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サピエンス全史をかる〜い感じでまとめてみました【第19章】

ラスト2回です!


ところで、先日ストレングスファインダーを3年ぶりぐらいに受け直したんですけど、


今までなかった原点思考がトップ5に入ってたんですよ。

原点思考という資質を持つ人は、過去や原型について考えるのが好きです。過去を調べることにより、現在を理解します。

これ完全にサピエンス全史にハマったからですね。設問に回答してる時からそう思ったもん(・ε・`)

私の価値観を変えてくれた本だったということですね。


第19章 文明は人間を幸福にしたのか

みなさんもご存知のとおり、現代はとても豊かな時代になりました。

しかし、果たして私たちは祖先より幸せになったのでしょうか?


これは「歴史について最も重要な問いだ」とハラリは言っています。

歴史を通してさまざまな宗教やイデオロギーや政策は、人間の幸福を実現すると主張されてきました。

しかし歴史学者は、本当にそうなのか?はあまり研究してこなかったようです。


確かに、幸福に関する歴史の研究ってあまり見たことがなかったので、サピエンス全史の19章は、とても貴重なものだと興味深く読みました。



幸福に対する先入観

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幸福に対する漠然とした思い込みって、だれにでもありますよね。

そんなありがちな思い込みが2つ挙げられています。

①進歩主義
人間は過酷な状態を改善したり、願望を満たすために自らの能力を活用し、進歩してきました。当然祖先たちより幸せに違いないよね。という思い込み。

おぼえてますか?小麦の話を。

農耕民族は集団としての能力は増大しましたが、個人としてはより過酷な運命を辿ることとなります。



②ロマン主義
よっぽど狩猟採集民族がマンモスを捕まえてた頃の方が、熱狂的で幸せだったと言うひともいますが、こういった主張も独善的と言えます。

なぜなら近代医療によって小児死亡率が32%から5%未満に低下したことを考えると、進歩もまんざらではないと思うはずだからです。

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③近代以降に幸福派
中には「中世までは不幸だったけど、科学革命後に幸福になった」という短い期間を幸福の対象とする意見もありますが、ちょっとそれは楽観的過ぎかもしれません。

というのも、近代医療や戦争のない平和な世界の恩恵を受けられた「本当の意味での黄金期」はほんの過去数十年なので、これを歴史の流れの抜本的転換なのか、それとも一時的なものなのか、まだ判断できません。


だいたい、近代を評価する時には、つい西洋の中産階級の視点で見がちですが、彼らが迫害した植民地の先住民などの視点でみたら、幸福とは言えません。

また、この黄金期に私たちが地球の生態学的均衡を乱していることが、将来の大惨事につながる可能性は多大にあります。

そして、地球全体の幸福度を評価するなら、人間たちの物質的な豊かさと引き換えに犠牲となった家畜たちを無視して人間だけの幸福のみを計測材料にするのは間違いでしょう。

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うーん、いちおう私自身がなんだかんだで幸せだと思うし、現代に生まれてよかったなー恵まれてるなーと思うことが多いけど、確かに過去より現在の方が幸せだとも言い切れないんですよね。



幸福度は計測できるのか?

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近年、「何が人々を幸福にするか」を科学的に解明しようという取り組みがされているそうです。

まず幸福の定義は「主観的厚生」とされており、心の中で「私は健康で豊かな生活が送れている」と感じているなら幸福ということになります。

これを計測するには、どう感じているかの聞き取り調査が有効みたいです。

幸福度の評価計測は「世界幸福度調査」が有名ですが、こういった調査で使われる質問表は、幸福とさまざまな客観的要素(年収など)を関連付けるために使われます。

歴史学者はこの調査結果をもとに、過去における富や政治的自由、離婚率などとの相関を検証しているそうです。


■幸福度調査で分かったこと

①富は人々に幸福をもたらすが、それは一定の水準までである。
経済階層の底辺の人々にとって富の増大は幸福度を増大させますが、ある程度満たされると、いくらセレブな暮らしができるようになってもそのうちありふれた日常になってしまいます。


②病気は短期的には幸福度を下落させるが、悪化しなければ適応できる。
悪化したり、継続的で心身共に消耗するような痛みを伴う病気は長期的に幸福度が下がりますが、悪化しなければ幸福度は健康な人と変わらないそうです。


③強い絆で結ばれた家族を持つ人々は、幸福度がはるかに高い。
愛情深い配偶者や献身的な家族、温かいコミュニティは、富や健康よりはるかに高い幸福度をもたらすとのこと。特に結婚生活は重要だと言います。


前回、産業革命により家族やコミュニティが崩壊したと言っていましたね。

つまり、過去2世紀の医学の進歩や産業の発達による物質面の改善で、人々は幸せになったかと思いきや、家族・コミュニティの崩壊でチャラになってしまった可能性があります。今も昔も幸福度は変わらないってことです。


このように幸福は、富や健康・コミュニティなどの客観的条件にはそれほど左右されないことがわかりました。


むしろ幸福は、客観的条件と主観的な期待との相関関係で決まるのです。

無題 - 2021年11月15日 22.22

「わーい!欲しかった荷車が手に入ったー!これで荷物がバンバン運べるようになってめっちゃhappy!」

「なんてこった、フェラーリの中古車しか買えなかった。俺は甲斐性なしだぜ...宇宙一惨めだ」


質問表がなくても当たり前のように感じるかもしれませんが、いちおう多くの数値などに裏打ちされた研究結果です。

心理学・経済学からみた幸福度の研究は、イースタリンパラドックスというのが有名です。


「幸福とは期待値」の落とし穴

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人間の期待が幸福度に影響する」という結果になりましたが、これによって幸福の歴史を調査する歴史学は、難易度が上がってしまいました。

なぜなら、価値観というのは人によって違うし、現代や過去においても大きく変わってしまったので、他人や過去の人々がどれほど幸せだったかを推察したり想像しても、うまくいかないからです。

例えば毎日シャワーを浴びる清潔な生活は、現代だとあたりまえの習慣になっていますが、中世は何ヶ月も身体を洗わず悪臭がする生活で満足できていたのです。

私たちは悪臭のする人には嫌悪感を抱きますが、チンパンジーがめったに身体を洗わなくても問題ないと感じます。逆にチンパンジーが毎日シャワーを浴びたらちょっとしたニュースになるのではないでしょうか。

つまりこれはすべて期待の問題だというわけです。

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マスメディアや広告産業は、世界中の人々の満足感を枯渇させつつあるとハラリは言います。

私たちはTVやインスタなどに出てくる俳優やモデルを比較対象にしてしまい、自分に満足できなくなっているのです。

また、第三世界における不満も、貧困や疫病、政治圧力だけでなく、先進国の標準に接することで助長されうることもあります。

ムバラク政権の退陣が例になっています。エジプト人が暴動を起こしたのは、SNSで観たオバマ政権下のアメリカ人と自分たちを比較し、その格差に絶望したからであり、ファラオ治世下で飢餓や疫病などに苦しんでいた祖先と比較することなどないのです。



幸福の空調システム

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生物学者も社会学者と同じように質問表を活用し、回答を生化学的要因や遺伝子的要因と結びつけています。


私たちの精神的・感情的世界は神経やシナプス、セロトニンなどの生化学物質から成る仕組みによって支配されていると生物学者は主張しています。

人間が幸せを感じるのは、体内に生じる快感によるものだというのです。

実のところ、お金や恋人に反応しているわけではない。その人は、血流に乗って全身を駆け巡っている様々なホルモンや、脳内のあちこちで激しくやりとりされている電気信号に反応しているのだ。

しかもですね、人間の体内の生化学システムは、まるでエアコンのように幸福の水準を一定に保つようにできているらしいです。快感は永続せず、そのうち不快感になっていく。極端に幸福にも不幸にもなりません。

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エアコンの温度設定が25度の人もいれば10度の人もいて、幸福レベルは一人ひとり違います。ちょっとしたことで幸せを感じるひとは温度設定が高めなのでしょう。


例えば結婚に関してもセロトニンやドーパミンなどが結婚関係を生み出し、それを維持するとのこと。

幸福度の温度設定が低い人は、たとえ結婚しても独身時代より幸せになれるとは限らないというわけです。


とはいえ生物学者は、結婚や離婚などの心理的要因や社会的要因が幸福度になんら影響がないと主張しているわけではなく、感情の振り幅の範囲内で影響を及ぼしうると言っています。


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テンションが上がったり、「あ〜嬉しいな〜」と感じることが、生物学的な要因によるという理屈は、確かに納得いくような気がします。朝日を浴びると幸せホルモンが出てポジティブになれるっていいますもんね。

しかし、そうなると歴史上起こった革命などの激変は意味がなかったということになってしまいます。

フランス革命のあの混乱や恐怖や流血は、民衆の幸福度を少しも増やさなかったということです。もちろん、当時の民衆は「この社会変革はきっと幸せをもたらす」と信じていたのですが。


むなしいですね(つД-`)


とはいえ、脳の生化学的特性の理解と適切な治療の開発に全振りすれば、幸福度を高めるのが分かったので、革命など起こさなくても人々を格段に幸せにできるわけです。

「えー、めっちゃ効率的やん」と思ってそんな未来を想像してみると、なんかこうディストピア感しかないのはなぜでしょう。




幸福とは「意義」だ

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生物学的前提に基づいた幸せの定義に、意義を唱える学者もいます。

幸せかどうかは、不快な時間が快い時間を上回ることではなく、むしろ自分の人生が有意義で価値があるものとみなせるかどうかにかかっているというのです。

・子育てはめちゃくちゃ大変だけど、子供はなにより幸福の源泉だ。
・処刑されたけど、日本を良くするために自分の信念を貫き通した。
・全然評価してもらえないけど、自分の好きな絵を好きなように描いた。

あ〜これもわかる。

人生の最後に「人の役に立てた」とか「悔いなく生きた」とかしみじみ感じながら死ねたらいいよな...って思いますもんね。

そういう意味では、現代より中世の人たちは幸せだったでしょう。

中世の人たちは「宗教」という死後の世界についての集団的妄想の中に人生の価値を見出していたので、それが打ち破られさえしなければ幸せでした。


そう考えると、人々が自分の人生に見出す意義は、すべて妄想にすぎないということになります。

・中世の人々にとっての死後の世界における意義
・現代人にとっての人間至上主義的意義や国民至上主義的意義
・国のために戦う自分の人生に意義があると言う兵士
・会社を設立することに人生の意義を見出す企業家

中世・現代に関わらず、みんな妄想に取り憑かれているのです。

それならば、幸福は人生の意義についての個人的な妄想を、その時々の支配的な集団的妄想に一致させることなのかもしれない。

例えば、「起業する」というのがビジネス界隈での流行というか流れみたいなところがありますが、

そんな流れに乗って、「ベンチャー立ち上げて成功して、40代でFIRE(早期リタイア)することを目標にせっせと働く」

そんなことに幸せを見出せるというわけだ、とハラリは言っていますが、それはなんとも気が滅入る結論だともしています。



「ありのままに」は幸福とは違う

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さて、幸福は「生物的システム」と「人生への意義」に基づくという2つの見方がありましたが、いづれにせよ主観的感情で幸福度は判断できます。


現代においては自由主義なので、個人の主観的感情で幸福度を測るのは理にかなっていると言えます。

私たちは、「自分に正直でいるべき」「心のままに行動してみよう」と個人の感情を重視するよう教え込まれてきたので、自分が幸せかどうかも自分で判断できると考る傾向があります。

ところが、歴史上、宗教やイデオロギーは善や美、正義については客観的尺度があるとし、凡人の感情や嗜好は当てにならないとしていたのです。


ヘロインを中毒者は「ヘロインを吸っている時が一番幸せだよね」と口を揃えて言いますが、キリスト教の立場からヘロインは幸せを手に入れる鍵だと言っていたでしょうか?

これは人間は生まれながらにして罪深く、簡単に悪魔に誘惑されうるということを証明しているに過ぎません。

ですから、宗教や哲学は、幸福に大して自由主義とは異なる探究方法をとってきたのです。


仏教でも幸せは感情に起因するとしています。しかし自分の感情は全て束の間であることを理解し、そうした感情を追い求めることをやめた時に初めて、苦しみから開放されるという結論に至っています。


こういった考え方は現代において自由主義の文脈に書き換えられてしまいます。

ニューエイジ運動によって「富や地位のような外部の成果を追い求めるのをやめて、内なる感情に耳を傾けるべきだ」と主張します。

外部の成果が幸福とは無関係だという点は仏教とニューエイジ運動は意見が一致していますが、ブッダは加えて、内なる感情の追求も真の幸福とは無関係だと教えています。

自分の感情に重きを置くほど、その感情を渇愛するようになり、苦しみも増すものなのです。


ということは、今まで述べてきた「期待が満たされるか」「快い感情を味わえるか」どうかはたいして重要ではないかもしれないね。

ハラリはちゃぶ台を返して、この章を締め括っています。(つД-`)

歴史理解の欠落

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幸福の歴史って、まだ研究が進んでおらず今は初期化説を立てている状態なので、結論を出すにはまだ時期尚早のようです。

歴史のほとんどは偉大な人物や帝国の勃興や滅亡、テクノロジーの発見などについて語っているものの、それらが人々の幸せや苦しみにどのような影響を与えたのかは言及していません。

ハラリもこれが歴史理解にとって最大の欠落だと言っています。


私たちは今は価値観の違いを念頭に置きながら、想像するしかないのですよね。



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