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インテルによるMoovit買収の意味とは?

 昨日、インテルがイスラエルの交通アプリmoovitを9億ドルで買収した、というニュースが流れた。MoovitはAIを利用した交通情報の分析により、おすすめの経路情報を提供する。インテルは2017年にMobileyeを153億ドルで買収した。そして今回のMoovitである。MobileyeのCEOでインテルの上級副社長でもあるアムノン・シャシュアがその意義を説明したインテルのリリースを日本語にしてみた。オリジナルはこちら。

 インテル・ファミリーにMoovitを迎え入れることができて感激しています。Moovitは、複数の交通機関のパートナーや顧客からのデータを集約する世界で最も有名な交通アプリケーションです。世界で8億人以上のユーザーを抱えるMoovitは、102カ国3,100以上の都市で毎日60億以上の交通の流れとユーザーの需要に関するデータポイントを収集し、7,500以上の公共交通機関にサービスを提供しています。すばらしい成果を上げているといえます。

 みなさんが持つ当然の疑問は、なぜインテルなのか、ということでしょう。インテルグループとなったMobileyeがそのパズルを完成させます。

 Mobileyeは、未来の交通分野に進出するためのインテルの武器です。モビリティの未来は、大量の数値計算に依存しています。私たちは、最も高密度で効率的なシリコンチップの設計、カメラ、レーダー、ライダーからのセンシングデータを解釈するための人工知能を含む最先端のアルゴリズム、自律走行車のための意思決定アルゴリズムなど、全てを、いままでに例のない安全モデルに包みこんでいます。その一方で、約6,000万台の自動車に当社のLSIとアルゴリズムによる自動運転支援システムが搭載され、日々事故を未然に防ぎ、人命救助にも取り組んでいます。

 今後、これらの技術はすべてMaaS(Mobility-as-a-Service)ビジネスに統合され、その事業価値は2030年までに1,600億ドルと推定されています。私たちは、2022年にMaaSの様々な形でデビューすることを目標に、世界中で契約やパートナーシップを結んでいます。

 私たちは、バリューチェーンの形成、都市型モビリティシステムの社会的・経済的な問題点、既存の都市交通にドライバーレス機能を組み込むための道筋など、ビジネスの本質を研究するために多大な努力をしてきました。

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 私たちはマルチモーダルXaaS戦略を開発しました。これにより、インテルはMobileyeを通じ、さらにMoovitを含め、スタンドアローンとしての自動運転システムから、ロボットタクシーのサービスや体験に至るまで、ソリューションスタックのあらゆるレイヤーから価値提案を生み出すことが可能になります。この戦略は非常に繊細で(nuanced)、この分野の他企業とは異なります。

 第一の重要な資産は、データドリブンかつリアルタイムの需要と供給の洞察に基づいたモビリティ・インテリジェンスであり、起終点、ファースト/ラストマイル、ダイナミックにルートを選ぶシャトルなどの様々なサービスモデルを通じて、ドライバーレス技術を外科的に(surgically )導入することを可能にしています。

 第二の重要な資産は、輸送事業者のオペレーションの専門知識です。これは、共同のGo-to-Marketモデルを通して活用すべき中核的な資産です。代表的なモデルとしては、VaaS(Vehicle-as-a-Service)とRaaS(Ride-as-a-Service)の2つがあります。特にRaaSでは、既存のサービス事業者が自動化されたモビリティ・ソリューションを「呼び出す(summon)」ことで、サービスの傘の下で対応できない需要に対応することが可能になるのです。一方、VaaSはさらに統合されたモデルであり、私達は自律走行型の専用車両やシャトルを提供し、それらが乗り継ぎ事業者のバックボーンやコントロールセンターに、モビリティインテリジェンスソフトウェアとともに同化されることで、その資本を効率的に活用することができます。

 本日のMoovitの買収により、当社はモビリティ・スタックにもう一つの重要な要素を追加し、完全なモビリティ・プロバイダーへの道を加速させました。Moovitのデータとユーザーベースの明らかな価値を超えて、同社は基礎となる資産、可能性、そしてパートナーネットワークを所有しており、これにより、私達は世界中のほぼどこでも、手頃な価格で需要に最適化されたドライバーレスモビリティサービスを提供することが可能になります。

Mobileyeの場合と同様に、Moovitは独立した子会社としてコアビジネスを推進していきます。インテルの一員となったことで、Mobileyeはコンピュータ・ビジョンを超えて、ドライバーレスの未来を夢見ることができるようになりました。今、私たちはMoovitをエンパワーし、より大きな夢をみつつ、より高いところに到達し、一緒に交通機関の未来に影響を与えることを目指しています。


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