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最新戦法の事情【豪華版】(2020年3月号・振り飛車編)

どうも、あらきっぺです。

タイトルに記載されている通り、振り飛車の将棋を見ていきましょう。

なお、当記事の注意事項については、こちらをご覧くださいませ。


最新戦法の事情 振り飛車編
(2020.2/1~2/29)


調査対象局は52局。2月は平日が少なかったからなのか、母数があまり伸びませんでした。それでは、戦型ごとに掘り下げて行きましょう。


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◆先手中飛車◆


僅か1局のみ出現。ただし、初手▲5六歩に対して後手が相振り飛車を選んだケースもあるので、中飛車志向の将棋が1局しかなかったという訳ではありません。とはいえ、ここまで対局数が落ち込んだのはビックリです。

原因としては、やはり後手超速の存在が考えられるでしょう。前回の記事では振り飛車の工夫を紹介しましたが、あまり王道な指し方ではないので主流にはなり得なかったようですね。

さすがに先手中飛車が廃れていくとは考えにくいですが、多くの振り飛車党が違う戦法を支持していることは確かだと言えるでしょう。



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◆四間飛車◆


14局出現。2月では最も指された振り飛車です。出現率は約27%で、人気を集めていることが窺えます。

四間飛車は端歩突き穴熊が厄介な相手でしたが、最近ではミレニアムに組んで立ち向かう作戦が注目されており、振り飛車も対抗できると考えられています。

しかしながら、居飛車には端歩突き穴熊だけでなく、もう一つ有力な持久戦策があります。それはミレニアムですね。今回は、その将棋を掘り下げて行きましょう。(第1図)


図面1

2020.2.5 第78期順位戦B級2組10回戦 ▲鈴木大介九段VS△近藤誠也六段戦から抜粋。

居飛車のミレニアムは、2000年頃に藤井システムの対策として編み出された作戦です。その後、藤井システムが荒廃したので指される必然性がなくなり自然消滅しましたが、2018年10月頃から再び有力視されました。この作戦の狙いや戦い方については、こちらの記事をご覧ください。

図面1

さて。そろそろ具体的な解説に入りましょう。

居飛車のミレニアムに対して四間飛車が平凡に組むと、このような局面になることが多いですね。一般的に、四間飛車は持久戦になると[美濃→高美濃→銀冠]という要領で囲いを発展させるのが一つのマニュアルとされています。


図面1

しかしながら、相手がミレニアムの場合はそうもいきません。ご覧の通り、▲2六歩を突くことが出来ないからです。振り飛車は囲いの進展性の上限が高美濃になっているので、必然的に攻める準備を進めることになります。

という訳で、本譜は▲7八飛△4二銀▲7五歩から石田流への組み替えを目指しました。(第2図)


図面2

居飛車の右銀は4二にいるので、先手は易々と石田流に組めそうな局面ですね。しかし、そうは問屋が卸さないのです。

まず、後手は△2四歩と突いておきます。先手は▲6八角△8四飛▲7六飛で形を整えていきますが、飛車が7六に上がったのを見て△2五桂と跳んだのが機敏な一着でした。(第3図)


図面3

先手は端が手薄なので▲2五同桂△同歩と進めるのは必然です。しかし、そうなると先手は▲7七桂と跳ねることが出来ません。△6四桂▲9六飛△9四歩で飛車が窒息してしまうからです。

▲7七桂が指せないとなると、先手は飛車を7六に浮いた手の価値が感じられないですね。つまり、石田流への組み換えを目指した構想が冴えなかったという話になります。


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