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令和3年、Abu Garcia100周年の今こそセンタードラグのリールは最高って話をしたい

Abu Garcia創業100周年おめでとうございます! 大きな節目にも関わらず記念サイトが随分と簡素なつくりなのが気にならないといったらウソになりますが、質実剛健・実用主義を旨とするAbuは周年イベントなんかよりも通常販売ラインナップの拡充に力を入れているのでしょう、きっと……たぶん!

のっけから一部の釣り人以外には一切通じない話を始めてしまいましたが、本記事は最後までこの調子でいきますので「ABU」の3文字にピンとくるものがない方はご遠慮なさらずブラウザバックして他記事をご覧ください。逆に「ABU」「Abu Garcia」「アブ」という文字列に熱狂しないまでも、あぁ知ってるよあの丸っこくてカラフルなリールを作ってる会社ね……というくらいの認識がある方は何卒なにとぞお付き合いください!きっと今まで知らなかったアブ製リールの新たな一面に出会えるはずです――なぜなら、本記事で取り上げるのはアブリールの中でも不人気かつコレクターもほぼ存在しない生産中止モデル「センタードラグ 」シリーズですから!(2021年11月16日追記:つり人社から刊行されたABU創業100周年記念ムック『ABU for LIFE』読みましたがセンタードラグのリールについては存在すらひとことも触れられていませんでしたね !!! いや、本のデキ自体は素晴らしいと思いますし、日本のアブファンが興味を持つ内容といったらそりゃあ丸形アンバサダーかインスプールのカーディナルになるというのは分かるんですが! せめてスベロンの存在くらい記しても良かったのでは……ないのでしょうか……^^;)。

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▲DELTAシリーズのような固定ファンはおらず、FlyMaxシリーズのように安価なわけでもないフライリール・Diplomatシリーズ。不人気モデルだけど筆者は好き。魚は河口湖でバスを狙っていたら突っ込んできたブルーギル。

さてさて、筆者はAbu Garciaの製品、特に個性あふれるリールたちが大好きです。小学生のころ真っ赤な「アンバサダーUC4601C Dual2 Deal2」を親に買ってもらったことを切っ掛けに、それから20年以上の間ほぼAbuのリールのみを使い続けています。最新のRevoシリーズはもちろん、インスプール式スピニングリールの名作・Cardinal44、ベイトフィネスから大型のトップウォータープラッギングまでスプールを取り替えれば1台でこなせるDECIDER7、さらにはDiplomatやABU DELTAなどのフライリールまで、普段の釣りで使用するリールはほぼアブ製品(※ABUとAbu Garciaの違いについては省略します、ご興味のある方はググって頂くと1時間は潰せるかと!)のみ。国内外を問わず、あらゆる釣行にアブのリールを携えて出かけてきました。

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▲2018年末、アブのリール3台を相棒にブラジル・アマゾン釣行へ挑んだ。

なかでも思い入れが強いのは「センタードラグ」を装備したスピニングリールのシリーズです。筆者の「カーディナル C602U」(ダイワ2000番サイズに相当する軽量モデル)は高校生の頃にわずか3000円程度で購入したものですが、ベイルアームの支持部が摩耗して使えなくなるまで実に15年以上もの間、メインリールとして大活躍してくれました。

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▲Cardinal C602Uと多摩川のスモールマウスバス。ルアーはチャグバグ。

また、C602Uよりワンサイズ大きく、頑丈なボディを備えたモデル「カーディナル704」は、今でもシーバスや鯉、海外の怪魚釣りなどミディアム〜ミディアムヘビークラスのロッドを使用する釣り全般に幅広く活用しています。ただ、こちらもハンドルに若干のガタが出始めており、いつまで使えるか怪しい感じ。まぁ、質実剛健なアブのリールとはいっても安価なモデルですし、往年のスウェーデン製モデルほどの耐久性を期待するのは無理筋でしょう。ただ、このリールの寿命が尽きてしまったら現行のリールに代替品は一切ありません。いや、もちろん同サイズのスピニングリール自体は今のAbu Garciaもラインナップしていますけれども、センタードラグのリールは1台も出ていないんですよ……ここ10年以上……。本国スウェーデンでは最後の国内生産スピニングリールとなったSuveränシリーズをもってセンタードラグというシステム自体が消滅しました。その後もアメリカ国内でSuveränより安価で軽量なCD-6シリーズが販売されていましたが、ほどなくして姿を消しています。

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▲Cardinal 704とブラックアロワナ@アマゾン・ネグロ川。16gのBUXで。

さて、そもそも「センタードラグ 」とはなんなのか。スピニングリールにおけるドラグ搭載方式のひとつですが、全くご存知ないという方も多いでしょう。それもそのはず、これは2000年代前半に突如としてAbu Garcia社によって設計され、そして一切他社に真似されることなく10年も経たずに消え去ってしまったドラグシステムですから……。こう書くとそれってデキが悪かったからじゃないの? と疑問を持たれるかもしれませんが、いやいや。2021年のいまだって、十分に実用的なドラグ搭載方式だと思いますよ! 以下、センタードラグ の仕組みとメリット・デメリットについて解説してゆきます。10年以上前に消え去ったドラグシステムについて語ったところでいったい誰が読んでくれるのか、ということはこの際無視します。わたしは趣味でnoteに投稿しているのだから!

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▲趣味だからこんなのもアップしちゃいます。Cardinal704(見えにくいけど右上)と荒川のハクレン。サイズは99cmで、夢のメーターオーバーならず。

センタードラグとはその名の通り、リールのほぼ中央にドラグワッシャーを搭載する設計のことです。現在発売されているスピニングリールのほとんどは「フロントドラグ」方式で、これはスプール内にドラグワッシャーを内蔵しています。また、少数ながらボディ後端にドラグワッシャーを内蔵するスペースを設けた「リアドラグ」方式もあります。

フロントドラグは2021年現在、スピニングリールにおいて最もポピュラーなドラグ方式です。大きなスプールの中にドラグワッシャーを内蔵していますから、ドラグ口径を大きく取れて微調整が効きますし、最大ドラグ力も高いです。が、ヒットした魚とのファイト中、ラインを出されている際に調整しづらいのが難点です。魚が走って高速で糸を引き出されているときなどは、ラインに手を擦ってケガをするリスクさえあります。

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▲フロントドラグのRevo ALX 2000SHに屈し、美味しく頂かれたニジマス。

 これに対し、リアドラグはドラグ力調整ノブがボディ後端にありますから、ラインが引き出されているときでも調整しやすいです。ドラグ力を変更せずにスプールを交換できるというメリットもあります。使い勝手は良好ですが、ボディ下端の狭いスペース内にドラグワッシャーを収めなければならないため、小型のワッシャーしか使用できず、最大ドラグ力も微調整のしやすさもフロントドラグに劣ります。

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▲リアドラグのCardinal LX563PLUSで釣り上げたラージマウスバス。

センタードラグはフロントドラグ・リアドラグのいいとこ取りを狙ったシステムです。ボディの上部、スプールの直下にドラグワッシャーを格納することでドラグワッシャーの口径が大きく取れますし、ラインローラーよりも下でドラグ力を変更できますから、ファイト中の調整も容易です。また、スプールを簡単に、ドラグ力を変更せずに外せる構造のうえ、替えスプールが購入時に同梱(※CD-6シリーズを除く)されているのも嬉しいですね。

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▲こうしてみるとセンタードラグのモデルはデザインのケバさにゼロ年代感が滲み出ている気がする。

改めて文章に記してみると、センタードラグこそが最も優れたドラグシステムにも思えますが、なぜ廃れてしまったのか?  筆者が考えるに、原因はただひとつ――センタードラグのリールが持つあらゆるメリットよりも、ほとんどのユーザーはリールの"軽さ"を重視するからです。

センタードラグのリールが持つ最大の欠点は「フロントドラグのリールより重くなる」ことです。センタードラグは登場時、プラスチック製のボディを持つ低価格帯のリールに採用されるシステムでしたが、Abu Garciaはその後フルメタル製のボディを備えるハイエンドモデル・Suveränを発表しました。高い耐久性と高性能なドラグシステムを備えたリールでしたが、ダイワでいう2500番程度のボディサイズで約350gという重量は、投げる・巻くを繰り返すルアーフィッシングにおいて致命的でした。ぶっこみ釣りなど「待ち」の時間が長い釣りならそう大きな問題ではないかもしれませんが、単に丈夫でドラグ性能の高いリールが欲しいなら他に選択肢はいくらでもあります。今でこそカーボンを混合した高強度の樹脂ボディを持つハイエンドリールが作られるようになりましたが、センタードラグが登場した2000年代初頭、高級リールといえば「フルメタル」が絶対条件でした。低価格帯のリールでしか採用できず、かつ他のフロントドラグ・リアドラグのリールのパーツをほとんど流用できないセンタードラグのリールが淘汰されてしまったのは、むしろ当然といえるかもしれません。

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▲閑話休題、Abu Garciaはクローズドフェースリールもいいよねという1枚。Diplomat601Mと湯河原のアブラハヤ。ドラグ性能とか関係ないけれど。

それでは、センタードラグのリールが生き残る余地は全くなかったのでしょうか? 筆者はそうは思いません。Abu Garciaは今でもローエンドのCardinal Ⅲ SXに替えスプールを同梱していますが、異なる太さ・材質のラインを巻いたスプールを複数釣り場に持参し、現地で交換するスタイルを提唱するのであれば、スプールを取り替えるたびにいちいちドラグ力を調整し直す必要のあるフロントドラグ方式よりも、センタードラグの方がよりユーザーフレンドリーでしょう。税込で5,000円を切るようなリールに高い工作精度や滑らかな巻き心地を求めるひとはいないでしょうから、設計は2000年代初頭の旧センタードラグ搭載モデルを踏襲し、ラインローラーを糸絡み防止形状に、ハンドルをねじ込み式にそれぞれ変更すれば良いのではないでしょうか。それだけでは利幅が狭いようであれば、スプールエッジの形状も現代的に修正して「かっ飛び」モデルとして1万円〜2万円弱程度で販売するという選択肢も有り得るかもしれません。オフショアのシイラやカジキ釣りのような、プラグを使用するビッグゲームにも、大きなドラグワッシャーを搭載できてファイト中にドラグを操作しやすいリールは適しているハズです。ダイワ4000〜5000番サイズで重量250g程度、替えスプール同梱で2万円程度のリールがあれば筆者なら即買いなんですが……フロントドラグに慣れている今のユーザーにどれだけウケるのかは未知数ですね。

徒然なるままにセンタードラグについて語ってきた本記事は、特段の結論やまとめを設けずに終わります。けれど、最後にこれだけは言っておきたい!「センタードラグ」はもちろんのこと、EONシリーズに搭載された「遊星ギア」、DELTAシリーズで採用された「フライラインが絡みにくい三角形のボディ」、506をはじめとするクローズドフェースリールの「シンクロドラグ」、Revo Rocketシリーズの「ハンドル1回転1メートル越えの巻き取り速度」……などなど、アブ製品には"世界で唯一"や"世界で初めて"の技術が投入されたモノがたくさんあります。 結果として定着しなかったものももちろん多いのですが、既に一般的となっている設計をもとに工作技術や素材の質を追求するのではなく「今みんなが使っているタックルの設計は本当に最適解なのだろうか?」という疑問を常に抱き、新しい回答を生み出し続けるAbu Garciaは、いちアングラーとして最高にワクワクできるメーカーです! 最新の「ZENON」シリーズも、同サイズ帯において世界最軽量というスペックで登場しましたが、実釣ではどのくらい有用なのかが気になりますね。

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▲ハンドルを逆転することでドラグ力を半減させられるシンクロドラグシステムを備えた506MK2と、その仕組みを一切理解しない4歳児の図。

さてさて、ずいぶんと長い記事になってしまいました。最後の締めくくりに、筆者・新木正が所有するアブリールの一覧を記します。これは「自分のおもちゃを他人に自慢したい」という幼児的な自己顕示欲からくる行為ですので、読まなくても一切問題ございません。ですけれども、もし同じリールを愛用している! という方がいらっしゃいましたら、ぜひコメントを頂けますと幸甚です。アブオタクどうし仲良くしましょう!

【現在所有しているリール】
・ベイトキャスティングリール
Ambassadeur UC4601C Dual2 Deal2
Ambassadeur LITE PLUS SPRINT
Ambassadeur PR-6500-100YEAR
DECIDER7

・スピニングリール
Cardinal 44
Cardinal C602U(センタードラグ)
Cardinal 704(センタードラグ)
Cardinal 700U(センタードラグ )
Cardinal II SX 2000S
Cardinal SM1052(ヤフオクで未使用品を買ったらネジがダメになってた…)
Revo ALX 2000SH
CD-6 6000BG(センタードラグ )
Suverän S3000M

・クローズドフェースリール
501
Diplomat 601M

・フライリール
DELTA 3
Diplomat 156
Fly Max 78

【以前は所有していたが手放したリール】
・スピニングリール
Cardinal 3BP
Cardinal 563 LX PLUS

・ベイトキャスティングリール
KX100

・クローズドフェースリール
506MK2

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▲2021年11月25日追記:ABU創業100周年を記念して作られた、CS6500Rocketの特別版をゲットしました! "ABU100YEARS"の表記が誇らしげです。船釣りやカゴ釣り、雷魚釣りなどにガシガシ使い込んでいきたい所存。ちなみに本商品はネットオークションで転売ヤーから法外な価格で出品されていますが、2021年11月現在、米国の釣り具通販サイトなどで正規価格で購入できますので、うっかり入札しないようにお気をつけください。



▲2022年7月19日追記:Suverän S3000Mを入手しました……が、未使用新品にも関わらずちょっと問題のある個体で、しばらく使えなさそうです。整備が完了して実釣に投入したらレポート記事をアップしようと思いますが、20年前に生産を終了したリールのレビューって一切需要なさそうですね(笑)。


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