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価値は能力で測れるのか?(800文字)

あたしには能力がないんだよ」

と妻が落ち込んでいます。

「Aさんみたいに上手に料理を作ることもできないし、Bさんみたいに素敵な絵を描くこともできないし、Cさんみたいに綺麗に楽器を奏でることもできない……」

Aさん、Bさん、Cさんは、妻と仲良くしてくださっているnoterさんなのでした。

「あたしにはやっぱり価値がないんだね」

『――あのさ』

と伝えました。

『ぬいぐるみにはさ、能力ってあるのかな?』

「ぬいぐるみ?」

『そう。例えばがーちゃんにはさ……』

と僕は、小さくて黄色いあひるを指して言いました。

『能力ってある?』

あひるのがーちゃん。

「がーちゃんを、ぬいぐるみだなんて言わないで!」

(妻は、がーちゃんをモノ扱いされたくないのです)

『ごめんごめん。でもそれはこの際置いといて……』

と妻をなだめて話を元に戻します。

『ぬいぐるみはさ、料理を作ったり、絵を描いたり、楽器を奏でたりできるのかな?』

「――できなくったっていいじゃん!」

と妻。

「がーちゃんはすっごく大切じゃん!」

『それだよ』

「どれだよ?」

『がーちゃんはこんなに小さいのにさ、その存在はりーこにとってとてつもなく大きいんだろ?』

「そうだよ」

『価値はさ、能力によって決まるんじゃなくてさ、存在によって決まるんじゃないかな?』

「存在によって?」

『そう。りーこに何ができるかが大事なんじゃなくて、りーこが存在してることそのものが大事なんじゃないかな?』

我ながらいいこと言った。

と、そう思ったのですが、妻は言いました。

「そっか、あたしはぬいぐるみなんだね」

いや、そうじゃなくて……。

「カピバラのぬいぐるみなんだね」

いや、そうじゃなくて……。

こちらはリアルにカピバラさん。

「そっかー。じゃ、カピバラらしくのんびり暮らそっと!」

んーんん、ちょっと違うような気がするけど、ま、いいか。

あんこヨーグルトを美味しそうに食べる妻を見て、眉を上げるしかない僕なのでありました。


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