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『銀河英雄伝説』と藤井聡太二冠

最近、友人に勧められて『銀河英雄伝説』のアニメを観ている。30年前のアニメだ。本編が110話あってまじかよと思ったのだけど、とてもおもしろくて全部観てしまった。全部観たよと言ったらまだ外伝がたくさんあるという。どんなボリュームなんだ。

外伝の中に『螺旋迷宮』というシリーズがある。その第2話にこんなセリフがあった。主人公のヤン・ウェンリーが面倒な仕事を押し付けられたとき、尊敬する先輩のキャゼルヌに言われたセリフだ。ちなみにヤンというのは若くして「英雄」と呼ばれる天才的な戦略家ではあるけど、もともと歴史研究家志望で軍隊での出世とかには興味がない人物だ。

お前さんは二言目には退役するとか言うが、今軍を辞めたら未来はどうなるか、シミュレートしてみようか。たぶんあちこちの企業から宣伝用の人材として求められるだろうな。美人と手を取り合って「私が選んだ究極の紅茶」なんて台詞をテレビの画面で言うのさ。
(中略)
お前さんには不本意かもしれないが、ともかく軍隊という組織によって世知辛い競争社会から保護されているという一面があるのさ。

僕はこのセリフを聞いてハッとした。ハッとしたと言えば前にNHKのSWITCHインタビューという番組で写真家の梅佳代さんが「私はもともとハッとしやすかった」と言っていて、ハッとしやすい人としにくい人がいるのか……とハッとしたことがあった。

僕はこのキャゼルヌのセリフを聞いて藤井聡太二冠を思い出した。彼が高校へ進学するか、進学せず将棋に集中すべきかという時のことだ。僕はただの将棋ファンなので、高校なんて行かなくていいんじゃねーのくらいに思っていた。ところが師匠の杉本昌隆八段は進学を勧めたという。その頃のインタビューで杉本八段はこう語っている。

将棋連盟が、学生じゃない藤井聡太に、何を求めているかというのは大体想像はつきました。彼がメディアに出て、広告塔のようになってくれれば、宣伝効果は計り知れない。学生なら断ることはできても棋士一本になった場合は、連盟という組織の一員として、やらなければならないことが増えてくる。その時にプロ棋士藤井聡太がやりたいことと、現実には必ず何か違いがあるはずで、本人が思っているようになるかどうかは分からない。

これには本当にハッとした記憶がある。言われみればその通りだと思った。高校なんて行かなくていいんじゃねーのとか言っていた俺馬鹿じゃねーのと思った。実際に藤井聡太は高校に進学した。その上でタイトルを2つも獲ってしまった。ヤン・ウェンリーばりの大活躍である。

藤井二冠もすごいがこのアドバイスができる杉本八段もすごい。キャゼルヌあってのヤンなのである。杉本八段は銀河英雄伝説を観ていたのかもしれない。顔もなんとなくキャゼルヌに似てる気がしてきた。


今日のニュースによれば、藤井聡太二冠は聖火ランナーを辞退したらしい。

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