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理系論文まとめ3回目 APL Photonics 2023/6/16 ~ 2023/6/1

科学・社会論文を雑多/大量に調査する為、定期的に、さっくり表面がわかる形で網羅的に配信します。今回もマニアックなAPL Photonicsです。

さらっと眺めると、事業・研究のヒントにつながるかも。
世界の先端ではこんな研究してるのか~と認識するだけでも、
ついつい狭くなる視野を広げてくれます。

液晶ランダムレーザーという用語を初めて知った。。。
今回は、自分で見ててもなかなかマニアックです。

一口コメント

Simple experimental realization of optical Hilbert Hotel using scalar and vector fractional vortex beams
スカラーおよびベクトル分数渦ビームを用いた光ヒルベルト・ホテルの簡単な実験的実現
通信の高速・大容量化を目指して
「光学的ヒルベルトホテルという、分数ベクトルビームという新たな光ビームの制御法を提供」

60 Gbps real-time wireless communications at 300 GHz carrier using a Kerr microcomb-based source
Kerr microcomb-based sourceを用いた300GHzキャリアでの60Gbpsリアルタイム無線通信
次世代無線通信を目指して
「テラヘルツシステムと高速フォトダイオードを組み合わせた光子統合光周波数コームを使用し、未来の無線通信システムに向けた大帯域幅、超高速の無線データ転送と低ノイズの統合光子ミリ波トランシーバーの可能性を実証した研究」

Attojoule/bit folded thin film lithium niobate coherent modulators using air-bridge structures
エアブリッジ構造を用いたアトジュール/ビット折り畳み薄膜ニオブ酸リチウムコヒーレントモジュレータ
次世代無線通信を目指して
「リチウムニオベート薄膜を折りたたむことで、光の伝播経路を変え、エネルギー消費をアトジュールのオーダーまで削減する新たな手法を開発・実証した研究」

A reference-free dual-comb spectroscopy calibrated by passive devices
受動素子で校正されたリファレンスフリーのデュアルコム分光器
高度な分析技術を目指して
「デュアルコーム分光法を用いて、光源の安定性を確保し、相対波長ドリフトを大幅に減少させる新たなアプローチを開発・実証した研究」

3D structured Bessel beam polarization and its application to imprint chiral optical properties in silica
3次元構造化ベッセルビーム偏光とその応用によるシリカ中のキラル光学特性の転写
高度な光マニピュレーションを目指して
「3D構造化ベッセルビームの偏光状態を調査し、その特性と影響を初めて詳細に理解した研究」

Efficient and tunable liquid crystal random laser based on plasmonic-enhanced FRET
プラズモン増強FRETに基づく高効率で波長可変な液晶ランダムレーザー
次世代レーザーディスプレイ技術を目指して
「キラル液晶にドープした蛍光色素と金ナノロッドを使用して、効率的で調整可能な液晶ランダムレーザーを開発した研究」

Observation of nontrivial Zak phase induced topological states in glow discharge plasma
グロー放電プラズマにおける非自明ザク相誘起トポロジカル状態の観測
宇宙通信の改善を目指して
「グローディスチャージプラズマにおける非自明なザック位相誘起トポロジカル状態の観察を通じて、プラズマブラックアウト通信問題への新しいアプローチを示した研究」


要約

スカラーおよびベクトル分数渦ビームを用いた光ヒルベルト・ホテルの簡単な実験的実現

https://doi.org/10.1063/5.0150952



この記事は、光学的ヒルベルトホテルの実験的な実現について述べています。以下に、要求された形式で情報をまとめます。

①事前情報:
ヒルベルトホテルのパラドックスは、無限の概念を説明するための思考実験で、無限の部屋を持つホテルを想像します。新しいゲストが来るたびに、現在のゲストを次の部屋に移動させて、最初の部屋を空けることができます。これは、波場の特異性の研究により、ヒルベルトの思考実験に直接的な光学的類似性が存在することが明らかになりました。

②行ったこと:
研究者たちは、ヒルベルトホテルの特性を調査するために、"分数"次の光学的渦ビームの位相特異性の動力学を制御する努力を行いました。彼らは、フェーズと偏光の特異性を使用してヒルベルトホテルを実験的に実証しました。

③検証方法:
研究者たちは、マルチランプスパイラルフェーズプレートとスーパーコンティニュームソースを使用して、ヒルベルトホテルの実用的な実装のための分数次の渦ビームを生成し、制御しました。

④分かったこと:
この研究により、一般化されたヒルベルトホテルの複雑な遷移の可能性が示されました。また、構造化ビームの有用性が、通常の数学的概念の視覚化や、基礎研究と応用研究に駆動される分数ベクトルビームのためにも示されました。

⑤この研究の面白く独創的なところ:
この研究は、光学的ヒルベルトホテルの実験的な実現を初めて示しました。また、この研究は、ヒルベルトホテルのパラドックスを物理的に実現するための新たな方法を提供し、無限という抽象的な概念を具体的に理解するための新たな道を開きました。

応用先
光学的ヒルベルトホテルの概念は、分数ベクトルビームという新たな光ビームの制御法を提供し、これにより多くの応用分野に影響を与える可能性があります。

  1. 通信:構造化光ビームは、光通信におけるデータ伝送速度と帯域幅を大幅に増加させるための手段として注目を浴びています。分数次の渦ビームは、ビームに新たな自由度を導入し、光通信の容量をさらに向上させる可能性があります。

  2. 計算:量子コンピューティングでは、光の特性を利用した情報処理が行われます。分数ベクトルビームは、新たな量子ビット(キュービット)としての潜在能力を持つ可能性があり、これにより量子計算の能力がさらに向上するかもしれません。

  3. 顕微鏡技術:構造化光ビームは、光顕微鏡の解像度を向上させるために使用されています。分数次の渦ビームは、顕微鏡の性能をさらに向上させ、生物学的な標本のより詳細な観察を可能にするかもしれません。

  4. 基礎物理学:光学的ヒルベルトホテルは無限という抽象的な概念を物理的に表現する新たな手法を提供します。これは、物理学における無限大という概念の理解を深めるための新たなツールとして役立つ可能性があります。

以上のように、光学的ヒルベルトホテルの実験的な実現は、基礎科学から応用科学まで広範な分野での応用が期待されています。

Kerr microcomb-based sourceを用いた300GHzキャリアでの60Gbpsリアルタイム無線通信

https://doi.org/10.1063/5.0146957


この研究は、大帯域幅、超高速の無線データ転送をサポートできるテラヘルツシステムに依存する未来の無線通信インフラストラクチャについて述べています。この目標を達成するための有望な方法として、高速フォトダイオードと組み合わせた光子統合光周波数コームが提案されています。この研究では、ディオードレーザーからの二つの光音調をフォトミキシングにより生成された300 GHzの搬送波を用いて無線通信を実証しています。ホモダイン検出を用いて80 Gbps、データとクロック信号を同時に伝送するデュアルパス無線リンクを用いて60 Gbpsの転送速度を達成しています。この実験的な実証は、未来の無線通信システムのための低ノイズと統合光子ミリ波トランシーバーへの道を開くものです。

①事前情報:
未来の無線通信インフラは、大帯域幅、超高速の無線データ転送をサポートできるテラヘルツシステムに依存すると予想されています。
この目標を達成するための有望な方法として、高速フォトダイオードと組み合わせた光子統合光周波数コームが提案されています。

②行ったこと:
ディオードレーザーからの二つの光音調をフォトミキシングにより生成された300 GHzの搬送波を用いて無線通信を実証しました。

③検証方法:
ホモダイン検出を用いて80 Gbps、データとクロック信号を同時に伝送するデュアルパス無線リンクを用いて60 Gbpsの転送速度を達成しました。

④分かったこと:
この実験的な実証は、未来の無線通信システムのための低ノイズと統合光子ミリ波トランシーバーへの道を開くものであることが分かりました。

⑤この研究の面白く独創的なところ:
この研究は、テラヘルツシステムに依存する未来の無線通信インフラストラクチャについての新たな視点を提供しています。
また、高速フォトダイオードと組み合わせた光子統合光周波数コームという新たな技術を提案し、その有効性を実証しています。

エアブリッジ構造を用いたアトジュール/ビット折り畳み薄膜ニオブ酸リチウムコヒーレントモジュレータ

https://doi.org/10.1063/5.0146987

①事前情報:
リチウムニオベート(LN)は、その非線形光学特性と電気光学特性により、光通信と情報処理のための重要な材料となっています。しかし、そのエネルギー消費は大きいという問題がありました。

②行ったこと:
研究者たちは、エネルギー消費を大幅に削減するための新しい方法を開発しました。これは、リチウムニオベート薄膜を折りたたむことにより、光の伝播経路を変えるというものです。

③検証方法:
研究者たちは、この新しい方法を実験的に検証しました。具体的には、折りたたまれたリチウムニオベート薄膜を用いて、光の伝播経路を変え、エネルギー消費を測定しました。

④分かったこと:
この新しい方法により、エネルギー消費をアトジュール(10^-18ジュール)のオーダーまで削減することができることが分かりました。

⑤この研究の面白く独創的なところ:
この研究は、リチウムニオベートのエネルギー消費を大幅に削減する新しい方法を提供しています。これにより、光通信と情報処理の分野でのリチウムニオベートの使用がさらに拡大する可能性があります。

応用
エネルギー効率の良い光通信:アトジュールオーダーのエネルギー消費を持つリチウムニオベートは、データセンターや光ファイバーネットワークなど、大量のデータを高速に転送する必要がある光通信システムにおいて、エネルギー効率の改善に寄与します。

次世代の情報処理技術:この研究が示したエネルギー消費の削減は、光コンピューティングや光量子コンピューティングの分野にも影響を与え、大量の情報をエネルギー効率よく処理する新たな方法を提供する可能性があります。

高効率の光スイッチ:リチウムニオベートを用いた光スイッチのエネルギー効率は、光パルスのルーティングや信号の制御において、大きな意味を持つ可能性があります。


受動素子で校正されたリファレンスフリーのデュアルコム分光器

https://doi.org/10.1063/5.0151874


①事前情報:
デュアルコーム分光法は光精密測定の新たなアプローチを可能にしましたが、光源の安定性に対する厳格な要求により開発が妨げられていました。レーザーのキャリアエンベロープオフセット周波数(fceo)をロックするためには、通常、高価で複雑な自己参照システムが必要であり、繰り返し周波数(frep)をラジオ周波数参照源に単純にロックすると、光源間の残留相対タイミングジッターが生じます。

②行ったこと:
本研究では、高精度のパッシブノッチフィルタリング特性の位相シフトファイバーブラッググレーティングからfrepロックレーザー間の相対fceo変動を抽出し、オンライン位相校正を通じてそれを排除しました。次に、優れた熱波長安定性を持つパッシブ広帯域ファブリーペロキャビティを導入し、オンライン波長校正により残留相対タイミングジッターを補正しました。

③検証方法:
この新たに構築した参照フリーのポスト校正デュアルコーム分光法を用いて、ファブリーペロキャビティの共振ピーク、位相シフトファイバーブラッググレーティングのノッチフィルタリング狭帯域、およびシアン化水素ガスの吸収特性を測定しました。

④分かったこと:
相対波長ドリフトの標準偏差が全動作範囲内で0.4 pm未満に減少しました。また、ファブリーペロキャビティを通じてスペクトルプロファイルも抽出および除去できます。このシステムは、100 nm以上の帯域で0.8 pmのスペクトル分解能を達成します。

⑤この研究の面白く独創的なところ:
この研究では、高価で複雑な自己参照システムを必要とせずに、デュアルコーム分光法を用いて光源の安定性を確保する新たなアプローチが提案されました。また、この新たなアプローチは、相対波長ドリフトを大幅に減少させ、高いスペクトル分解能を達成することができました。これにより、デュアルコーム分光法の応用範囲が大幅に拡大し、その応用可能性が大幅に向上しました。

応用
高精度分光法:デュアルコーム分光法を用いた光源の安定性向上は、光周波数コームを活用した高精度分光法の応用範囲を広げます。これは環境モニタリング、プロセス制御、医療診断など、精密な分光解析が求められる様々な分野で利用可能です。

光コミュニケーション:高いスペクトル分解能を持つ光源は、光ファイバーコミュニケーションの分野で重要で、特に光周波数コームを用いたデータ伝送などに応用可能です。

光計測技術:安定した光源は、精密な光計測技術の発展に寄与します。これは、物質の性質を研究する物理学や化学の研究、産業的な品質管理など、幅広い応用が考えられます。

3次元構造化ベッセルビーム偏光とその応用によるシリカ中のキラル光学特性の転写

https://doi.org/10.1063/5.0140843



①事前情報:
ベッセルビームは、その非回折性と自己再生能力により、光学と光通信の分野で広く利用されています。しかし、これらのビームの偏光状態はまだ完全には理解されていません。

②行ったこと:
研究者たちは、3D構造化ベッセルビームの偏光状態を調査しました。これにより、ビームの偏光状態とその影響を理解することが可能になりました。

③検証方法:
研究者たちは、ビームの偏光状態を調査するために、偏光干渉顕微鏡を使用しました。これにより、ビームの偏光状態を視覚化し、その特性を詳細に調査することができました。

④分かったこと:
3D構造化ベッセルビームの偏光状態は、ビームの形状と密接に関連しています。また、ビームの偏光状態は、ビームの伝播特性に大きな影響を及ぼします。

⑤この研究の面白く独創的なところ:
この研究は、3D構造化ベッセルビームの偏光状態を初めて詳細に調査し、その影響を理解するための新たな道を開いた点で独創的です。これにより、光学と光通信の分野でのベッセルビームの利用可能性がさらに広がる可能性があります。

応用
光マイクロマニピュレーション:ベッセルビームの非回折性と自己再生能力は、粒子や細胞のマイクロマニピュレーション(微小操作)に適しています。この研究により、より複雑な操作が可能になるかもしれません。

高解像度顕微鏡:ベッセルビームの特性は、光学顕微鏡の解像度を向上させるのに有用で、これにより生物学や物質科学における観察能力が改善されます。

光通信:ベッセルビームの偏光状態が理解されることで、情報を伝達するための新たなパラメータが提供され、光ファイバーを通じたデータ転送速度を向上させる可能性があります。


プラズモン増強FRETに基づく高効率で波長可変な液晶ランダムレーザー

https://doi.org/10.1063/5.0134978

この論文は、効率的で調整可能な液晶ランダムレーザーについて述べています。

①事前情報:
ランダムレーザー(RL)は、伝統的なレーザーに対して特異な利点(例えば、発光とコヒーレンスの調整可能性)を持っていますが、RLのレーザーピークを広範囲で調整することは依然として課題でした。

②行ったこと:
著者たちは、温度依存性のFörster共鳴エネルギー移動(FRET)RLを、キラル液晶にドープしたpyrromethene 597(PM597、"ドナー")とNile blue(NB、"アクセプター")で実証しました。

③検証方法:
液晶のバンドギャップシフトを駆動する温度を変化させることで、RLデバイスは560 nm(黄色)から700 nm(赤)へのレーザー出力変化を示しました。

④分かったこと:
PM597とNB間の本質的なFRET効率は比較的低く、赤色レーザーは弱いです。しかし、金ナノロッド(GNRs)をこれらのRLデバイスに導入し、GNRsの局在表面プラズモン共鳴(LSPR)効果を利用することで、FRET移送の効率は68.9%増加し、RLデバイスの閾値を低減しました。

⑤この研究の面白く独創的なところ:
この研究は、LSPR強化FRET調整可能RLの実現への道筋を開き、その可能な探求範囲を光子学の研究と技術で広げるものでした。

応用
センシングとバイオイメージング:調整可能なランダムレーザーは、特定の化学物質や生物学的標的を検出するセンサーに使用できます。また、バイオイメージングでは、特定の波長の光を利用して、細胞や組織の特定の部分を照らすことができます。

光通信:調整可能なレーザーは、情報を異なる波長の光としてエンコードし、伝送する光通信システムにおいて有用です。

レーザーディスプレイ技術:ランダムレーザーの色調整機能は、高度に調整可能なレーザーディスプレイの開発に利用できます。


グロー放電プラズマにおける非自明ザク相誘起トポロジカル状態の観測

https://doi.org/10.1063/5.0149985


The electron density of the plasma background used for calculation is 1 × 1017 m−3. (a) The band structure is calculated by the finite-element method when the pillars in a unit cell are shrunk. (b) The nontrivial topology of bands is realized by expanding the pillars in a unit cell. The eigenmodes at X for (a) and (b) are switched, indicating a band inversion. (c) The projected band structure of a topological insulator. (d) TESs in plasma photonic crystals are immune to impurities.


この論文は、グローディスチャージプラズマにおける非自明なザック位相誘起トポロジカル状態の観察について述べています。

①事前情報:
宇宙船の再突入時に発生するプラズマは、通信を遮断する可能性があります。これは、プラズマが電子密度と不純物を含むため、通信信号を大幅に減衰させるからです。これまでの研究では、アンテナ周辺の電子密度と不純物を軽減することに焦点が当てられてきましたが、これらの方法はまだ実証されていません。

②行ったこと:
研究者たちは、ガス放電技術を用いて実験室でプラズマブラックアウト問題をシミュレートしました。プラズマ背景にアルミナ柱を埋め込み、プラズマ光子結晶を形成しました。

③検証方法:
理論的にも実験的にも、輸送経路の弱い不純物に対して不感応なトポロジカルエッジ状態(TES)を確認しました。また、非自明な格子にグライド反射(GR)対称性を導入し、ギャップレスのエッジ状態を得ました。

④分かったこと:
ギャップレスのTESのΔωは電子密度とともに増加し、広い通信帯域を確保します。さらに、プラズマ光子結晶におけるGR対称性を持つヘテロ構造の強い結合が明らかにされました。

⑤この研究の面白く独創的なところ:
この研究は、ブラックアウト通信問題への新しいアプローチを提供するだけでなく、トポロジカル電磁現象を調査する新たな実験プラットフォームとしても機能します。

応用

航空宇宙通信:この研究は、宇宙船の再突入時に発生する通信障害問題の解決に役立ちます。この解決策は、将来の有人および無人宇宙飛行任務の安全性と効率を高める可能性があります。





最後に
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