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『ブラタモリ』レギュラー放送終了、後番組はそれで大丈夫?の巻

 毎週観てる番組が「そうではなくなる」のは非常に寂しい。昨年は『タモリ倶楽部』も終了し、テレビでタモリさんを観る機会がさらに減ります。御年78歳、本当にお疲れ様でした。

 土曜夜というあの時間帯に、地学及び地理・歴史という固めなジャンルの話を、至極ゆるゆるとした雰囲気のまま学べてしまう番組を成立させたのが素晴らしかった。
 そして「ゆるゆる」とは書いたものの、教養バラエティ番組として一切ダレる箇所がない。最近では黒部ダム関連で二週にまたぐ回がありましたけど、前・後編で上手く変えて最後まで飽きさせない。前編は黒部川の扇状地から宇奈月温泉誕生の経緯、そして初期の電源開発までを紹介。後編では黒部峡谷鉄道に乗り、さらに時代が進んでからの大規模電源開発事業を一気に紹介してました。岩盤の中にある熱源を人力工事で突破だなんて、国策事業とはいえどエライことをやってたんだな、と感心したものです。

 そこへタモリさんの地理・地学その他諸々に関する教養が入ると、さらに面白くなる。あまりにもカンが良すぎて、同行する案内役の先生or現地の研究者が説明するよりも先に答えを言ってしまうこともしばしば(いや、しょっちゅうか)。
 しかし、その一言が「蘊蓄タレ」になっていない点もポイントで、

「『?』……『!』……ああ、そういうことですか!」

 と本人も学ぼうとしている。博学さを引け散らかさず、謙虚なんですよね。どんな案内役の方々に対しても同じ姿勢を取っている。視聴者側の目線も意識しているのでしょう。
 観てる側もタモリさんと一緒に学べる番組。演出そしてタモリさん本人もその点を意識しながら作っていた。日本地理学会、日本地質学会といった団体から「(当該分野の)学問への社会普及に貢献した」と表彰されたのがその証左だと思います。

 以前に、某大学教授が同番組を「男性が女性にあれこれ教えたがるマンスプレイニング」などと表現してましたが、的外れ過ぎますね。逆に「そんな表現を知らない一般人に実例を挙げて教えてやろう」というマンスプレイニングになってます。なお、その方はレギュラー放送終了の報を受けてまたも同様のポストを呟き、現在総ツッコミを喰らっている真っ最中です。
 タモリさんが疑問を持ったり閃いたりし続けている間に、某大学教授は一体何を学んでいたのか、頭固すぎます。そこいらの岩盤より固い。


 さて後番組は『新・プロジェクトX』だそうですが、どうなるやら。うちの母は興味深げですが、過去の内容からしてブラタモリの視聴者がそのままスライドする内容とも思えません。『博士ちゃん』や出川の充電旅あたりに移ってしまいそうです。
 もちろん良い番組だったのは分かります。「てんとう虫、町を行く(スバル360開発秘話)」「ツッパリ生徒と泣き虫先生(伏見工ラグビー部・日本一への挑戦)」などは非常に面白く観られました。ただ、ブラタモリが持っていた「ゆるゆるさ」加減から、いきなり田口トモロヲによる独特のナレーションで語られる「ある無名の者たちのドキュメンタリー」に一変するのはどうなんでしょうね。空気が違いすぎるし、何より放送枠があまり良くない。

 元々の番組は、中島みゆきの主題歌やエンディング曲も含めて大ヒットしましたが、その要因として「時間帯も絶妙だった」からではないかと。火曜夜21:15~という『NHKニュース10(2000年~06年)』の前にあった、テレビにおける「ゴールデン枠」の最後の1時間だったんですね。民放各局がドラマやバラエティを流す中、何ともドラマチックな演出でドキュメンタリーを流す。
 Wikiにある「中高年層に受けた」のもそれで、個々の生活パターンに違いはあれど、食事も済んで一段落付くのが大体夜9時くらい。ゴールデン枠の残り一時間に熱いドキュメンタリーを観て、それをしみじみと見届け、いい気分になって満足したらもう夜10時。「明日に向けて(寝支度も含めて)動き出す」のはこのあたりでしょう。それが良かったのでは。

 なので、同じゴールデンタイムではあるものの、そのど真ん中に来て大丈夫なのかなと。『チコちゃんに叱られる!』内ではパロディーとして時折登場する際は面白く観てますが、復活した「本家本元」はどうなんだろう、と。
 番組の趣旨からすると昭和の話はやらない(バブル崩壊以降)ようですし、平成に入ってからの話でどこまで作れるやら。採り上げる題材があるからこそ復活させるのでしょうけど、かつてはマンネリ化、さらには演出パターンに合わせたが故に事実との違いが生じ、それが問題視されて事実上打ち切りになった番組でもあるわけで。先の「ツッパリ生徒と~」もドキュメンタリーといいつつ、かなり演出が入ってると言われてます。個人的には好きですが、今はSNS等で即座に事実誤認の指摘が出来てしまう時代。新作は厳しい目で観られてしまうのではと思います。

 『チコちゃん』でのパロディー(バラエティ番組のネタとしてやる)の方が面白かった、なんて話にならないのを願うばかりです。

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