2020年ノーベル化学賞予想

2020年ノーベル科学3賞も残すところ化学賞だけになった。

今年の予想をする前に、去年の振り返りをしよう。去年はリチウムイオン電池の開発に対して、ジョン・グットイナフ博士、スタンレー・ウィッティンガム博士、そして吉野彰博士の3名が受賞した。リチウムイオン電池はとてもわかりやすかったこともあり、いろいろな解説が出ていた。

では、今年の予想をするためにここ10年くらいの受賞理由を振り返ってみよう。

 2007年 固体表面の化学反応過程の研究
 2008年 緑色蛍光たんぱく質(GFP)
 2009年 リボソームの構造と機能の研究
 2010年 有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング
 2011年 準結晶の発見
 2012年 Gタンパク質共役受容体の研究
 2013年 複雑な化学系のためのマルチスケールモデルの開発
 2014年 超高解像度蛍光顕微鏡の開発
 2015年 DNA修復のしくみの研究
 2016年 分子マシンの設計と合成
 2017年 クライオ電子顕微鏡の開発
 2018年 酵素の指向性進化法、ファージディスプレイ法(進化分子工学)
 2019年 リチウムイオン電池

毎年言うことだが、化学賞は幅が広い。有機化学、無機化学、分析化学、物理化学、量子化学、生化学など、化学と名がつく分野はたくさんある。しかも、最近は、生物学賞かと思うくらい、生物寄りの受賞理由が多い。生体内のしくみの解明でも、そこで働いているのはいろいろな化学物質だから、化学賞を与えるっていう理屈なんだろうけど、生理学・医学、物理学、化学という分け方も時代に合わなくなっているのかもね。

そんなことを言ってもしかたがないので、予想に移ろう。最近の受賞分野をざっと見てみると、有機学合成関係のものがないので、そろそろ来てもいいだろう。そう思うと、新しい機能的な分子を安定的につくる手法であるクリックケミストリーの分野で有名な反応をつくったデンマークのモーテン・メルダル博士、ドイツのロルフ・ヒュスゲン博士あたりはおもしろそう。

日本人では、いろいろな有機化学合成反応を開発した向山光昭博士もいいのではないだろうか。

それから、分子科学的な手法と有機化学的な手法を組み合わせて生体分子の機能や反応を追っていこうというケミカルバイオロジーという分野を築いたスチュアート・シュライバー博士、自己組織化で有名な藤田誠博士も受賞してもおかしくないだろう。

あと、これは今年の選考に新型コロナウイルスの世界的な流行がどのくらい影響するのかわからないけれど、次世代シーケンサーの開発をしたシャンカー・バラスブラマニアン博士、デイビッド・クレネマン博士が選ばれたらすごいなと思う。

今年もいろいろと挙げてしまったが、当たるかな。どういう結果になるか、お楽しみに。

(2020年10月7日 13時55分追記)

私が予想に挙げた向山光昭博士は一昨年にお亡くなりになっていましたね。ということで、ノーベル賞の受賞はないです。調べが甘くて申し訳ありません。ご高齢の候補者の名前を挙げるときは、その部分もしっかりと調べないといけないですね。代わりにといっては何ですが、日本人の有機化学者では村井眞二博士が有力なのでしょうかね。


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