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第4章 個性的な企業群♪「信濃の国」の文化と経済(note4)

~目次~
第1章 県歌「信濃の国」秘話
第2章 文化圏と美術館
第3章 2022年の大遭遇~伝統の祭り
第4章 個性的な企業群★
第5章 地場産業
第6章 食と農
第7章 人国記~「信濃の国」では
第8章 教育県とは
第9章 長野県人会の活動
最終章 あとがきにかえて~名古屋と長野県との一体感

■信濃の国3番の歌詞
木曽の谷には真木茂り
諏訪の湖(うみ)には魚(うお)多し
民のかせぎも豊かにて
五穀の実らぬ里やある
しかのみならず桑とりて
蚕飼いの業(わざ)の打ちひらけ
細きよすがも軽(かろ)からぬ 
国の命を繋ぐなり
■諏訪式
 最近「諏訪式。」(小椋美恵子、亜紀書房)という、ちょっと変わった題名の書物を読みました。南北に長い長野県の中心にある諏訪地域(岡谷市や茅野市など)のクリエイティブな歩みをリポートした本です。諏訪は信州の中心部にあり、芯が強く、「ずく」(やる気)を惜しまない信州人の典型ともいわれています。
 著者は冒頭、信州人のお国自慢を紹介しています。有名な企業や店の創業者が「信州人なのだ」と誇らしげに筆者の小椋さんに語ったくだりです。
 『岩波書店,筑摩書房、みすず書房、養命酒、新宿中村屋、セイコーエプソン、ヤシカ、チノン、ハリウッド化粧品、ワシントン靴店、日比谷松本楼、ヨドバシカメラ、タケヤみそ、神州一味噌、清酒真澄、すかいらーく、ポテトチップスの湖池屋…』
 この本では、さらにさかのぼって、片倉製糸(現片倉工業)など製糸業から、「東洋のスイス」を目指した時計の諏訪精工舎、オルゴールの三協精機、カメラ・光学機器のヤシカ、チノンなど紹介。パルプの北澤工業(東洋バルヴ)やキッツ(旧北沢バルブ)や寒天工場など、ものづくりのDNAに迫っています。
 おもしろかったのは、東京・大森界隈の海苔問屋に諏訪からの出稼ぎが多いということでした。精勤ぶりが認められ、いまでは「岩波海苔店」「藤森商店」「五味商店」など諏訪でなじみの名字の看板が多いそうです。
■信州の恵みを生かした企業
 諏訪地域以外にもオンリーワンの企業があります。
 養命酒製造(駒ヶ根市)は中央アルプスの空木岳(うつぎだけ)の山ふところにあります。(表紙写真は2021年版カレンダーから)。以前、工場を見学したときは、生薬の原料などを学ぶことができました。売店には伊那谷の山ブドウを使った希少価値のあるワイン「紫輝(しき)」がありました。このワインは、近くの宮田村の栽培農家が育てたヤマソービニオンを醸造した珍しいもので、工場見学の目的のひとつでした。
 「かんてんぱぱ」で知られる伊那食品工業(伊那市)は、長期的な視点に立ち、「「いい会社をつくりましょう」を社是としています。最高顧問の塚越寛さんは、『リストラなしの「年輪経営」~いい会社は「遠きをはかり」ゆっくり成長~』(光文社)で知られています。
 以前、愛知県安城市の自動車学校3代目の女性社長から、塚越さんの元を訪ねて経営の基礎を学んだエピソードを聞いたことがあります。多くの経営者から一目置かれた経営哲学の持ち主です。
 伊那食品工業名古屋支店は、愛知県小牧市にあります。時々、支店長からいただくハガキには、塚越さんご自身が撮影した中央アルプスの山並みのポストカード(写真)が使われていました。

 飯田市には精密工業が多く、愛知県や岐阜県、静岡県とともに「アジアNO.1航空宇宙産業クラスター形成特区」に加わっています。
 技術力に定評のある企業としては、多摩川精機(飯田市)があります。トヨタ自動車のプリウスなどハイブリッドシステムの命といわれる「角度センサー」を担っています。
 地域に根を張ったオンリーワンの企業群は、信濃の国で歌われている「国の命を繋ぐなり」の心意気でしょうか。
(2021年7月13日)
 このリポートは、長野県の文化や経済について人からたずねられたときに、関心を持ってもらえるようにと、個人的にまとめたものです。タイトルにある「信濃の国」は、1900年に発表された県民の唱歌で、のちに県歌に制定されました。多くの長野県民によって今も歌い継がれています。この歌詞を話の軸にして、信州の文化と経済を考えてみようと思います。少しでもご参考になれば幸いです。

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