夏の雪
居酒屋『すく』のあひる店長すくが本日のお酒を提供してくださいました!
『伝心 純米吟醸 雪』
「パパパさん、この日本酒を知ってましたか?」
いや、知らなかったな。
「日本酒大魔人のパパパさんでも知らなかったんですね!」
はい、面目ないです。
「いえ、無理もないです。これは限定酒なんですよ!」
へえ、そうなんだ。
「福井県は勝山市の一本義という蔵本のお酒なんですが……」
あ、一本義ってのは飲んだことあるかも……
「はい、一本義が通常ブランドなんですよ。そんでその一本義を醸してる一本義本店さんが、日本酒を愛してるパパパさんみたいな人のために特別に作ったお酒が伝心なんです!」
なんと!
「しかもこの伝心『雪』はですねえ……、ANAの国際線ファーストクラスと、それからビジネスクラスで期間限定で提供されたお酒なんです!」
そんな特別なお酒を、すく、どうやって手に入れたの?
「えっへん、あひるネットワークですよ!」
やるね!
「あっつい毎日が続きますからね、雪のようにすっきりとした純米吟醸でパパパさんに涼んでいただきたかったんです!」
パパパ想いのあひるだなあ!
「伝心の蔵本さんはたくさんの雪が降る地方にあって、そこではきりりと冷えた地下水と、夏の気候が合わさって質のよいお米ができるらしいんです!」
原料米の品質が高いってことだね!
「はい!」
そのわりに名前を聞かないのはなんでなんだろう?
「蔵本さんのこだわりです。在庫を抱えちゃうと熟成が進んで味が変わっちゃいますからね。だから数を絞ってるみたいなんです。よりよい状態のお酒を、限定されたルートで限定数届けることに誇りを持っておられるのです!」
なるほど!
「あひる居酒屋『すく』は契約酒販店なのですよっ!」
すごいぜ、あひる店長!
「すく特製の長芋のわさび漬けでいただいてみてください!」
わあ、ありがとう。じゃあ封切りでいっちゃうね!
(とくとく)
ふーむ、いい香り。
(ごくり)
うむぅ……!
「いかがですか?」
米の旨味がまずはふんわりくるね。で、そのあと……、
「はい! そのあと?」
フルーティーな味がするよ。ベルギービールみたいなフレーバーを感じる。
「美味しいですか?」
うん、美味しい。でもその美味しさがしつこくなくて……、
「ふんふん!」
とっても軽い。軽くて、うん、淡いんだね、雪みたいに!
「はい。だから名前が『雪』なんですよ!」
なーるほどー。
(ごくり)
うーん、軽くて……、淡くて、涼やかで、あー、後味が綺麗に切れてゆくねえ……
「よかったです」
夏の日に舞い降りた雪片のようだねえ……。と、では……
(ぱくり)
ふむ、長芋のわさび漬けも美味しいよ。これもね、ほんのりとしたわさびの風味が、実にでしゃばっていないね、奥ゆかしい味わいだ。
「はい」
お酒が強すぎると……、そうだよ、せっかくのわさび漬けの味が掻き消されちゃうもんねえ。だからこのつまみには淡いお酒がちょうどいい……。
「いくらか涼しくなりましたか?」
うん、クーラーの温度二度分は涼しくなったよ、しかも美味しくて……。あとね、心でしみじみと、緻密なまでに、今この瞬間、ってやつを味わえた気がするよ!
「まいどありっ!」
ありがとう、すく!
「仕入れの担当はらっくんです!」
ああ、らっくんもいいバナナだ。すくはいいお婿さんをもらったねい!
「はいっ!」
ごちそうさまでした。
「またのご来店をお待ちしていますっ!」
文庫本を買わせていただきます😀!