2020年ノーベル物理学賞予想

今回はノーベル物理学賞の予想です。かなり直前なので、泥縄式ですが。

今年の予想に行く前に、去年の振り返り。

去年の物理学賞は、系外惑星を発見したミシェル・マイヨール博士とディディエ・ケロー博士、そして、宇宙論に関する理論的発見でジェームズ・ピーブルズ博士に贈られた。実際に予想した身としては、マイヨール博士とケロー博士の受賞はうれしかった。私の予想の中では、宇宙マイクロ波背景放射の観測衛星WMAPの研究も候補に挙げていた。ピーブルズ博士は理論物理学者だが宇宙背景マイクロ波観測の理論的な予想で活躍した人なので、これは半分以上充てたようなものではないだろうか(って、ちと強引だったかな?)。

では、そろそろ本題に入ろう。まずはここ10年ほどの物理学賞の受賞理由を振り返ると次のようになる。

 2007年 巨大磁気抵抗の発見
 2008年 自発的対称性の破れ、CP対象性の破れ
 2009年 光ファイバー内光伝達、CCD素子
 2010年 グラフェン
 2011年 宇宙の加速膨張
 2012年 量子系の計測、制御
     (量子コンピュータを実現するための技術の実証)
 2013年 ヒッグス機構(ヒッグス粒子)
 2014年 青色発光ダイオード
 2015年 ニュートリノ振動
 2016年 トポロジカル相とトポロジカル相相転移
 2017年 重力波検出(LIGO)
 2018年 光ピンセット、超高出力・超短パルスレーザー
 2019年 宇宙論に関する理論的発見
      系外惑星発見

物理学賞は、物性分野とそれ以外(宇宙、素粒子など)の分野が交互に受賞している。ということは、今年は物性分野の番だ。ひと言で物性分野といっても広いので、予想は難しいが、いくつかおもしろそうな候補を挙げておこう。

比較的わかりやすい研究の候補としては、ここ最近、注目が集まっている量子コンピュータ。そうすると、量子コンピュータの基礎的な理論を提唱したデイビッド・ドイチュ博士。そして、ドイチュ博士とともに量子コンピュータの高速計算のアルゴリズムを完成させた数学者リチャード・ジョサ博士あたりになるのではないだろうか。

また、近代科学の中心課題の1つとされる量子多体系を計算するための量子シミュレーター分野のイマニュエル・ブロッホ博士、ティルマン・エスリンガー博士なども有力のようだ。

後は、光格子時計を開発し、時間を精密に測定することに成功した香取秀俊博士も受賞したらおもしろいと思う。光格子時計は高さの違いによって、地時間の進み形に違いが出るという一般相対性理論の検証をするほど正確なもので、広がりのある研究だ(香取博士には、たしか科学雑誌『ニュートン』のニュース記事で2016年あたりに取材させて頂きました。その節はお世話になりました)。

物性物理学分野で有名な近藤効果を理論化した近藤淳博士がこのタイミングでノーベル賞を受賞するというのも、なかなかいいのではないかとも思う。

果たしてどうなるのか。乞うご期待。



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