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雑記。ウエディングプランナーの気持ち

ここ数日間、ものすごい体調不良に襲われて、まったく使い物にならない1週間を過ごしていた。
こんな思いをするならハードに働かないで、ほどほどにすればよかったと、治らない体調に向かってひとりで怒ったり悔しくなったり、迷惑をかけてしまった仕事先の方に対して申し訳なくて泣きそうになっていた。

そもそも、こんなに根詰めて働かなくても生きていく方法はきっと他にもある。もっとゆるく、2歳になる娘と遊んだりのんびりしながら、いまのライフスタイルにあった働き方だってきっとあるんだから、もう、頑張らなくてもいい、ほどほどにいこう…なんて、弱気な心で思ったりもして。

ところが、弱気になるときはいつもそうなのだけど、神様が、もう一度チャンスをくれることがよくある。今日もそうだった。

「ほんとうにそれでいいのかい?」と。

この1週間の体調不良が嘘かのように、いきなり体調が復活し、みなぎる力が湧いてきたような気がした。なんか猛烈にやっぱり働きたくなって、この1週間滞っていた仕事をしようとパソコンを開き、来週行われる今年最後の婚礼の台本や曲、指示書、発注書などの資料をすべて出して、指差し確認で見返していた。

おふたりと打ち合わせしてきたたくさんの足跡。たくさんの分厚い資料。何冊にもなる重たいファイル。付箋をたくさん張り付けまくった資料に、赤ペンと青ペンでぐりぐり○を書いて、発注ミスのないように、指示を間違えることのないようにと神経を張り巡らせていた形跡たち。

そんなファイルをみるたびに、「もうこの結婚式で、私は結婚式本番の仕事を辞める」と何度も言い聞かせてしまう。こんなに大変な仕事を、無理して這いつくばってまで続けなくてもいい。もう十分やった、だからもう、これで最後にしよう。いつもそんな風に思っては婚礼本番の10日前の恒例のプレッシャーに負けそうになりながら、心に誓って誓って誓って過ごすのだ。

分厚いファイルには、ものすごい量の資料が入っているからなのか、夜中に確認作業をすると、いつもやってしまうことがある。やらなければいけないことを横において、感傷的になって過去の思い出にさかのぼってしまう。ちょっとぐらい、大変だったんだから思い出に浸らせてくれ。

ファイルを、静かに1枚1枚めくって、この1年間の思い出にトリップ。

初めて新婦さんが私にメールをくれたその日のこと。悩んで悩んで結婚式場が決められなくて苦しい思いをぶつけてくれた真剣な心。ふたりがこの結婚式をする理由を、家族の思い出と一緒に、丁寧に静かに教えてくれた去年の9月のあの日。2時間話したあとに、すっきりしましたと言って、私に依頼することを決めてくれたこと。
来てくれるゲスト130名ひとりひとりへの想いがいっぱい詰まったカウンセリングシート。ふたりのデザインして手作りしたふたりらしい招待状。曲が決まらなくて3回も打ち合わせをしたこと。レイアウト表に赤ペンで何度も書き込んだゲストとふたりとスタッフの動き。まだ、その打ち合わせをした日々は、暑い暑い夏だったなぁ。

さ、感傷タイムおわり。

最後までなかなか決まらなくて、悩んで悩んで決めたお色直しの入場曲をひとりイヤホンでききながら、思い出に浸るのを一度やめて、イメトレを再開する。


子どもが生まれてもうすぐ2年。実はこの2年間、私は婚礼の仕事は私なりにかなりセーブしていた。件数も意図的にかなり減らした。子育ての緊張感も、婚礼の緊張感も両方いっぺんに抱きしめるにはあまりにプレッシャーが大きすぎた。どちらも一生に一度。もう二度とかえってこない尊いもの。

どちらかに真剣に向き合えば、どちらかがおろそかになる。私は器用じゃない。理想的な両立ができなくてかなり苦しんだ。

「もう現場はやめよう」

何度思ったことか。

ウエディングプランナーの仕事じゃなくても、きっと幸せに生きていける。そう何度もこの2年間言い聞かせてきた。


私のイヤホンの中で、お色直し入場の曲は、サビに突入した。ついさっきまで「もうこの仕事はできない」「これで最後」と言い聞かせていた自分に、だんだん温かい血が流れてくる感覚になった。

ふたりが堂々と胸をはってメインテーブルで一礼する姿が目に浮かんだ。ゲストは笑顔で涙を流しながら拍手喝采。

その光景がくっきり見えて、

私は一瞬で幸せで幸せでどうしようもない気持ちになった。


神様。できないことをやろうとしてごめんなさい。





やっぱり私は
結婚式の現場が好きです。



ふたりの想いを、音に乗せて、光に乗せて。

ゲストの気持ちと笑顔と、あふれるほどの拍手に乗せて。


私らしいディレクションが、婚礼スタイルが、こだわりがそこにはある。自分にしかできない仕事、それが結婚式の仕事。


もう少しがんばってみようと思う。

この仕事がやっぱり好きだと気付けてよかった。ありがとう。


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