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