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スタートアップから10年、ZOZOテクノロジーズを退職します

2021年9月30日をもって、ZOZOテクノロジーズを退職します。元々はVASILYというスタートアップに勤めており、途中スタートトゥデイ(現ZOZO)によるM&Aがありました。吸収合併という形でVASILYが解散してZOZOテクノロジーズになったので、通年で10年勤めた会社を辞めることになります。ヤフーを辞めてスタートアップに入り、上場を目指していたところ、個人的にライバル視していたZOZOによる買収。そのZOZOがヤフーに買収される、という中々面白い10年でした。流石に10年となると感慨深いので退職エントリを書いてみます。めちゃくちゃ長くなってしまいましたが、暇つぶしにお読みください。

大手のヤフーを辞めてスタートアップのVASILYへ入社した動機

2011年の東日本大震災が人生を考え直すきっかけでした。世の中が混乱していたので目先の安定を取るという考えもありましたが、いつ何が起こるか分からないので、自分がチャレンジしたいことが出来ない人生の方が嫌だなと思い転職を決意。大まかに以下のことを思っていました。

・ライフスタイルを変えるサービスに携わりたい
・エンジニアとして外を見てみたい
・スタートアップへの憧れ

ライフスタイルを変えるサービスに携わりたい

当時はエンタメ系のサービスを担当していたのですが、生活に密接なサービスに携わって人々の生活を変えたいと思い、衣食住をテーマに転職を考えました。衣食住の中では、衣の分野は技術的なアプローチをしているプレイヤーが少なく、食はプレイヤーが多いなと感じていました。挑戦(成功)している人が少ない方が良かったので、プレイヤーが少ない方を選んでいます。

エンジニアとして外を見てみたい

新卒で入ったヤフーは非常に良い会社で、チームも本当に最高でした。規模が大きく、社内の制度、ライブラリも揃っていて仕事がしやすい環境であったと思います。新卒でヤフーを選択し、この会社で働けたのは幸運でした。
「石を投げればヤフーにあたる」くらいヤフー経験者で盛り上がれます 笑

1点気になっていたのが、社内のライブラリが揃っているので、外部のOSSの選択肢、チューニング要素はあまりなかったことです(技術力の高い人がヤフー用にカスタマイズしていたのですから僕がいじったり外を探すよりも良いわけです、これは僕の担当分野や、力不足もあるので局所的な話です)
社内で仕組みが確立しているのは非常に良いことですが、この頃は「このままだとヤフーの中で働く知識はついても、外に行った時に通用しないのでは?」という若干の不安がありました。

スタートアップへの憧れ

僕が学生の頃は、テレビをつければヤフー、楽天、ライブドアという時代で、スタートアップという言葉は耳にしませんでした。mixiやCyberAgentが話題になり始め、GREEやDeNAなどはもう少し後だったと思います。
時が経ち、大手よりもスタートアップが話題になり、僕が転職した2011年頃はWeb界隈のスタートアップはかなり多かったのではないかと思います。「スタートアップのエンジニアは何か凄いらしい」みたいな憧れがありました。

スタートアップでの7年間

上記みたいなことを考えていた時、ヤフー時代の同期が創業したVASILYで資金調達があり、自社サービス専念のため声がかかりました。ファッション系のスタートアップで、CTOを中心に非常に優秀なエンジニアが揃っていたのが魅力でした。あと社長がカリスマ的で、この人なら何かやりそうな雰囲気を感じ、入社は即決でした。

当時ヤフーにどれくらい人がいたのか分かりませんが、関係者すべて合わせると数千人いたと思います。転職したVASILYのエンジニアは5人で差が激しかったです。会社のためには何でもやらなくちゃいけない環境で、やったことは記憶からだいぶ飛んでいます。

・PHPからRubyへのリプレイス
・AWSリージョンを米国西部から東京へ変更
・PC/SPのWebフロントエンド開発
・iOS開発
・クローラー作成
・新規サービス立ち上げ
・事業部長・EMとしてマネジメント
・新卒/中途採用
・受託業務
・etc

とにかくVASILYは大変で、刺激的で最高でした。正直、経済的な豊かさではヤフーに残った方が良かったと思いますが、20代をVASILYで過ごすことで自分を成長させれたと思います。

スタートアップの魅力はたくさんありますが、以下の5つは今でも良いなと思います。

・意思決定のスピード
・自身が影響を与える大きさ
・数値に対する意識
・SO(ストックオプション)による経済的な利益
・仲間意識

特に数値に対する意識はかなり強くなりました。小さい会社だと存続に関わるので、毎日色々な数値を見るようにしていました。何か意思決定をする際にも、代表がよく「君が神だとしてもデータを持ってこい」と言っていたのを覚えています 笑

これ以上スタートアップ当時の話をすると退職エントリからかけ離れるので、この辺りでやめておきます。

M&AとZOZO

「上場するぞ!ファッションテックでNo.1目指す!ZOZO抜かすぞ!」と毎日がむしゃらにやっていましたが、いきなりZOZOによるM&Aを聞きました。妻が深夜に緊急手術をした翌日、病院のロビーで聞いたこともあり脳がバグりました。正直何を言っているか分からなかったです。
※ ちなみに会社としてZOZOを競合だと思ってやっていたかは別の話。個人的に打倒ZOZOでした

その後は、「完全子会社だけど、僕のSOってどうなるの?」ということで毎日役員と話していたのを覚えています。直近の昇給、賞与といった報酬ではなく、SOをもらって上場をすることが経済的なリターンだったので、僕としては買収は悲しい結末でした(経済的には)

ZOZOからの買収はアクハイヤーで、人材獲得が目的だったと思います。今でも多くのメンバーがZOZOに残っており、業界的に大成功のアクハイヤーだったのではないかと思います。買収したZOZO側の変革意識、メンバーに対してフォローを徹底したVASILYの経営陣、VASILYメンバーのコミットメント、元々ZOZOにいた社員の温かさ。全てが揃っていた結果です。

当時、僕はZOZOをライバル視していたので、おそらくM&Aにより辞めそうだなと思われていたと思います。辞めなかったのは、ZOZOは「いい人」ばかりで居心地が良く、VMVに共感も出来ていた点でした。やることはたくさんありますし、VASILYを評価してくれた会社には何か残そうと思っていました。

あと、人事の方々の影響が大きいです。あんなに楽しそうにエンジニアに話かけて一緒に考えてくれる人事がいる会社が良くないわけありません。仕事だからやっているとかじゃなくて、なんか本当に自然で「いい人」たちなんですよね。

ZOZOテクノロジーズでの役割

最初は新事業創造部みたいな名前の部署に所属して、VASILYが一つの部署になった感じでした。新規サービスの立ち上げをやっていたのですが、それがペンディングになり「VASILYがここにいてもZOZOTOWNやWEARといったサービスの課題は変わらない」ということで、部署は解体して一つの開発部になり、VASILYのメンバーは分散配置されました。この辺りは当時のCTOのnoteが非常によくまとまっています。

サービスのクローズ

分散配置で僕はZOZOTOWNのiOSのリーダーになりましたが、それと並行してVASILYのサービスをクローズさせていきました。このことからも人材獲得がメインの買収だと分かります(あとは長年サービス運営して蓄積されたデータ)

ヤフーの時もサービスクローズのお知らせを出してから辞めたのですが、長年運用してきたサービスの終了は悲しいです。最後に残ったIQONも新規の開発は止まっていて、赤字になるのが見えていたので自分の中では仕方ないなという感じでした。最後にGoogle PlayやApp Storeのサブスクがあるサービスをクローズさせるといった経験ができたのは貴重だったかなと思います。

ZOZOTOWN iOSのリーダーとテックリード

ZOZOテクノロジーズでの活動のメインは、テックリードとZOZOTOWN iOSチームのリーダーです。

テックリードとしての役割
・技術広報(iOS界隈にZOZOテクノロジーズを認知してもらう)
・ZOZOテクノロジーズのiOSエンジニア全体の活性化
・採用
・開発ガイドラインなどの策定
ZOZOTOWN iOSリーダーとしての役割
・組織開発
・効率的/継続的/堅牢なアプリケーションを目指す

技術広報

「ZOZOってエンジニアいるんですか?」と言われたことを覚えています。あまりにもZOZOはエンジニアのイメージがありませんでした。以下のようなことを行い、ZOZOにもiOSのエンジニア組織があるということを認知してもらえるようにしました。

・iOSDC / try! Swiftへの協賛・登壇
・テックブログなどのアウトプット
・meetupの開催

今年はiOSDC 2021に関して7名登壇+原稿2本ということで、業界でも屈指の登壇数だったのではないでしょうか。今年に関してはあまり関わっていませんが、去年も5名登壇でした。カンファレンスに登壇し、それが業務として評価されるという流れを作れたのではないかと思います。

meetupなど自社開催のイベントもやるようにしていて、来月はAfter iOSDC Japan 2021が開催されますので、興味がある方はぜひご参加ください。


ZOZOのiOSエンジニア全体の活性化
ZOZOにはZOZOTOWN、WEAR、R&D、計測(SUIT, MAT, GLASS)など様々なプロダクトがあります。横のつながりがどうしても薄くなるので、技術共有会という定例の知識共有の場を設けました(Spotifyモデルでいうところのギルドです)

また著名なiOSエンジニアである岸川さんに技術顧問に就任していただき、社内だけでなく社外からも先進的な技術が取り入れるようにしました。
著名なエンジニアにいつでも相談できる環境を作ることは、プロダクトが良くなるだけでなく、エンジニアにとって良い福利厚生だと思います。

組織開発

これが一番頑張ったのですが、ZOZOTOWNのiOSはリーダーとベテラン1名が開発の大部分を支えている状況でした(これはZOZOのmeetupで以前公開された情報です)
ZOZOTOWNの規模でこんな人的SPoFを抱えているという事実に驚くとともに、非常にまずいという危機感のもと、プロダクトに必要な人材定義と採用を急ぎました。僕が辞める時は8人のチームになり、性別、年齢、国籍、キャリアなどかなり多様性のあるチームにすることが出来たと思います。
僕はよく「幻影旅団・アベンジャーズ・オーシャンズ11」のようなチームを作りたいと言うのですが、強い組織を定義して作れたのはひとつやりきったことかなと思います。

効率的/継続的/堅牢なアプリケーション

ZOZOは10年続くアプリケーションで、古いコードもたくさんあります。ZOZOSUIT, ZOZOMAT, ZOZOGLASSのような新しい機能開発は絶え間なくあり、リプレイスと新規案件の調整をしていくのはリーダーとしてやらなければいけないことでした。

新規
・ZOZOMAT
・MSP(マルチサイズプラットフォーム)
・ZOZOGLASS
・リニューアル
・etc

リプレイス, リファクタリングなど
・Deployment target(iOS 8)という状況をルールを作って変えていく
・Objective-CからSwiftにリプレイス
・PUSHの仕組みを刷新
・Crash Free率の向上
・etc

実際は色々な資料が公開されている通り、ID基盤刷新、通信基盤の刷新、テストコードの拡充など様々なことが行われています。

現テックリードと採用資料を作っている時に出た言葉で気に入っているのがあるのですが「リノベーションとイノベーション」これをやっていくのがZOZOTOWN iOSだよねってよくみんなで話しています。

良いアプリケーションを目指して、全て自主的に動いてやりとげたチームメンバーの皆さん、僕が行き届いていないところをテックリードとして支えてくれたばんじゅんさんには大変感謝しています。

なぜZOZOテクノロジーズを辞めるのか

こんな愛着があるチーム、素晴らしい会社を離れるのは名残惜しいですが、辞める理由がいくつか揃いました。

・VASILYに入って10年、ZOZOテクノロジーズ3年という節目
・3年で作ろうと思っていた組織の達成
・リニューアルの完了
・エンタメに対する価値観の変化

VASILYに入って10年、ZOZOテクノロジーズ3年という節目

これはあまり意味をなさないのですが、気持ち的には区切りがついたなという感覚です。

3年で作ろうと思っていた組織の達成

以下のようなことを3年でやろうと思っていて、概ね達成しました。

・後任のテックリード
・プロダクト開発をリードできるメンバー採用
・ベテランの採用
・新卒の採用(受け入れる体制)
・エンジニアキャリアが短いメンバーの採用(受け入れる体制)
・後任リーダーの育成
・WWDCなどを通した技術のインプット、アウトプットの流れ

中でも採用について、「自分より優秀、もしくは近い将来優秀になる人を採用する」という考えでやっていましたが、それをやっていくと自分が一番ボトルネックになります。理想のチームは自分がいなくても回るチームです。自分を首にして完成とは言いませんが、素晴らしいチームが出来たと思います。僕がいなくてもZOZOTOWNを作る上ではパフォーマンス劣化しない組織になっているはずです(本当は5年の計画もあったのですが、それは任せることにしました)

リニューアルの完了

2021年3月にZOZOTOWNは大規模なリニューアルをしました。なんとインターネットで服が買える非常に便利なサービスですので皆さん使ってください。ZOZOMAT、ZOZOGLASSといった非常に刺激的なプロダクトに関わって、リニューアルまで出来たので達成感があります。

エンタメに対する価値観の変化

これが一番大きいです。最初ヤフーを辞めた時は、「生活に密接なサービスに携わって人々の生活を変えたい」という思いがありエンタメから移ったのですが、2019年末以降、コロナ禍になって世の中のエンタメ不足を感じ考えが変わりました。エンタメ業界の中には、コロナ禍で100%サービス提供ができなかったり、経営が苦しいところも多いと思います。そんな中でユーザー的にはエンタメ不足で毎日が楽しくない、気分的に落ち込んでしまうなどがあり、暗いニュースもよく耳にします。コロナ禍になりエンタメは生活に必要なものだと実感しています。

ZOZOテクノロジーズを辞めて何をやるのか

というわけでエンタメ業界にいくことにしました。
次に行く会社はGENDAという会社で、そこでVPoEとしてエンジニア組織を立ち上げます。一番大きな事業としては子会社のGENDA SEGA Entertainmentがゲームセンターの運営をしています。皆さんお馴染みの「SEGA」のゲームセンターです。

・ゲームセンターのDX
・オンラインクレーンゲーム
・会員向けアプリ
・新サービス

こういうことをやっていくエンジニア組織を作ります。現在一番大きな事業がゲームセンターなので、当面はそこに力を入れることになりますが、エンタメ全部やります!ということで幅広く事業は展開して予定です。

なぜGENDAか

事業がマッチするだけだとエンタメ系の会社はたくさんありますが、GENDAだからこそ面白いと思えることがたくさんあります。

・経営陣の魅力
・M&Aによる事業展開の拡大
・IPOを視野に入れている
・純粋持ち株会社のVPoEという異色な経験
・会長と話した時のエンタメに対する想い
・ゲーム大好き(ゲームセンターも好き)

魅力とかはこのあたりの記事を見て頂くと伝わると思います。

個人的な思いとしてはIPOは経験してみたいということです。20代のうちに大手をやめて挑戦しましたが、悔いはないかというと、やっぱり達成してみたいなと思ってます。企業としてはIPOは手段の一つだと思いますが、僕一人としては通過点ではあれど一つの目的にしてもよいかなと。「人生の忘れ物を取りに行こう」という言葉をもらったので、今後ちょくちょく使おうと思います 笑

謝辞

3年半という期間でしたが、お世話になったZOZOテクノロジーズの皆様ありがとうございました。最高の会社で毎日楽しく過ごせました。
本当に「いい人」が多い会社で「楽しく働く」を体現している会社だと思います。採用競合になると思うと震えますが、僕も「あららが競合はやっかいだな」って思われるくらい頑張りたいです。そして、どちらかというと、一緒に勉強会とかして共に業界を盛り上げていく仲間でありたいと思っています。今後もよろしくお願いします。

VASILYからの皆さん、10年間本当にありがとうございました。
優秀な方々に囲まれて、自分の能力不足を痛感していましたが、皆さんに助けられて何とか乗り切ることが出来ました。本当に感謝しています。
僕をVASILYに誘ってくれて、ZOZOでも一緒に働いたCEOの金山さん、CTOの今村くんからはたくさんのことを学びました。尊敬する経営者です。大変お世話になりました。これからも仲良くしてください。

最後に

もしここまで離脱せずに読んでくれた方がいましたら、めっちゃくちゃ長い文章を読んで頂きありがとうございました。

最後に決め手として自分の娘の存在があります。
2歳の娘ですが、毎日たくさん成長しています。
明らかに難しいところに登ろうとするし、全然できないのに紐を結ぼうとしたり、転んで痛みを感じながら成長しています。

まだやったことないことに日々挑戦している娘に対して、自分はコンフォートゾーンにいると思っていて、負けないようにラーニングゾーンに身を置いて頑張っていきたいと思います。

・結婚する
・子供が産まれる
・家を買う

上記のような挑戦しない理由は色々あると思うのですが、娘を言い訳に挑戦しないのは失礼なので、娘を最優先におきつつも精一杯やっていきます。

これからいくGENDAはエンジニア組織を立ち上げるフェーズです。興味がある方はTwitterでDMください!よろしくお願いします。

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