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東南アジア最高峰 キナバル山

キナバル山は赤道直下のカリマンタン島(ボルネオ島)南部に位置し、マレーシアに含まれる。標高は4095mで富士山よりも高く、東南アジア最高峰である。カリマンタン島の気候区分は熱帯雨林気候であるため、たとえ4000mを超えるキナバル山でも冠雪することは滅多になく、比較的登りやすい。
また、ユネスコ世界遺産に登録されているキナバル自然公園の一部でもある。


今回は、間違いなく2023年のハイライトに入るであろうキナバル登山について、自分の記憶のため、そして記録のためにも文字にした。

きっかけ

2022年の夏に友人2人とシンガポールから始まりマレーシアのマラッカ、クアラルンプール、ペナン島とマレー半島西岸を旅行した。その際にキナバル山の存在を知った。調べてみると、難易度もそんなに高くはないらしい。ならば登ってみたい。東南アジア最高峰登頂の肩書きがほしい。これが動機だ。

事前準備

キナバル山を登る手段は2つ。ツアーに申し込むか個人で登るかだ。前者は費用がかさむし、面白くないので却下。個人で登ることに決めた。
調べてみると、キナバル山には一日あたりの入山規制があったり、登山にはガイドが必須という条件があるらしい。なので行ったその日に登れるとは限らない。また、一日数組限定で日帰り登山が認められていたが、2015年に起きたサバ地震以降は日帰り登山は無くなったとの情報を見つけた。しかし、公式の情報ではなく個人の発信。もし日帰り登山がまだあるならそれがいい。時間も費用も節約できる。ただ、日帰り登山に関する正式な情報に関しては日本語と英語の両方で調べて見たが見当たらない。手詰まり感。
こんな時に役立つのが圧倒的楽観主義。まあどうにかなるやろ精神に任せてコタキナバル行きの航空券をポチる。こうして、2023年2月にコタキナバルに行くことだけが決まった。

登山0日目

結局、登山に関してなんの手続きもしてない状態で日本を出国した。深夜にコタキナバルに到着して1泊し、次の日にキナバル自然公園本部に向かった。ここで入山管理や登山の受付が行われている。日帰りで登山がしたい、と受付の人に言うと返事は次のようなものだった。

日帰り登山→地震以降、最速のルートが塞がれたため禁止。山の中腹にある宿泊施設で一泊が必須。

登山自体→6ヶ月前から予約しなければ無理。

え、日帰り登山は無理だとしても登山自体も無理なん?
こんなマレーシアのクソ田舎まで来たのに、、、時間と金の無駄やんか...

と、絶望に暮れかけていると、係の人が明日の午前10時にまたここに来いと言っている。どうやら、そこでまた当日受付をするらしい。ただ、明日になってみないと登れるかは分からないとのこと。そして
それが無理だったら今度は午後2時にまたここに来いと。そこで明後日分の当日受付をすると。
この言い方だと明日は無理っぽいな、、、。
また、登山には宿泊費、ガイド費用、入山料など含めて1200RMが現金で受付時に必要らしい。約4万円分。そんな持ってない。atmはどこかと聞くとここから7km強。往復15km。クソ田舎のためタクシーは走ってないし、公共交通機関もない。
熱帯灼熱15kmウォーキング決定

熱帯灼熱15kmウォーキング中、
熱帯特有のえぐいスコールに襲われる。


熱帯雨林の中を貫く灼熱の一本道をatmへと歩きながら考えた。これはきついぞ。歩くことが、じゃない。入山許可のことだ。いつ登れるかわからないが、登山可能と分かるのはその当日。入山許可が出るまでエンドレス受付通い。きつい。
だが、わざわざ山しかないこんな田舎まで来たからには登らずには帰れない。やってやろう、エンドレス登山受付。数日間、このなんもない田舎に引き篭るのも覚悟の上。

登山1日目

次の日の10時。どうせ無理だろうと思いながら公園本部に向かう。するとあさっさり許可が出た。登れるらしい。

「Can I hike the Mt.Kinabalu today?」

2回聞いた。答えは「Yes」。やっぱり登れるらしい。
いつから登れるか聞くと、「Anytime」。15分後にガイドがここに来るからその後ならいつでも、と。
急すぎん??
今日登れると思ってなかったから登る準備してないし、昨日炎天下の15kmウォーキングしたせいで足疲れてるし。と呆気に取られている所にガイドのじじい登場。15分後って聞いたがまだ3分ぐらいしか経ってない。
「ナイストゥーミーチュー。おれはガイドのニクソンだ。よろしく(固い握手)。準備はいいか?水と補給食は持ったか?」

登る気満々の様子。
一気に登る流れですやん。

そこから10分程で準備を整え、いざ出発。公園本部から登山ゲートまで車で15分ほど移動。

入山許可証など
登山ゲートへ。左がガイド、右は運転手。


10時半、登山ゲートに到着。標高は1866m。
登山口でガイドから説明を受ける。日程や登り方などいろいろ。キナバル山は神聖な場所だとも教えてくれた。
ガイトは後ろから着いてくるスタンスで、自分のペースで登っていいと。

日程は次のよう。
1日目:登山ゲートから6km離れた標高3272mに位置する宿泊施設まで登る。ガイド曰く、目安は6時間。
2日目:深夜2時半に宿泊施設を出てそこから2.7km先の頂上を目指す。日の出の5時に間に合いたい。
その後、登山ゲートまで下山。

登山ゲートにあるマップ。
出発地点がYOU ARE HEREとある1番下の点。
頂上がLOW'S PEAKとある1番上の点。


10時45分、登山開始。
服装は、下はタイツに半ズボン、上は長袖のアンダーシャツに半袖Tシャツ。
登山道は世界遺産なだけあって整備されている。
標高がそんな高くないうちは周りが樹木で囲まれ、景色が単調なので暇。ちんたら登ってても楽しくないのでハイペースで登っていく。ガイドのじじいを撒いてみたく思い、試みるがちゃんと付いてくる。流石、週2、3回登ると言っていただけある。ただ、後ろから痰を吐く音が頻繁に聞こえてくる。汚い。世界遺産なのに。神聖な場所なのに。
そんな感じでハイペースで登っていたら3時間で宿泊施設に到着。全身汗だく、適度な疲労感。ガイドのじじい曰く、めちゃくちゃ早いらしい。キナバル登山に備えてジムで脚トレ、大文字山でトレランしてた甲斐があった。

宿泊施設は高い金払ってるだけあって良かった。飯は上手いし、食べ放題。富士登山の際に宿泊した山小屋とは大違い。レストランのテラスからは雲海を一面に見下ろすことができ、夕焼けも見られた。ここでは「お兄ちゃんのバカ、変態」と日本語で話すマレーシア人や美男美女スイス人カップルと言ったほかの登山客と交流して過ごし、次の日に備え夜は早めに寝た。

テラス席から見た夕日

登山2日目

午前3時出発。外は真っ暗、めちゃくちゃ寒い。山の寒暖差を舐めてたと反省するが遅い。ほかの登山客らはニット帽に手袋、あたたかそうなウェアにヘッドライト。対して、キャップ、素手、インナーダウン、ロードバイクのライト手持ち。

午前3時、宿泊施設を出発してすぐ。

少しでも止まると体が冷えるため、ほぼ休憩なしで進む。傾斜もきつくなり、所々地面に張られたロープを掴んで登る。 30分ほどで周りの樹木がなくなる。森林限界を超えた。山の表面が岩石へと一変する。ガイド曰く、花崗岩らしい。長年の風雨の侵食により凹凸はない。風を遮るものがなく寒さが増す。体感温度0℃ぐらいか。ガイドのじじいは耳あて、ネックウォーマー、手袋、ゴツめのダウンとフル装備。よこせ。ガイド料で1万ぐらい払っとんやぞ。お前、ただ後ろ付いてくるだけやん。
樹木が無くなったことで見晴らしは良くなった。空には半月を過ぎた月と星。はるか下の方には月明かりに照らされてうっすらと雲海が広がっているのが見える。頂上からの景色に期待が膨らむ。

寒さに凍え、無心で登ること2時間弱、ついに頂上にたどり着いた。東南アジア最高峰登頂
午前5時前。まだあたりは真っ暗。景色は何も見えない。登山あるあるだが、頂上にあるのは小さな看板のみで思っているよりしょぼい。登頂の喜びはそこまでない。それより寒い。
頂上付近で日の出を見るためにしばらく待機。

頂上にある看板


身体を震わせながら待つこと30分。段々と東の空が赤みを帯びてくる。それに連れて今まで見えなかった周りの景色も明らかになる。この瞬間、ああ登ってよかったなと、一気に感情が溢れ出す。この景色が見れるならかかった費用なんて取るに足らない。この感動と達成感はプライスレスだ。

写真を撮ったり、ガイドのニクソンや昨日レストランで知り合ったほかの登山客らと話をしているとすっかり日が昇り、寒さを感じないまでには気温も上がった。下山は頂上から3時間ほどと超ハイペース、一番乗りで麓に戻った。
こうしてキナバル登山、無事完結。2月にして、今年の大仕事をひとつ終えた感で満たされている。

来年あたり、キリマンジャロとか登りたいな。
一緒に登る人募集してます!

世界中の恵まれない子供たちを代表し、僕が責任もって、美味しいものを食べることに使わせて頂きます!