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背後に気を付けろ

小学生のころ初めて覚えて以来、人の後ろに立つとひざの後ろをガン見してしまうようになってしまった。

そして、そのクセはウン十年たった今でも治ることなく健在である。

そいつの名は「ひざカックン」


あれは小学校低学年の頃。

「ももちゃん」と同時期にクラスで流行り出したのは、年上の兄弟がいる子がやり始めたのが始まりだったと思う。

ちなみに「ももちゃん」はヒトの名前ではない。

太ももの横の力を入れるとへこむ筋のところ目掛け、ひざをピンポイントで打ち込むワザである。キマるとしばらく動けなくなるくらいのダメージを与えることができる、アレである。

他にも、相手の爪に自分の指の腹を合わせて、手を握り込むアレも流行っていた。アレの名前はなんだろう?名前つけた人はいるんだろうか?アレは名前がわからない。とりあえず、めちゃくちゃイタイ。アレ。


話を戻して。

ひざカックンがクラスで大流行りしていた時、もちろん担任だってターゲットから免除されるわけでもなく。

低学年の子供と大人の身長さゆえ、先生に対してひざカックンが決まることはなかなか無かった。

その頃は「何してんねん~」と余裕な微笑みで流していた担任。


しかしある日、担任にものすごくイイひざカックンが決まることとなる。


何の時間だったんだろう?体育で、みんなで遊んでいた時だったのかな?多分授業中の校庭だったとおもう。

校舎の影の中で、腰に手を当てながら校庭でワイワイしているみんなを見ている先生の背後から、クラスメイトがそーっと近づいている。

その様子に気付いた何人かに対して、口の前に右手の人差し指をあてて「しーっ」としながら、左手で「しっしっ」とみんなを追い払う仕草をするクラスメイト。

気になるけど、気にしてはいけない。
見たいけど、見てはいけない。

みんなが不自然な動きになりながらも、場の空気を変えてしまわないように無邪気さを装っていたその時。


担任がひざから崩れ落ちた


「いよっしゃぁぁぁぁぁ」
「あははははは」
「すげー決まったなぁ」
「うわー」

なんて歓声をあげながら、それまで以上に走り回るみんな。そのとき

「ぅおぉらぁあ!ぅおまえらぁぁぁぁぁぁ」

と、本気の怒鳴り声が校庭の空気を震わせる。


うっわ。担任めっちゃ怒ってるやん…


「全員あつまるぇぇぇぇぇぇっぇえ!」

真っ赤な顔をした担任が、巻き舌を交えつつ集合をかける。あぁ、怒られるやつやん。ていうか、怒ってるやん?めんどくさ。

集められたクラスメンバーをその場に立たせ、担任がお説教をはじめる

「そんなんしたら危ないやろうが!で、お前ら全員わかってたんやろ?なんで言わへんのや?なに笑っとんねん。大けがするねんぞ?わかってんのか?あぁ?」


お説教をされながら「大人ってそういうヤツよな…」と冷めた目で担任を見ていたことは今でもはっきりと思い出すことができる。

先生、危ないのは前からわかってたんやから、もっと早く注意しとこう。

な?



月日が流れ…

ソファーでのんびりとくつろぎながらテレビを見ているワタシ。

そんなワタシとテレビの間に立ち止まる家人。毎回毎回どうしてソファーとテレビの間に立ち止まるのだ。腹立たしい。テレビが見えないではないか。

もちろん家人はテレビの方を見ているので、ひざの裏がいい感じにこちらを向いている。


ひざカックンしてやろうか…


今なら外さずに一発で決められる自信がある。今日こそキメてやるべきか…

そんなことを考えていると、ふと担任のお説教が頭をよぎる。


「大けがすんねんぞ?わかってるんか?」


そうだよね。

ひざカックンしたら、綺麗にテレビ台に向かって倒れていくよね。


テレビを壊すわけにいかないワタシは、ひざカックンを我慢する。



( ゚Д゚) イノチビロイシタナ

そんなセリフももちろん忘れない。


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