百合
まとわせた糸の
その色色を
その両端を
つまんで互い違いに
ひっぱってほしい
その独立しながらにして混ざり合うのを
私は体感したい
痛いのは嫌い
だけれど、軽んじられるのはもっと嫌い
だからね、痛みを知った気になって
成熟を前借りするの
十字に編んで
異なる色を
交わせて詰めていく
木造の喫茶店とか
曇り空とか
パステルカラーのストールだとか
総じて私は
自分に優しくともなんともない
なんでもない顔のものを選んでは
人生に組み込んでいくのが得意だ
得意だ、というのは決して自慢ではない
むしろ腫れて、じんじんと心の皮を押す
糸が増える
色という色が一本ずつ、まったく異なり
それでいて私はまだ
それを選ぶつもりがない
ゆっくり、巻かれていく、糸のその、少なかろう面積に応じて
人はきっと
世界より明るければそれを
白と呼ぶ
ちょうどあの太陽のように
だからわたしはそんなものばかり集めて
すこしでもあちら側に近づこうと
思ったのだけれど
家々が陽に当たって影を落とすように
わたしがただ沈んでいくだけだった
選ばないということが
唯一私に許された権利だ
いつからか記念日を気にしなくなった
季節も、どこかぼやけて
いつのまにか春の隣に秋がいて
夏の終わりに冬が来た
実りが落ちてまた咲き実るとき
それが私のアニバーサリー
無数の弦のような
糸の幾重を爪弾いて
不協和音は鳴る
落日の、
こまやかな縫い目
糸はいつしか私の一面を覆い尽くし
おおきな
おおきな
まゆになった
ときおりひびく
どくどくという音
音
音…
いつしかそれは
塩味をふくんで
やわらかくふくらみ
だんだんと足並みをそろえた糸の
変わる
やぶる
あわきももいろの女
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