見出し画像

「クリスマスマーケット」を知らなかった僕が、熊本で70万人以上が訪れるクリスマスマーケットを作った話。その10〜ホンモノにこだわる・広告協賛〜


こんにちは! “あらきん”こと荒木です。
 
前回の記事では、クリスマスマーケット熊本(以下、クリクマ)が目指す「優しいクリスマス村」を表現した会場空間づくりについて、お書きしました。
 
前回の記事はコチラ

 
僕らがミッションとする「熊本の地域にこだわりつつ、日本や世界のホンモノも感じることができるお祭り」をどれほどのクオリティーで実現させるか?に大きく影響するのが「資金集め」です。

そこで今回は、来場者数42万人以上を迎えるイベントとなったクリクマが、どのように開催資金を集めているか? ご紹介したいと思います。
 
 


初開催の開催資金、3千万円が必要だ!

 
そもそもクリクマは、僕たち市民の有志が集まって開催しているイベントです。
 
まちづくりのイベントに関わったことのある方なら経験があるかと思いますが、開催実現に向けて課題となるのが、「どうやって開催資金を集めるか?」ではないでしょうか。これが上手くいくかどうかによって、目指しているイベントをどれだけ実現できるかに直結するため、誰もが考え、苦しむところだと思います。
 
以前にもお書きしましたが、僕たちは2018年の初開催にあたり、福岡クリスマスマーケットを視察しました。そのクオリティーの高さや規模の大きさからして、相当な資金が必要であることは覚悟していました。
 
経費を計算した結果、初年度は3千万円は必要だ!。このうち600万円は、初回の記事でお書きしたように僕ら役員メンバー6人がそれぞれ出し合った100万円で充当するとして、残り2,400万円をどう集めるか? 地元の企業や団体から広告協賛を募ることは決めていたものの、大変なことは誰もが感じていました。どうアプローチしていけば良いのだろう? そこで役員メンバーの紅一点、メグの出番です。
 
彼女は広告代理店を経営していますから、いわば広告のプロフェッショナルです。広告協賛の仕組みをどのようにするか? どうやって熊本県内の企業にアプローチしていくか? メグを中心にあれこれ考えながら、進めていきました。
 

好きな特典を選べる協賛メニュー


 
まずは協賛となってくださる企業や団体に、どのような特典をご用意するか? まとまった金額をご協賛いただくのですから、魅力ある特典を用意したい。そこで、彼女と色々とディスカッションをしながら、こんな協賛メニュー表を作成しました(以下は2021年版)。

その特徴として、メニューを大きく3つのセグメント「SDGsプラン」、「福利厚生プラン」、「広告プラン」に分け、ご協賛いただける金額(5万円〜200万円)に応じて、好きなメニューを選べる仕組みにしました。例えば100万円をご協賛いただいた場合、共通特典以外に8種類のメニューを選ぶことができます。

 
「企業名をたくさん掲出してほしい」という企業であれば、「広告プラン」を中心に。「社名は出さなくていいから、クリクマを楽しみにしている従業員やお客様にプレゼントしたい」のであれば、「福利厚生プラン」からマグカップ引換券やドリンク券、ガーデンイグルーのご利用体験を選んでいただく。
 
「SDGsプラン」では、地元の子ども食堂を通じて、当日使える500円券を子供たちにプレゼントすることができます。地域貢献に意識の高い企業さんはこういったプランを選択され、2021年には30万円相当の500円券を進呈。600人の子どもたちを笑顔にすることができました。
 
このように、クリクマの協賛特典はそれぞれのニーズに応じて選べるメニュー方式にしたところ、協賛企業・団体の皆さんから「面白いね!」と喜んでいただいています。
 

タブロイド判チラシへのこだわり

 
 
ちなみに、広告の打ち出し方にも、ちょっとしたこだわりが。
 
先ほどご紹介した協賛メニューの中で「共通特典」としている「協賛ツリー」とは、チラシの裏面で全ての協賛企業を紹介するもの。ツリー型のデザインに会社ロゴを掲載しています。
 
これを共通特典とした理由は、初開催において、タブロイド判(新聞型)のチラシを、どうしても作りたかったから。


福岡の広告特集冊子
(西日本新聞で折り込み配布される)
福岡の広告特集冊子
(西日本新聞で折り込み配布される)

 
クリクマが手本としている福岡クリスマスマーケットでは、このタブロイド判チラシが、地元大手の新聞広告冊子として、都市圏の家庭に何十万部も配布していると知り、衝撃を受けました。熊本でこれほど大掛かりなイベント告知は無理だとしても、同じような印刷物を作ることはできる。
複数ページある新聞のような体裁をしたタブロイド紙であれば、クリスマスマーケット熊本を開催する僕たちの思いや、出店者・イヤーマグカップの紹介などをしっかりと伝えられます。
 
そのぶんお金はかかるけれど、初開催するイベントとなれば、インパクトを出したい。そんなわけで、タブロイド判チラシに掲載する協賛ツリーを共通特典として、ほかにも協賛金額に応じた広告を別途、掲載することにしました。
 
 

会場空間と調和する「協賛看板」をつくる

 
こうしたチラシ製作のほかにもう一つ、会場に掲出する協賛企業の協賛社名看板があります。
ここでこだわったのは、企業名をどう露出するか? ということ。
 
通常のイベントであれば、協賛企業の名称が目立つよう、デカデカと派手に広告を表示する。あるいは、協賛企業名を印刷したものを壁やボードに貼りつける、といった形が多いのではないでしょうか。
 
しかし、「いかにも広告」的なものは、クリクマの雰囲気には馴染みません。
 


優しいクリスマス村」と掲げるからには、その世界観と調和する広告。ご協賛いただく企業・団体にとっても、プラスとなる広告にしたい。
そうやって考え続けた結果、たどり着いたのが、ホンモノの木を使った協賛看板です。レーザーでカットした木製のボードやプレートに、企業名や団体名を刻印する。文字の色は白一色のみ、コーポレートカラーは使いません。
 
協賛金額によってサイズや数に違いはあるものの、いずれもデザインを統一することで会場空間と調和が取れます。さらに、協賛各社が一体となってイベントを応援しているというメッセージも伝わります。このような協賛看板にしたところ、協賛企業・団体の方々からも大好評でした。そればかりではなく、会場の空間演出に溶け込むホンモノの看板は、温かみがあり、価値をプラスしてくれるしつらえに!
 
 

資金集めよりも大事にしていること

 
 
協賛企業・団体への特典や協賛看板の掲出方法も決まり、
いよいよ協賛金集めについてのお話しです。
 
イベントが成功するかも分からないのに、協賛してくれる企業なんて集まるの?
と思われるかもしれませんね。じつは僕たちも、相当心配していました。
 
協賛金の集め方には大きく2つの流れがあって、一つは冒頭でお話しした広告担当のメグが中心となって営業活動を行うパターン。もう一つは、僕を含む残り5人の役員メンバーが、日頃お世話になっている社長さんたちにお声がけするパターンです。
 
後者の場合、僕たちが長年携わってきたまちづくりやNPO活動をご存知で、日頃から応援してくださる社長さんばかりです。熊本を盛り上げたい、元気にしたい!という想いは一緒です。そうした皆さんにしてみれば、広告を出すことが目的ではなく「君たちの活動を応援するから、かんばれ!」といったご支援がほとんど。これまで積み重ねてきた信頼関係がありますから、僕らが直接動いた方が伝わりやすいですし、返事をくださるのもスピーディーです。
一方、新規となる見込み先へのアプローチは、何といってもプロの営業力にはかないませんから、本業の仕事としてメグに任せることにしました。
 
こうして広告協賛を募るなか、「ここだけは大切にしよう」と決めていたこと。それは、趣旨に賛同してくださるかどうかです。
 
クリクマも回を重ねるにつれて規模が大きくなり、「協賛金を出すから、会場で宣伝させてほしい」とお声がけをいただく機会が増えました。大変ありがたいことですが、お断りせざるを得ない場合もあります。
 
例えば、「お金を出すから、私たちの商品が目立つように宣伝して」といったお申し出や、会場でサンプリングをしたり試食・試飲をしたりする協賛ブースの設置など。僕らのクリクマではそうした営業活動はお断りしています。
 
クリクマがミッションとしているのは、子供からおじいちゃん・おばあちゃんまで居心地が良いと感じる冬の居場所をつくること。企業の宣伝が前に出るのはちょっと違いますし、僕らが目指している「優しいクリスマス村」の考えとは掛け離れています。ゆっくり楽しみたいお客さまに対し、ズカズカと営業行為を行うのは、クリクマの空間ではコンセプトに反する。
 
ですから、クリクマの趣旨や調和のとれた広告にご理解いただける場合はご協賛いただく。ご賛同いただけない場合は、丁重にお断りする。こうしたスタンスを貫いています。そして、初年度は90社の企業・団体の皆さまに協賛いただくことができました。
 
クリクマの場合、協賛企業になっていただいたからといって、会社の売り上げが大きく伸びるような広告効果は正直保証することは難しい。そんなことは承知のうえで、熊本の冬の居場所づくりやSDGsへの取り組みに共感・共鳴してくださり、「応援するよ!」「一緒に熊本の冬を盛り上げたい!」という意味での協賛であり、広がりだと思っています。
 
 
このように、「熊本の人たちに笑顔であたたかい空間を体験してほしい」と願う協賛企業の方々から思いを託され、ともに作り上げているクリスマスマーケット熊本。毎年多くの協賛企業の皆様のご支援、ご協力に感謝しています。
 
 
僕たちのこだわりを貫くことで、10年先へと続く「優しいクリスマス村づくり」の価値を守り、その価値に対して多くの方が足を運んでいただけているのかな、と思います。
 

5周年を迎える今年は、メイン会場が指定管理者制度に移行したことで、会場使用料の値上がりなど、今まで以上に多くの開催資金は必要となります。ぜひ、クリクマの開催趣旨、想いにご賛同頂き、ご協賛頂ける企業様、個人様、是非ご連絡頂けるとありがたいです。


さて続いては、いよいよクリスマスマーケット熊本・本番編へと入っていきます。初年度に待っていた思いがけないハプニング?について紹介します。



この記事が参加している募集

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?