不遇と悲運の軽自動車?スバルR2について
ちょっと前の記事ですが興味深い話が。なにせ、かつて自分も9年ほど乗っていた車なので触れないわけにはいきません。00年代前後に登場したスズキ・ワゴンRによって、軽自動車はスペース性を重要視したいわゆる「トール系」が人気を集め、後発でダイハツ・ムーヴ、ホンダ・ライフといった車種が誕生。スバルも「プレオ」でその波に乗りますが、その後釜として同社が出したのはその真逆、デザイン性と性能にこだわった異色の一台でした。
発売当時(2003年)は折しも自分も免許を取り立てで、数ある軽の中からどれを買おうかと目移りしていた頃でした。ただ第一候補がスバルだったのは間違いありません。当時父親が乗っていたスバル・ヴィヴィオを少し借りて乗った時、えらく小さい車なのに驚くほど安定していると素人目にも感じるほど。これはスバルしか無い、と考えていた矢先にこのR2登場です。
実際試乗した際の印象は「足回りは軽いが安定してて、速度を上げてもブレない」「CVTが実に快適」で不満無し。後部座席は狭かったものの、販売当初の雑誌記事によると、そもそも「軽自動車の平均乗車人数は1.5人程度」というデータがあり、そこに割り切ったデザインと設計なのですね。自分が乗っていた時も定員4人をフルで乗せる機会はほとんどなく、荷物が多い時も後部座席を倒せばいいだけなので何ら問題はありませんでした。
R2発売の2年後、スバルは先のコンセプトをさらに特化させた「スバルR1」も販売。これも試乗しましたが、走りの上質さと快適さではR2を間違いなく上回っていて、その本気度と力の入れように驚いたほどですが……いずれも売上はイマイチ。理由は記事にもある通り「軽自動車市場における『流れ』の読み違え」と「『いい車を作る』ことへのこだわりがアダに」なったのでしょう。
R2と同時期に、ダイハツから一台の軽自動車が発売されました。そう、「タント」です。規格いっぱいの大きさを持ちつつも、いわゆる軽ワゴンとは別物の「ハイト系」という、ワゴンRのさらに上を行く概念を生み出したこの一台は大ヒットし、幾多のモデルチェンジを繰り返しながら現在もなお製造・販売が続けられています。これがプロダクトアウトなのか、それともマーケットインなのかは分かりませんが、少なくとも軽自動車市場における「流れ」に上手く乗れた結果、軽のファミリーカーとして進化を続けられたといってもいいでしょう。
一方のスバルはR2の3年後に「ステラ」を発売し改めてトール系にも参入しますが、企業としていわゆる「選択と集中」に舵を取った結果、軽自動車そのものの製造を終了し、全てダイハツのOEM供給に切り替わりました。今の「ステラ」は元々ライバル車だったムーヴです。プレオプラスもイース、サンバーもハイゼットです。加えてハイトワゴンの「シフォン」も元は先に紹介した「タント」なので、何とも皮肉であります。
そのため純粋な「スバルの軽」が欲しいのなら中古車市場を漁らなくてはいけません。ただし発売年度からして既に15年落ちのものばかりで、もし10万㌔以下があったら掘り出し物といっていいため、そこを承知の上で探していただければいいでしょう。
なおR2もそこそも出回ってますが、ある時行きつけの車屋さんと話をした際、マニュアル車の中古車市場についてあれこれ語っていたところ……
「にしても、R2は勿体無いね。あれマニュアル車はあるけど、ノーマルエンジンのやつだけなんですよ」
「え、無いんですか? 最上級のモデルはスーチャ付でハイオクでしたよね?」
「あれは『マニュアルモード付き』だからMTじゃないんです。もしターボ付きでMT車だったら、マニュアル車が珍しい昨今なら入荷後に即売れちゃうでしょうね」
……そういった意味でも、R2はやはり不遇だし悲運の車だとしか言いようがないのでした。
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