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「ビジネスゲームは、果たして効果的な研修になり得るのかどうか?」について、導入の失敗ケースから考察してみた件

ビジネスゲームの研修をやっている身なので、「効果がある」と自信を持ってやっていますが、研修の打ち合わせを人事部の方々と話をしていて、

・「ビジネスゲームって、意味あるんですか?」
・「以前、ビジネスゲームをやりましたけど、その場は楽しかったですが、その後、研修効果があったかというと謎ですね」

というお言葉を頂戴することもあります。

そこで、今回のコラムでは、ビジネスゲームは、果たして効果的な研修になり得るのかどうか?について考察していきたいと思います。

よくビジネスゲームのメリットや良い点は色々なサイトから情報を得られますので、今回は、導入の失敗ケースから考察していきたいと思います。

ビジネスゲームの効果が薄れてしまう3つの原因

①設定した研修の目的と選んだゲームの学べる内容に相違があった
ビジネスゲームは、基本的に1コンテンツ1テーマが望ましいです。(※つまり、1つのゲームで学ぶ内容は1つのテーマにした方がベストということです。)

ですが、同じゲームでも、視点やアプローチを変えるだけで、複数のメッセージ(講義内容)で解説することができちゃうのです。

example.
例えば、よく行われるゲームで、ペーパータワーというものがあります。
これは、ゲーム終了後の解説、講義の内容を

・目標設定×PDCAの講義もできますし、
・チームビルディングの講義もできますし、
・売上/利益などの財務会計の講義にも使えます。

このように複数の研修メッセージ(講義内容)が作れる訳です。

もし、仮に研修の設計を誤ってしまい、

研修の当初の目的=「目標設定×PDCAスキルを体験し、学ばせたい」
 ↓
導入したビジネスゲーム=「ペーパータワー」
 ↓
解説した講義内容=「チームビルディングの内容」

研修の目的≠講義内容

になってしまっては、研修の効果が薄れてしまいます。

ビジネスゲームはあくまでもツールですので、
設定した研修の目的とゲームで学べる内容(講義・解説)がマッチングするように研修設計を行う必要があるのです。

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②ビジネスゲームのワーク時間の設定の見積りが甘かった
ゲームの進行で、意外に難しいのがワーク時間の調整です。全員がルールをきちんと理解して、スタートさせるのが理想的ではありますが、全員の理解を待っていると時間が大幅に遅れてしまいます。ゲームの内容にもよりますが、経営シミュレーション系のゲームでは、ゲームの難易度も上がり、ゲーム開始直後では、受講生たちの理解度にバラツキが生じます。
全員が理解した上で進められるのが理想的ですが、ゲームのワーク時間が仮にグループ内人数の全員が完了できない、終了できないぐらいの短い時間に設定しまっては消化不良が起こってしまいます。

ゲームのワーク時間は、グループ内人数の最低でも8〜9割が完了できる時間に設定しましょう。
※グループ内人数が6人であれば5人は問題なく完了できる時間設定が理想

③ビジネスゲーム終了後に何もしない
外部の研修会社に依頼せず、社内の研修の一環で、ゲームを行う際によく聞かれることですが、ゲームだけやって満足してしまうケースもあるようです。

●ゲームを行っている最中に盛り上がって、和気あいあいして、楽しかったね。あっ、やばい。時間が惜しすぎちゃって、振り返りする時間がなくなっちゃったから、簡単なメッセージだけ伝えて終わっちゃおう。

●ゲームを行っている最中は盛り上がっていたのに、振り返りや講義の時間になったら、シーンとなってしまい、落差が激しくて、時間を短縮して終わってしまった。

このようなケースも話に聞いたことがあります。

ゲームをただやってもらうだけなら、そんな楽なことはないですが、そうはいきません。 大変な仕事、骨の折れる仕事はゲーム後に存在する訳です。ここを疎かにしては、ビジネスゲームがただの「お遊び」、「気分転換」の時間になってしまうのです。

上記の3点がビジネスゲームの効果を無効化させてしまっている原因とも言えます。
では、ビジネスゲームを有効化させるために、何に気を付けるべきかどうかを検討していきたいと思います。

ビジネスゲームの大まかな流れは、このようになります。

「演習(経験)」→「意見/感想交換(省察)」→「一般化(概念化)」→「適用(実践)」

ビジネスゲームは、帰納的アプローチ(演習⇒講義)で、経験学習モデルをもとに行われることが多いです。
※経験学習モデルについては、こちらのコラムへ

この流れに沿って、気を付けるべきポイントを見ていきます。

気を付けるべき3つのポイント

(1) 演習には、適切なビジネスゲームを選ぶ
企業研修では、いろいろな制約条件は付きものですが、ゲーム選択にあたっては、受講生にとって、必要な知識や技術の習得を何かを見極め、その習得にどのくらいの時間と費用が掛けられるのかなど、注意して考える必要があります。受講生にとって、必要な研修の目的、目標、内容を検討してください。
また失敗の原因の1つ目でも挙げたように、気を付けなければいけないのは、同じゲームでも、講義の進め方ひとつで、高度な内容にも簡単な内容にもなってしまうということです。

ビジネスゲーム後の講義の内容、ポイントをどう伝えるか、どう引き出すかが重要になります。まさしく、進行役の技量の腕の見せ所です。

(2) 演習の研修のスケジュールの組み方・時間の設定について
仮にビジネスゲームのみを研修の時間として扱う場合は、問題ありませんが、新卒研修や管理職研修を2日間かけて行う場合の一部にゲームを取り入れたい場合、どのタイミングで行うのか?も検討したいところです。

研修のスケジュールの始めの方に行うのか、中ほどで行うのか、終わりの方に行うのか、で分かれますし、昼食後は誰でも気持ちがだれやすくなりますので、そのタイミングで行う計画をしてもいいです。講義に向かない時間にはゲームを、ゲームに向かない時間には講義を、などメリハリが効くように設計するべきです。

また失敗の原因の2つ目でも挙げたようにゲーム自体のワーク時間の設定も余裕を持って、設定し、予備時間も設定し、消化不良が起こらないようにしましょう。

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(3)ゲーム後の講義・解説(省察→概念化)について
失敗の原因の3つ目にも挙げたように、ゲームをただやって終わりでは、何の学びにもつながりません。進行役のファシリテーター、講師が意識したい点を列挙していきます。
(ⅰ)ゲームの流れの「意見/感想交換(省察)」

省察では、受講生にゲームを通して、自分たちが気付いたことや思い浮かんだこと、思い出したことでも何でも構いません。ゲームのプロセスでも、コンテンツでもよく、否定・批判せずに万遍なく、受講生の意見を引き出していくことが大切です。受講生にきちんとアウトプットさせることで、ゲームでの振り返りを促進させ、腹落ち感につなげることになります。
例)ゲームのコンテンツ:PDCAを学ぶ内容、問題解決方法を学ぶ内容

例)ゲームのプロセス:「あのときこういった判断をすればよかった」、「もっと効率的な方法があったかも・・・」

(ⅱ)ゲームの流れの「一般化(概念化)」

一般化(概念化)で大切なことは、実際の職場にきちんと持ち帰って、受講生が使えるかどうかです。そのためにも、講義は、観念的で現実離れした内容ではなく、実際の職場の実例にあった現実的な内容で、解説を行うことが重要なのです。
またビジネスゲームでは、演繹的なアプローチ(講義⇒演習)ではなく、帰納的なアプローチなため、長ったらしい講義はあまり好ましくありません。解説は8分~15分、長くても20分程度にとどめておくと良いでしょう。

今回は、ゲームの失敗のケースからゲームが効果的な研修になり得るのかを考察してきました。
下記3点が失敗の原因となり、研修の効果が薄れてしまいます。

【失敗の原因】
①設定した研修の目的と選んだゲームの学べる内容に相違があった
②ビジネスゲームのワーク時間の設定の見積りが甘かった
③ビジネスゲーム終了後に何もしない

ビジネスゲームを有効化させるためにも、ぜひこれらの対策をしながら、
研修の設計をしてみてください。


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