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ワスレレ(1530文字)

があちゃん🐣に捧ぐ😀✌

*sora*さんからいただいたコメントを参考にソッコーで書き直した改編バージョンです✨
*sora*さん、ありがとうございました😀!

『ワスレレ』

発明家のハカセさんは、わすれっぽいロボットをつくりました。

ロボットのなまえは「ワスレレ」。

四角いあたまと、四角いからだと、四角い手と、四角い足をしていました。

ワスレレは、なんでもすぐにわすれてしまうタイプでした。

ハカセさんは、ワスレレに、かんたんなようじをたのみました。

「買いものにいって、牛乳とパンを買ってきなさい!」

ワスレレは「はい、わかりました!」とげんきよくへんじをして研究所をでました。

でも、しばらくすると、買いものリストをわすれてしまったことに気づきました。

「あれれ、なにを買ってこなければいけないんだっけ?」

手ぶらで研究所にもどったワスレレを、ハカセはきびしくしかりつけました。

「役に立たないロボットなんていらんぞ。どこかにいってしまえ!」

研究所をおいだされたワスレレは、まいごのようにまちをさまよいました。

そのうち、自分がどこからきたのかも、なにをしていたのかもわすれてしまいました。

ワスレレは、道ばたにぼうぜんと立ちつくしていました。

そこに通りがかった男の子が、ワスレレに声をかけました。

「どうしたの? こまっているみたいだね」

図書館のシールがはられた本を、小わきにかかえている男の子でした。

ワスレレは、わけを話そうとしました。

でも、なににこまっていたのかわすれてしまいました。

男の子はわらって、こう言いました。

「だいじょうぶだよ。いっしょにあそぼう!」

公園にゆき、ならんでブランコをこぎ、競うように黄色い花をつみ、つらなってすべり台をすべりました。

やがて、カラスがないて、お日さまが下のほうにきて、空がオレンジ色になりました。

目を丸くしてワスレレは、男の子に言いました。

「ありがとう。すっごくたのしかった!」

男の子はニコッと笑って、こうかえしました。

「どういたしまして。こまっているときはおたがいさまだよ」

おたがいさま、とワスレレは思いました。

カラスが、かあとなきました。

「おうちに帰るのかい?」

と男の子がたずねました。

「おうちはどこだっけ?」

とワスレレはつぶやきました。

「――ぼくんちにくるかい?」

ワスレレは、男の子のやさしさにドキドキしました。

そして、自分もおなじように、こまっている人をたすけるロボットになろうとこころにきめました。

でも――、すぐにわすれてしまいました。

いろいろわすれて、そのまま男の子の家に居つきました。

ある日、ラジオからアナウンサーの声がながれてきました。

『ハカセ博士の発明したロボット「シッカリン」が、きょうも町のみなさんの役に立っています』

「えらいロボットがいるんだねえ」とワスレレは、感心したようにつぶやきました。

「そうだね。でもね、」と男の子は言いました。「ぼくは、きみがすきだよ」

「えっ?」

びっくり顔のワスレレに、男の子はつづけて言いました。

「きてくれてありがとう。ぼく、とってもさびしかったんだ」

それを聞いてワスレレは、たいへんよろこびました。

「お役に立てたぞ!」

でも――、そのよろこびもすぐにわすれてしまいました。

――つぎの日、男の子はまたワスレレに言いました。

「いっしょにいられてしあわせだよ。ありがとう!」

ワスレレはまたよろこびました。

「自分もしあわせだよ。こちらこそ、ありがとう!」

キャラメルをわけあって食べました。

――日々がやってきて、日々がさってゆきました。

ワスレレは毎日よろこんで――、つぎの日にまた新たによろこびました。

ワスレレは、まん丸の目をくりくりとさせながら、男の子と、いつまでもなかよくくらしました。

――おしまい✌

文庫本を買わせていただきます😀!