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「後悔を活かす心理学」を読んで。

養護教諭というよりも、もっと大きな枠組みの「教師」を目指すにあたって、「後悔のないように生きましょう」なんて言葉を使いそうだなぁと思ってたら蔦屋書店で目についた本。

自分は幸いにも、後悔を強く引きずっていることは今のところあまりないだけれど、俯瞰的に「後悔」について整理できるし、面白い実験なども紹介されているので、とっつきやすく、生きやすくなるかなぁと思える本でした。

死ぬ瞬間の5つの後悔

  • 「自分に正直な人生を送ればよかった」

  • 「働きすぐなければよかった」

  • 「思い切って自分の気持ちを伝えればよかった」

  • 「友人との連絡を取り続ければよかった」

  • 「幸せをあきらめなければよかった」

が主たる後悔らしいですが、私自身は「30歳になったし、今まで連絡とって遊んでた人にこちらから連絡するのは控えようかな」などと思っていたけど、会えるうちはあったり、連絡とれるうちは連絡とろうと考えなおしました。ソッコーで手のひらを返す!


やって後悔するorやらないで後悔する

よく聞きますね。
「やらないで後悔するより、やって後悔する方がいい」と言われています。

この本の中だと、

やらないで後悔するより、やって後悔したほうがましだ

マキャベリ

後悔することが何もなければ、人生はとても空虚なものになるだろう

ゴッホ

と偉人の言葉を例に出していますが、やはりその通りなのだと思います。

「やった理由」は記憶に残りやすいけど、「やらなかった理由」は忘れてしまいがち。なぜか。それは多くの場合、「やらない」ための明確な理由がないからで、やるかやらないか迷うのは、やりたい気持ちとの天秤で揺れ動いているから。そして迷っているときに「やらない」理由を見つけるのは簡単。「やらない」のは現状維持だから。現場維持は楽だよね。でも、現場維持のまま、変わりゆく社会で生きていけるのか不安もあるから迷う。本当は現状維持じゃよくない、変わりたいって気持ちはある。その気持ちに気づいてしまったら、「やる」しかないよねぇ。でもそこで無理すると、病んじゃうこともある(何度失敗したことか…。。)から、自分にできる目標を、悩み考えた末に見つけて行動に移せるといいなと思いました。

一方で、もし「やらない」と決めたのであれば、その取らなかった選択肢にあまり目を向けないことが第一。だけど、「やらなかった理由」はちゃんと書き残すなどしておくと、「あぁだから私は〇〇しなかったんだな」って納得できると思いました。


ツァイガルニク効果

こういう言葉が会話の中でパッと出てきたら頭良さげに思われるかな、なんて妄想はさておき。(確証バイアスとかもサラッと使ってみたい。p.180の4枚カード問題とか!)

全然話それるけど、心理学って文系のイメージあって(私だけ?)だけど、数学とか統計をゴリゴリに使うことを大学で知ったときの驚きよ。

話戻して、ツァイガルニク効果は、「人は、最後まで達成できた事柄よりも、達成できなかったことや途中でやめてしまったことのほうを、よく覚えている(あるいは思い出しやすい)」ということらしいです。

つまり

この効果のため、プロセスに対する後悔は、結果に対する後悔よりも、ずっと心に残りやすく、思い出しやすい

p.34

なので
「できた/できなかった」といった結果どうこうよりも、「やった/やらなかった」という行動(プロセス)が後悔として残りやすいんですって。

ということで、「やり始めたらやりきろう!」
途中で諦めるくらいなら、やらない方がいいかも。
見通しを立てることが大事ですね。それも一つの能力。
また、自分がギリギリできそうな目標を立てることも重要かなと思いました。
例えば、ピアノだったら「コンクールで優勝」のような目標もいいけれど、「『猫ふんじゃった』を弾けるようになる」とか、やり切れそうな目標にしておくとか。そしてそこまではやり切る。


選択肢が多いことは果たして正義か

私は、選択肢は多いことは正義だと思っていました。
日本に生まれて、子どもの頃は割と裕福な生活をさせてもらって、自分で自分の人生を選べるのはとても幸せなことだと考えていました。
例えば、絶対的貧困の中で生きる方々や海外のスラムで生きる人たちと会ったとき、そこから抜け出せない社会的構造に憤りを持ちましたし、少しでも選択肢を増やすことができればと思っていました。

が、果たしてどうなんだろう。

幸せは自分の尺度(主観)で決めるものだと思っているので、他の人のことはわかりませんが、選択肢が無限にあると、それはそれで難しい。全部は選べないから。選べなかった後悔がその分生まれる可能性もある。この本によるとどれを選んでも後悔する傾向も高くなるそうです。知らなければよかったと思うこともありますよね。

人間が同時に違いを見分けられる数や異なった概念を一度に味わえる数などは、マジカルナンバー7±2と言われていたが、4±2という説が有力らしいので、何か決断するときは、そこまで選択肢を絞れるといいなぁと思います。


反実仮想的思考

オリンピアでも後悔するんですって!
金メダルを獲得したは大満足だと思うんですけど、銀メダルの人と銅メダルの人では、銅メダルの人の方がポジティブな感情が強いらしい!

銀メダルの人の方が、「達成できなかった」ことに目を向けてしまいがちで、銅メダルの人は「少なくともメダルを獲得することができた」と思えるので、幸福感や満足感を得やすい。

これは本の言葉を借りると、「上向きの反実仮想的思考(現状よりもよりよいことを想像する)⇨もうちょっと頑張れば金メダル取れたのに…」は、折角オリンピックで銀メダルを獲得するという偉業を達成しているにも関わらず、私からしたらもったいないような考え方に思える。オリンピアなので、その後悔が次への活力になるかもしれないので、何が正しいのかは私にはわからないが、「下向きの反実仮想的思考(現状よりも悪い結果を想像する)⇨銅メダルじゃなくてよかった」の方が、精神的満足度は得られる気がする。最悪を想定していれば、少なくともそれよりはよかったと思える。

一方で、「下向きの反実仮想的思考」は「〇〇しなくてよかった」と思うことにも繋がることを考えると、キングコング西野さんが言っていることが頭によぎった。「挑戦することを笑う/引きずり落とそう」とする人たちの存在だ。自分が諦めてしまった(挑戦しなかった)ことを頑張っている人がいて、仮にそれが成功してしまうと、挑戦しなかった自分が間違っているように思ってしまって、人の挑戦を邪魔してしまう人たち。その行動にいいことなんて何一つないはずなのに。

まぁ…つまるところケースバイケースかなぁと思いました。


予期後悔

メンタルシミュレーションによって、現時点から自分が選ぼうとしている選択肢や、それ以外の選択肢を選んだ場合に生じる結果を予期・想像・期待し、選ぼうとしている選択肢の結果とそれ以外を選んだ場合の結果とを比較・評価することから生じるネガティブな感情である

p.30

「ある決定をしたと仮定して悪い結果が生じた場合に、どの程度その決定について後悔するか」という、意思決定前に予期された後悔感情である

p.128

人は予期後悔が最も小さくなるような選択肢を選ぶ傾向があるそうで、損したくないって気持ちもそれに近いかもしれませんね。

「本日限定、半額!」とかも、逆にいうと「今買わないと損」という隠れメッセージがあるわけで、人間が持っている「損(後悔)したくない」という意識を刺激してるわけで、この辺は行動経済学になってきますね。

マキシマイザーよりもサティスファイサー

マキシマイザーは常に最良の選択肢を追求する人で、客観的で優れた選択をする可能性が高いそうです。が、「幸福感や楽観性が低く、抑うつ傾向も高い」(p.111)だそうで、完璧主義者的な人もいるけど、ほどほどで満足することも大切だと自戒を込めて。

失敗は成功の母

これもよく言われるけど、「失敗」なんてことは基本的にはなくて、「こうすればうまくいかないことがわかった」と思えれば、それは成功じゃないですか。この本では、メタ認知の重要性についても書かれているけれど、一歩退いて、客観的に自分のことを捉えられると、後悔対処法で効果的なものを選べる。

学校教育で関連しそうと思ったこと

いじめ

p.221以降に紹介される、犬の実験が衝撃的だったのだけれど、「自分では、電気ショックを回避できない」と学習してしまった犬は、違う環境で、自分の能力で簡単に電気ショックから逃げられるはずなのに、逃げることを諦めてしまう、ということ。

これって、人にも当てはまるわけで、いじめられると(もしくは勉強や仕事がうまくいかないのが続くと)、それに抗う気力がなくなってくるって経験はありますよね。自分は頑張っているはずなのに、どうしようもできないことが続くとそりゃあ諦めてしまって、できることもできなくなってしまう。

これはよろしくない。

学校の先生としてはそうなる前に対処したいところであるが、一斉教育では難しいところもあるかなぁと思いつつ、現状を整理して、できる目標を立てられるといいし、生徒にはそんなサポートをしたい。

情報接触量(入手容易性ヒューリスティック)

やっぱり、学校って狭い世界だと思う。
選択肢は多すぎない方がいいって書いてあったけれど、例えばいじめとかで辛いと思っていたら、外の世界の存在を知ることは大事。

問:1年間で以下のことが原因で亡くなった人数について考えてみてください。そしてそれらの人数を予想するとともに、多い順に並べてください。
 交通事故死亡者のうち高齢者(65歳以上)の人数
 火災で亡くなった人数
 他殺で亡くなった人数
 家庭内の浴槽で溺死した人数
 結核で亡くなった人数

p.174

この問の答えは本書を読んでもらうか、調べてもらうとして
人は自分が接触している情報が多いことを選ぶ傾向がある。
Googleの検索結果やSNSなど自分の興味が多いこと、ニュースになることが目に入ることが多いと、事実とは違った思い込みをしてしまう。

アルゴリズムや生活環境で、事実と違う思い込みをしてしまう可能性が高まってしまうかもしれないと思うと恐ろしい。

確証バイアスもそうですよね。メディアっておそろしい。。

だからこそ、いじめとか無気力とか、好ましくない状況にいたら、環境を変えるなど、半ば強制的に環境を変えることも必要なのかなと思った。

フレーミング効果。「人は、ポジティブな表現をされると確実性を重視し、ネガティブな表現をされるとリスクを冒してでもよろ大きな利益を得ることを好む傾向がある」(p178)
論理的に考えると期待値は同じなのに、不思議。論理的に考えていないのか、論理に勝る感情が生まれるんだろうなと。

終わりに

面白い本でした。著者の人生も含めて。
人は紆余曲折あっても生きていける。
うまく生きていくために勧められる本でした。

かしこ


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