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「地球は一日で2回転するんだよ」(雑記)

 「いいところの息子」代表みたいな、20代後半とは思えない恰幅の良さと肌の艶を放つ、自分の彼女のことをフィアンセと呼ぶいけ好かない客が歌う徳永英明のレイニーブルーで泣きそうになるぐらいには、1週間前の俺のメンタルは完全にイってしまっていた。心神喪失とは一週間前の俺のことだ。

朝起きてシェアハウスの同居人のベットで発狂して魚のように飛び跳ねていた。「ベッド壊れるベッド壊れる!」とか同居人が言っているが関係ない。こちとら既に心が壊れている。だがこの1週間ほど、シェアハウスの恩恵を感じたことはない。ひとりだったらやばかった。まじ感謝

俺は自分のメンタルの管理がうまい方だと思っていたが、この一週間は厳しい戦いだった。メンタルがイってしまっている状態において最大の敵は、「ひとり」と「夜」だ。夜にひとりなんてもってのほか。その点、俺は周りの人に助けられた。佐藤さんの命が危ないから!と言って次の日が朝から仕事の人を電話で呼びだしてくれた後輩もいた。話聞いてくれた人全員に、まじ感謝


 同居人が二人とも夜にバイトの日、家で一人だった俺は、「危ない、このままでは夜の闇に吞まれてしまう」と正義のヒーローみたいなことを本気で思い、とりあえず何か作業に集中しようと、締切が近いESに手を付けた。結果的にその作戦が功を奏し、2、3時間ほど作文に熱中できた。というのも、その企業のESが少し変わっており、

・小学校時代の自分史を記載ください。(200~300文字)
・中学校時代の自分史を記載ください。(200~300文字)
・高校時代の自分史を記載ください。(200~300文字)
・大学、大学院時代の自分史を記載ください。(400~600文字)

というもので、自分の人生のハイライトを考えているようで、書き始めると意外と楽しかった。

小学校時代の自分史を書き始めたときに一番初めに思い付いた出来事に自分でも驚いた。よくそんなこと覚えとったな。たしかに死ぬほど悔しかったもんな、あれ。けどESに書くような内容じゃないよなと思い、書くことはやめた。だから代わりにここに書く。小1の俺の悔しさをわかってくれ。




 小1。一年松組。一人も知り合いがいないクラスになった。だが、クラスの大半は同じ保育園らしく、そいつらは最初から仲が良かった。まだ俺がクラスになじめていない頃、たぶん入学してから2週間ぐらい、クラスの中心的な男子と言い争いになった。
給食の時間、その男子はクラスのひとりひとりに「地球が一日に何回転するか知ってる?」と聞いて回っていた。小1のガキは皆「知らない」と答える。するとその男子は誇らしげに言う。
「2回転だよ」
ガキどもは感心したように、すげー、𓏸𓏸くんよくそんなこと知ってるねー、と反応し、その男子は誇らしげになる。俺はその様子を自分のターンが来るのを待ちながら眺めていた。俺はそんなデマに騙されてお前に感心したりはしないぞ。

俺のターンが来た。
「地球が一日に何回転するか知ってる?」
地球2回転ニキは当然、俺が知らないと答えるものだと思って聞いてきている。ごめんな、お前の期待している答えじゃなくて。

「1回転」

すると、2回転ニキは一瞬予想外の答えに驚きつつもすぐに「2回転だよ!」と反論してくる。さすが2回転ニキ。たしか、2回転ニキの質問に「知らない」以外の答えを言ったのは俺だけだった。ここからは言い合い。2回転ニキは小3の姉ちゃんが言ってたから間違いない、という主張。対して俺は、地球が一日に2回転したら一日に朝昼晩が2回来る、だからおかしい、という、いま考えても至極当然なしっかりとした主張。黒板にチョークで図とか書いたっけ。
このディベート、普通なら俺の勝ちになるはずだが、教室には小1のガキしかいない。しかも、その大半のガキは2回転ニキと同じ保育園で仲が良く、完全にあっち側。担任の原先生はなぜかずっと教室にいなかった。

その言い争いは昼休み中も続いた。給食の配膳台を間に挟んで、俺ひとり vs 2回転ニキを筆頭としたほか全員、に分かれていたことを明確に覚えている。絶対に自分が正しいとわかっているのに、こっちが間違っているような空気。地動説を唱えて罰せられたガリレオの気持ちがわかる。小1の俺は悔しくて泣きそうだったが、なんとか昼休みが終わるまで耐えた。あの孤立感の中でよく頑張ったな、小1の俺。

ちなみに、2、3年前に2回転ニキに会う機会があったのでこの話をしてみたが全く覚えていなかった。まあ、この出来事を思い出すことで少し気が紛れたからいいか。

(追伸)
こんな感じに、昔のことを考えたり筋トレなどに没頭したりして、気を紛らわすフェーズが続いています。飲みに行きましょう。


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