見出し画像

「光る君へ」 第12回 思いの果て

まひろへの腹いせか父に左大臣家への婿入りの話を願い出た道長。兼家から打診され躊躇する雅信だが、当の倫子と妻の乗り気で押し切られる。
まひろは宣孝から実資との縁談を勧められ、正妻へのこだわりを批判され、道長との関係を考え直す。妾でもいいと伝えようとしたが倫子との結婚話を言われ、言えずに終わる…。


【今日の行成】
道長とマンツーマンでかなのお稽古。「お上手になられました」
音声解説「手元を覗く行成の顔が近い」w
筆運びの練習に手まで取ったらどうしようかとハラハラした。。。
てこれ、もうずっとこの路線で行くんですか……


さて例によって雑な感想を。

  • まだ寛和2(986)年、8月(ガイド本による)。
    なんと第8回〜今回の第12回までの5回ずっと寛和2年だ。
    だから次回突然4年飛ぶの?

  • なつめ、生前出家。行成の妻の時もこうだったのかなー。
    まひろがなつめの娘さわを連れてきたけど、ちゃんと市女笠姿なのにその後ろの乙丸は安定の手持ちw さわの着物はまひろよりずっと上等だった。

  • 宣孝が実資をまひろの婿にと提案する。
    これ、後年、道兼の嫡妻(ドラマに登場の繁子ではない)が娘を貰ってくれないかと実資に文を寄越した実話をアレンジ?
    実資が北の方を「去年亡くした」は実際にはこの年の5月。最初の妻 源惟正の娘(ドラマでは桐子)を亡くし、次に花山院の元女御で為平親王の娘 婉子女王と結婚する正暦4(993)年頃までは正式な結婚はしていない。

  • なつめの最期と実資との縁談で「妾でも不幸せとは限らない」「知らない人の妾になるくらいなら…」と心境の変化があったか。

  • でもやっぱり自分から「北の方になりたい」っておかしな言葉だ。それは外から見た表現だと思うんだが。強いて言うなら「正式な妻」?

  • 赤痢で寝込んでる実資のもとにお見舞いの品を届ける宣孝。
    あのー…「透けた衣にふくよかな白い肌」(by音声解説)の絵はなに?
    実資は女性に弱かったエピがあるので好色の描写?(必要??)
    小右記はこの時期のは残ってないけど、実資はあんなことは記さない
    (好色は事実かもしれなくても!!)
    こんな記述でさえ珍しいと思ってポストしたのに。

  • 道長と道綱。「妾(しょう」」連発なの、なんだかなぁ。
    それに「北の方」の反対語を「妾」にしたのも誤解を招くよな。読み方を「めかけ」ではなく「しょう」としてグレーっぽくしてるけど、視聴者は絶対今の感覚で「おめかけさん」として理解しちゃうよな。

  • 母を見て「妾」の身の辛さをわかっている道綱であっても自分の妾への対応の難しさを語るのを見て、道長はやっとまひろが拒否した意味を理解する。
    なのに後のシーンで「妾であってもいいと言ってくれ」??

  • 直盧に雅信を呼びつける兼家。画面いっぱいに広がる兼家の圧が強いw
    これはNOとは言えんわ。

  • そして満を持しての源俊賢登場!!
    早く道長を追い出して(?)正規の四納言結成してください。
    でも肝心の行成があの状態じゃあなぁ…。。。
    「仏法の霊験」までも道長が見たことになったら…暴れるぞw

  • 突如現れた明子と俊賢。いったい今までどこにいたことになってるんだ?
    明子は兼家への復讐を口にする。確かに安和の変で父 高明を陥れたのは「藤原」だけど、恨むなら首謀者(とされる)実頼の直系の頼忠とか実資、公任の方でもいいんじゃ?

  • 公任は今まで一番だった自分を道長が追い越すことに危機感。
    確かに寛和元(985)年の昇進からずっと官位が据え置かれていて、今日の舞台の3年後の永延3(989)年にやっと蔵人頭に。
    ところでその“リトルボイス”頼忠はその年に故人となる🙏
    次回は永祚2(990)年の設定なので相関図からもいなくなっている。

  • その頼忠、息子公任に「道兼と近づいておけ」と指示。実際はこれを機に接近したわけではなく円融院との縁からなんだけど、これが公任には逆風になる。
    道隆政権が短命に終わって道兼の時代だと喜んだだろうけど、それもわずか1週間の命。
    出自は抜群だったのに政治の道では今一つ運がないんだよな。
    その分文才には恵まれてるのでまぁトレードオフ…。

道隆が最高の権力者となったことは、公任に幸いしなかった。中宮だった姉遵子の縁からか、小野宮一門の実資や公任は円融院と親しくまじわっていたが、永祚元年(989)12月23日に道兼が円融院の別当になっており、退位した円融院を中心に実資・公任と道兼とが社交圏を形成していたようである(『小右記』)。花山院退位に一役かった道兼に将来を期待していたのかもしれない。しかし、長幼の順にしたがって、道隆が摂政の座についたために、実資や公任の思惑ははずれてしまったのである。(中略)
道兼室は藤原遠量の娘で、昭平親王室とはいとこどうしだった縁からか、昭平親王の姫君は道兼の養女となっていた。(中略)公任は昭平親王の娘と結婚することにより、道兼の姻戚となり、道隆から疎んじられ、官位の昇進も停滞することになった。
 ※この道兼室はドラマの繁子ではなく正室。

「藤原公任 天下無双の歌人」小町谷照彦(角川ソフィア文庫)より
  • 道長の文を見て走って廃屋へ向かうまひろ。てか、夜中に置き去りにされてもまた行くんかい。
    ボー然として帰ってきたまひろ(音声解説「まひろの中の全てが止まる」)に乙丸「お戻りです!」→なんでお供してないの?


【今日のソウルメイト】
あー、これが恋愛ドラマによくある感情のすれ違いパターンか。
この焦ったさを“いい”、“切ない”と思うか、二転三転してイライラすると思うかはーーー人によるよな(特に大河においては…w)。
いつもの逢瀬の廃屋に向かう二人の思惑はこんな感じかな。

まひろ:なつめの最期を見たのと、生計のために「妾」になるしかないなら知らない実資より道長がいい!という心境の変化を伝えて→ハッピーエンド
道長:左大臣家への婿入りを知らせたら、まひろが(焦って?)「妾でもいい」と言う(言ってほしい)→ハッピーエンド

両者とも自分の都合だけだよな。
ところがどっちの思惑もハズレ…。タイミングだよな。
道長が自分から言えなかったのは、道綱に「妾は常に辛いのだ」と言われたから?
だから相手が言うのを期待するってどうなんだ。何かあっても「俺が無理強いしたんじゃなくまひろが望んだんだろ」とか言いそう。
まひろはもし相手が倫子でなかったら言おうとしてたこと、言えたんだろうか?
でもきっと言わなくてセーフ。


前回から続く生計のための婿探しについて。
宣孝の「霞を食って生きていけると思ってるのか!→婿を取れ!」への違和感を考えてみた。
現代(というかちょっと前)のドラマなら「食っていけると思っているのか!」に続くセリフは「嫁に行け!」となるところが、そこだけ平安仕様に「婿を取れ」になってるので「??」な感じになるんじゃないか。
セリフでは「婿を取れ」と言わせてるけど脚本家のイメージは「嫁に行け」のままなのでは?
現在の苦しい生計を楽にするため→婿取り(=婿を世話する)っておかしいでしょ。「婿取り」を現代の一般的な「結婚」のイメージで使ってるとしか思えない。
宣孝が実資について「財がある」を強調してるとこがまさにそれ。
セリフの前半と後半で時空がねじれてるカンジ。
だって為時家で実資の世話など出来るわけがない。
あの行成でさえ、後年、婿取った道長の息子(長家)の世話が大変で実入のいい大宰権帥を希望するほどなんだぞ…。
摂関家の息子だからって「財」を持って婿入りしてくるわけじゃないということ。
結局、脚本家が「婿取り」の意味をどう考えてるのかよくわからないんだよね。

とはいえ。自分も平安時代の「婿」の経済生活についてはよくわかっていない。
ただ上に書いた通り、行成でさえ苦労することや、行成の急死直後に婿の経頼が行成自筆の遺物を頼通に献上したり、実資が妻の死後、婿取られてた妻の家を売却してることを考えると、妻側の財産を使う権利があったのは確かだと思う。
実資の最愛の娘 千古死去の後の夫 兼頼のケースはこうだ。

藤原兼頼は実資のむすめ千古の婿であったが、妻の死後、堀川院に「帰住」していた。それがまた小野宮に帰ってきて、しかも実資の婿のごとく振舞っている。これを、資房(実資の養子)は批判し、人々も不思議に思っている。当時の感覚では、妻が死亡した後も夫が妻方の宅にいつまでも居住していることはおかしなことだったのであろう。妻死亡後は妻方との縁が切れるという「法」を枉げるために兼頼は小野宮にやってきて、小野宮家とのつながりを保とうとしたのである。それは、娘に伝わる小野宮家の財産を当てにしたものであった。

「平安京における居住と家族」京楽真帆子

兼頼は道長の孫(明子との長男 頼宗の息子)。上記長家と同じく摂関家の家族。当然実家は裕福なのに、それでも婿入り先の財産を当てにしてる。
だから宣孝が“婿”実資について「財」を推しポイントとするのは現在の感覚でしかないんだよな。
これはもうドラマだからとスルーするしかないのだけど、時代考証的に正しいことでも下手に混ぜるな危険ということなのかもしれない。

時空のねじれでいえば「北の方」と「妾」の扱いも。
そこで第1回を見直した。

ナレーション:「この時代、男が嫡妻の他に妻を持つことは珍しくなかった。為時もその例外ではなくたびたび家を留守にした。」
ちやは「(自分の里が貧しいからなので)夜のお出かけに文句なぞ言ってはならないわ」
まひろ「願掛けをしてくれる母上より他の人がいいの」

ちやはは嫡妻だったんだな(違うと思ってた)。
このナレーションからすると嫡妻はちやはだけど、為時は別に通う女がいて、まひろはそれを不満に思ってる、ってことになる。
ということはまひろは嫡妻がいても他に妻がいるという環境にいる
そんな環境で育ってまひろがあそこまで「北の方」に拘ったのはなぜだろう?
「非嫡妻」の母の苦労や辛さを間近で見て「自分は絶対嫡妻になるんだ!」って思うようになったのならまだわかる。道綱が女だったらそう思っただろう。
でもちやはは嫡妻だけど為時に「たびたび留守に」されてる…。
それでも妾よりはマシだし、世間体的な意味も北の方>妾だからってこと?
(そんな“世間体”が当時存在したかは不明)
ちやはを妾設定にすればまひろの拘りも理解しやすかったかも。
ちやは「父上の気持ちも母の気持ちもまひろがもう少し大人になれはわかるわ」
→まだわかってなかったようです。。(自分も)


今回は、倫子とのこと以外はほとんどオリジナルストーリーだったせいもあって感想以外の婿取り問題、妾問題について多くなってしまった。
今回と逆に「1話丸ごと朝廷もしくは中関白家(+主上)」の回があったらその場面の感想だけで4千字ですまないかもしれない。。

来週は4年後の永祚2(990)年が舞台なのでいろいろ状況が動いてるもよう。
★清少納言出仕まであと3年!
・なんといっても定子様成体入内!
・主上第三形態に!どの形態も見事に最終形態の方の面影あるのがすごい!
・道隆にお髭が!
・隆家も進化!?第二形態へ
・ついに尊子現る!…などなど
でも予告、定子様の懐に隠れる主上の楽しそうな様子を見る、主上を探してた様子の詮子のキツい表情が先行きを暗示してる…。こんな時からそんななの!?
あと、道長が陣定で「民が云々」って言ってたな。道長だけは民のことを考えてる(まひろの望む世のために)ってやつ…?

第13回相関図


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?