恋が愛に変わる時
恋の始まりはほぼ例外なく、強い興奮状態に突入する。
恋の病。
誰かを好きになり、扁桃体の指令により前頭葉にドーパミンが大量に分泌される。
このドーパミンが恋のドキドキの正体だ。
彼を想う時、彼に逢った時。
興奮してわくわくのドキドキが続く。
それが内分泌的な生理反応だとしても、ロマンチックな事に変わりはない。
少なくとも、ドーパミンが出ている限りは。
しかし、このドーパミンと言う物質は、ものすごく脳にも身体にも負担がかかる。長期に渡るドーパミンの大量分泌は脳と精神を壊してしまう。
なので恋にも寿命がある。
脳は自らを守る為に、ドーパミンの分泌を減らす。
なぜか気持ちが冷めた。
実はそれが原因だったりする。
しかし、ドーパミンの分泌が収まって行く中、その恋を上手に続けているのなら、今度はβエンドルフィンの分泌に取って代わる。
ドーパミンが興奮を司る物質であるのに対し、βエンドルフィンは強力な沈痛・鎮静作用を持つ。
その強さたるや、モルヒネの6.5倍だそうだ。
好きでいる対象の異性と一緒に居る事でも分泌されるし、セックスをする事でも分泌される。
つまり、一緒にいると安心するのも、良い関係の相手とのセックスでリラックス出来るのも、このβエンドルフィンのおかげだ。
彼といるととても安心する。
二人の時間はとても安らぐ。
いつの間にか興奮は安らぎに変わる。
これが脳内物質的な愛の正体だ。
恋が恋のまま終わるのは、ドーパミンの作用が切れてありのままの相手を見た時に、それがどこか間違っていた事に気づくからだ。
お互いのありのまま、相手を受け容れあえたなら、必ず愛が二人に訪れる。
それが出来なかった二人に未来はない。
少なくともそれは安らぎの未来ではない。
炭火をおこした事があるだろうか?
炭に火をおこすにはなかなか手間がかかる。
最初は火力も必要だし、きちんと炭全体に火が回るまでには時間もかかる。
けれども一度しっかりと炭が燃えだしたら、容易な事では消えない。
風にも消える事なく、大きな音を立てる事もなく、淡々と静かに燃え続ける。
立ちのぼる炎も僅かで、燃えているのかも解らないような燃え方。
優しく静かに、それでも強い熱を遠くまで届けながら燃え続ける。
そして最後は白い灰しか残らない。
一瞬で燃え尽きる恋も刺激的で魅力的だろう。
けれども、永く永く燃え続け、白い灰になって燃え尽きる愛はもっと素晴らしい。
願わくば、その恋が愛に変わりますように。
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