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サピエンス全史をかる〜い感じでまとめてみました【第20章】

こんにちはー! サピエンス全史のこのnoteもやっと最終章になりました^^

「『サピエンス全史』いいよ!」

とおすすめされて数年…。こんな分厚い本を読破する自分の姿を想像できず、二の足を踏んでいました。

仲間と週1回、1章づつ読んで感想を話しあう

☝️これのおかげで、だた漠然と読むのではなく内容を深めながら読むことができ、学生の時には苦手だった世界史の面白さを味わい、すっかり歴史が好きになりました。

第20章 超ホモ・サピエンスの時代へ

ホモ・サピエンスは自然選択の法則に支配されていて、どれだけ頑張っても生物学的に定められた限界を突破できないと考えられてきました。

しかし、現在ホモ・サピエンスはその限界を超えつつある、というのが今回のテーマです。

知的設計の産物

キリンの首が長いのは、太古のキリンが首の短いものより長いもののほうが食べ物にありつけたから、つまり自然選択の影響下で進化してきたからです。

そんなか、およそ1万年前にサピエンスは知的設計の技能で自然界には存在しない生き物を生み出します。

それは一番肥えたメンドリと一番動きの遅いオンドリをつがわせて、肥えた動きの遅いニワトリの血統でした。


とはいえ、自然選択の過程を迂回したり加速させたりはできたものの、遺伝子レベルで新しい特徴を導入することはできませんでした。


ところが、今日の科学者たちは自然選択の法則を破り、遺伝子工学を使って生き物を操作しています。

ウサギのDNAに蛍光クラゲの遺伝子を移植したウサギの「アルバ」が例として挙げられています。


このアルバは、40億年の自然選択を経て生命が知的設計に支配されるという、新しい宇宙の時代の前哨戦だとハラリ は言います。

インテリジェント・デザインという、知性を持つ存在によって生命や宇宙が設計されたという説があります。これは進化論を否定していたりするので、生物学者たちとIDer(インテリジェント・デザイン論者)はバチバチ議論を戦わせています。

余談ですが、ID論は学校の道徳の授業で扱われていることもあり、宗教の考え方と比較したりして深堀りすると面白いですね。

過去について生物学者は正しいが、皮肉にも、未来についてはインテリジェント・デザインの提唱者が正しいのかもしれない。

未来は知性によってサピエンスがデザインされていく。なぜなら、
・生物工学
・サイボーグ工学
・非有機的生命工学
この3つの知的設計は、どれも自然選択に取って代わりうるからです。


では、この3つの知的設計について見ていきましょう。


生物工学で超サピエンスが誕生する?

生物工学とは生物の形態や能力、欲望の改変を目指す、生物学的レベルでの人間の意図的な介入のことです。遺伝子の移植などがあります。

生物工学自体は、何千年も前から行われているものです。

雄牛を去勢して攻撃性を弱めたり、男性を去勢してソプラノ歌手にしたり、後宮に仕える宦官にしていました。

ですが、近年の生物工学は細胞や核レベルで生物の仕組みの理解が深まったため、昔では想像もつかないくらいの可能性が広がりました。

本書に掲載されていた画像は白黒だったのであまりピンとこなかったですが、カラー写真でみるとだいぶ生々しいですね…

こういう技術で、「人魚」のような伝説の生き物も作ることが可能になりそうですね。

生物工学で起こる問題

このように科学が自然に取って代わるという発想は、当然倫理、政治、イデオロギー上の問題が多数発生します。

例えば、人間のクロームが作られ、それを人間兵器や奴隷として扱う未来を危惧して反対運動する人たちや、遺伝子実験に動物を使うことを非難する動物保護団体の人たちが出てくるわけです。

こういった観点から、私たちは遺伝子工学の可能性を一部しか生かしきれていません。

遺伝子工学で操作されているのは植物や菌類、昆虫といった「政治的なロビー活動が行われない弱者」たちです。

乳牛や豚などの数種の哺乳動物に対して、業界の売り上げ低下問題を救うべく遺伝子操作に成功しましたが、遺伝子操作された動物に由来する食品はなかなか認可が下りないもようです。


遺伝子レベルで「仕方ない」と諦めていた問題が…

「浮気性は治らない」的なことはよく言われますが、乱婚型のハタネズミの遺伝子を操作することで、なんと単婚型にできたらしいです。

こんなことができるなら、社会構造も遺伝子工学で改変できる日も、もしかしたら来るのかもしれませんね。


マンモスが復活できるなら、超サピエンスを設計すればいい

絶滅した生物の復活という、「ジュラシック・パーク」のようなことが現実になりそうです。

ハーバード大学の研究チームは、永久凍土の中で凍結されていたマンモスのDNAを抽出することに成功し、この遺伝子を操作して外見はマンモスと区別がつかないゾウとマンモスの雑種を作り出そうとしています。


なんならネアンデルタール人のゲノム解析が完了してるというのだからびっくりです。復元したDNAをサピエンスの卵子に移植して、3万年ぶりにネアンデルタール人の子供を産むことが可能なのです。すご!

●生きたネアンデルタール人の研究をすることで、サピエンスの起源や謎のが解ける!
●ホモ・サピエンスがネアンデルタール人を滅ぼしたというなら、再生させてあげる義務がある!
●ネアンデルタール人にサピエンス2人分の単純作業をさせたい!

ネアンデルタール人が本当に復活したら、みんな色々やってみたいようです。


でも、マウスのゲノムとサピエンスのゲノムって、塩基という遺伝子情報の数がサピエンスがたかだか16%程度しか多くないそうです。

それならサピエンスも、マウスの行動様式を変えられたように、もっと優れた・むしろ全く違うものに変容させることが可能なのではないでしょうか。

なんかそのうちイケそうですよね(・ε・`)


技術的な障害はなさそうですが、倫理的・政治的異議があるせいで超人研究の進展は遅れています。

とはいえ、そんな倫理的主張が引っ込むのも時間の問題だとハラリ は言います。

例えば、健康な人の記憶力を劇的に高める余禄まで伴うアルツハイマー病の治療法を開発するとしたら、どうなるか? それに必要な研究を止められる人などいるだろうか? 
そして、その治療法が開発された暁には、その使用をアルツハイマー病の患者だけに限り、健康な人がそれを使って超人的な記憶力を獲得するのを防ぐことのできる法執行機関など、あるだろうか?


サイボーグ工学で、人間が「草薙素子化」する日がくる


サイボーグは漫画とかSFでおなじみですが、有機的な器官と非有機的な器官を組み合わせた生物のことです。

これをバイオニックといいます。

『攻殻機動隊』でいう「義体」です。草薙素子がその義体を駆使して戦う姿がめちゃくちゃかっこ良いんですよね。

でもよく考えると、メガネやペースメーカー、なんならイヤホンなどの電子機器を身につけている現代人はほぼすべてバイオニックと言えます。

ある意味、パラリンピックの義手や義足の選手だけが特別ではないって思えてきますよね。


https://engineer.fabcross.jp

昆虫の形をした盗聴器などのスパイロボットはアニメなどでもおなじみですが、アメリカ軍の研究機関では電子チップや探知機を昆虫に埋め込んだ昆虫サイボーグや、サメのサイボーグを開発しているらしいです。

サピエンスもサイボーグ化されつつあって、「バイオニック・イヤー」と呼ばれる埋め込み式の補聴器や、目の不自由な人の目の内部にマイクロチップを埋め込み部分的に視力を獲得できる「網膜プロテーゼ」も開発されています。

最新のバイオニック・アームは思考で動くなんてことにもなっていますが、ほどなく触覚も取り戻せることさえ可能になると言われています。

現時点でのバイオニック・アームは本物の腕には遠く及びませんが、今後はバイオニックによって部分強化されたアスリートや軍隊ができるかもしれません。

テクノロジーによって、映画や漫画で観たSFの世界がまさに訪れてようとしているのを感じますよね。

脳とコンピューターを直接結ぶ双方向型のインターフェイスを発明中だそうで、もうそれ攻殻機動隊やんけという状況にすらなっています。

「攻殻機動隊」も「サイボーグ009」も、サイボーグ漫画では機械であり人間であるという葛藤を描いていることが多いですが、やはり現実世界でもそのような問題は必ず起きるでしょう。

記憶をコンピューターで管理されているサイボーグの意識やアイデンティティはどうなっていくのでしょうか。もはや人間ではない全く別の生き物として捉えられていくのかもしれません。考えるともう頭がパンクしそうです(´;ω;`)

サイボーグ戦士たちはいつだって切ない表情をしている。企業広告ですら笑顔を見せないのだ。


非有機的生命工学で脳は再現できるのか

知的設計の3つ目は、電子生命体のように完全に非有機的な存在を造り出す非有機的生命工学です。

コンピュータサイエンス界隈では、遺伝進化の手法を模倣する試みが行われているそうで、作り手から完全に独立して、自由に学習したり進化するプログラムを作ろうとしています。

インターネット上で自己複製を行うコンピューターウイルスは、そのプロトタイプといったところです。


コンピューターは「人か否か」問題

新たな進化によって生み出されたそれらのプログラムを「生き物」と捉えるのか?この領域でもこういう事が問題になってきます。もし自己感覚や意識を持つプログラムが「人間」と同等にみなされた場合、消去したら殺人罪になってしまう可能性もあるわけです。

ちなみに欧州では「ヒューマン・ブレイン・プロジェクト」という、人間の脳を解明し、コンピューター上に完全な人間の脳を再現することを目指しているそうです。

脳疾患を診断・治療するのを目的としており、10億ユーロの補助金がでている欧州サイエンス界の期待を背負ったプロジェクトですが、心はデジタル環境では機能しないといった批判もあります。実際研究もあまり進んでいないみたいですね…

とはいえ、私たちの能力は爆速で発達しています。生物学を超えて今後もますます自分の身体や心の内側にある世界を進化させていくのでしょう。

そうなると、多くの分野が現状ではいられなくなってきます。


倫理問題とギルガメシュ・プロジェクト

今までの説明でもちょこちょこ書かれていたのでお分かりかと思いますが、生物工学やサイボーグ、非有機的生命には「倫理問題」という難問があります。

法律家はプライバシーとアイデンティティーの問題を考え直さなければならず、政府は医療と平等の問題の再考を迫られ、スポーツ団体や教育機関はフェアプレイと成績を再定義する必要があり、年金基金と労働市場は60歳がかつての30歳に相当し得る世界に適合するように再調整せざるを得ない。

各自のDNAに適合した治療を行う個別化医療が始まり、ほぼ完璧な医療がすぐ目の前に来ています。しかし医療の発達においても、DNAが関係しているとこんなにも多くの問題がでてきます。👇

・保険会社は契約者のDNAに無謀な行動する遺伝子傾向が見つかれば、料金を値上げする権利はあるのか?
・雇用主は履歴書ではなくDNAを提出させる権利はあるのか?
・雇用主がDNAを採用材料にした場合、私たちは「遺伝子差別」を理由に告訴できるのか?
・新しい生き物を開発したら、そのDNA配列の特許を登録できるのか?

とはいえ医療が病気の予防と治療をしている限りは、なんだかんだで問題なかったのですが、医療が人間の能力を高めることに専念するようになったら…。新しい超人エリート層が誕生するなど、これまでで最も不平等な社会がうみだされるかもしれません。


ほとんどのSFは、自分たちに似たサピエンスが優れたテクノロジーを享受する世界を描いています。こういう物語の軸となるのは倫理的・政治的ジレンマですが、これも未来という架空の環境に、自分たちの感情的・社会的緊張を再現しているにすぎません。

未来のテクノロジーの持つ真の可能性は、感情や欲望も含めて、ホモ・サピエンスそのものを変えることだとハラリは言います。

真の未来は当然ながら私たちの理解を超えており、正確に描ききれないため、そんなSFはめったにお目にかかれません。


フランケンシュタインは予言だった

有名なサイエンスホラー小説『フランケンシュタイン』では、科学者が生み出した人造人間が言うことを聞かなくなって惨事を引き起こすという物語が描かれています。

一見するとこの物語は、人間が神の真似をして生命を創り出そうとすれば、罰を受けるだろうという警告のように見えますが、「もっと深い意味がある」とハラリは言います。

それは、私たちことが最高の存在で、私たちを凌駕するような存在は決して現れないだろうということを意味しています。

生物学的な大惨事のような番狂わせがなければ、テクノロジーの発展によりこの世界は全く異質な存在に取って代えられてしまうという「終末」を、私たちは受け入れがたいのです。


私たちがしていくべきことは?

取って代わるとか色々言いましたが、いくら未来を予想しようとしても、その通りには行かないということは、歴史が散々物語っています。

私たちが真剣に受け止めなければいけないのは、歴史の次の段階には、テクノロジーや組織の変化だけではなく、人間の意識とアイデンティティーの根本的な変化も含まれると言う考えだ。

ハラリは、「私たちは何になりたいのか」この疑問と向き合うべきだと言っています。

人間の不死を目指す「ギルガメシュ・プロジェクト」は病気を治療し、人命を救うためにやっているという大義名分によって正当化されています。そしてこれらの人間強化プロジェクトはギルガメシュ・プロジェクトに便乗しているのです。

だから、なぜゲノムを解析するのか、なぜ脳とコンピューターを繋ごうとするのか科学者に聞くと、そういった紋切り型の答えが返ってくるのでみんな異論ができません。

サピエンスの性能を高めるプロジェクトは倫理的観点からあっさり中止されると想像されがちですが、実はそうでもないんです。むしろもう止められないんですね。


そんな状況の中で、唯一私たちができることは、科学が進もうとしている方向に影響を与えることです。

それが「自分が何を望んでいるか」考えることだと、あとがきでも語られています。

取るに足らない存在だったホモ・サピエンスは、いまでは神になる寸前までの能力を手に入れました。

しかし、その過程で戦争や生態系の破壊など多くの犠牲を払ってきたのにもかかわらず、それでもまだ満足できず、その力を何に使えばいいかもわからないのです。

自分が何を望んでいるかわからない、不満ばかりで無責任な神々ほど危険なものはないと、ハラリは締め括っています。

「危険な神」って、政府に不満ばかり言って選挙に行かないのと一緒ですね。選挙は自分がどうしていきたいのか、未来における自分の考えをまとめるいい機会になるなぁ。もっと考えて投票しよっと。


サピエンス全史を読破した感想

サピエンス全史のおかげで苦手だった世界史に興味を持ったと冒頭でいました。

自分の世界を広げる意味で、これもとても大きな変化でしたが、歴史を学ぶというより、現在の自分にはない価値観を知ったり、生きること死ぬこと、幸せについてなど考える機会をくれた本でもありました。

特に「現代は平和になったのか?」「幸せとは何か?」という明確な答えがない問いについて、答えがでなくても考え続けたり他の人と意見を交換することはこれからもしていきたいと思います。

コロナが来なかったら、この本の読み方も若干変わってきたかもれないですね。

ホモ・デウスも買いました!

人間が神になるという話をしているようですが、今回の20章とはまた別の切り口で語られているようで、楽しみです^^













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