黒よりも暗い -14-

自分を変えようと思うと体が焼けるように痛い。体力の消耗が酷い。体の隅々まで激痛である。四六時中体が辛い。それでも必死である。今までの苦痛から脱出できるのであればこれくらいの苦痛は大したことはない。いやこの苦痛はに気付いていないのかもしれない。とにかく必死である。全身の皮膚が剥がれていくようである。細胞ひとつひとつが痛む。そもそも細胞が動いていなったらしい。動かし初めて気付く。めまいがする。体が重い。息が苦しい。生きているだけで辛い。一秒一秒が辛い。こんなに辛いなら死んだ方がマシである。気休めになるようなものはないだろうか。ふと思う。異界を観察しようか。私の周りは景色が狭すぎる。1km歩いたところにまた違う妖怪が群れをなして住んでいるようだ。見た目は人間とほぼ変わらない。表情が無いのである。人の不幸を見ると不気味なほどニヤつくのが印象的だ。ここでは年齢による成長はあまり見受けられない。見た目だけが老けていくようである。当人はあまり気付いていないらしい。若者でも優秀な者は多い。しかし、優秀な若者ほど日の目を見ていないらしい。ただ歳を重ねた者達が群集を統治しているらしい。何か不思議な力でもあるのだろうか。優秀な若者も自身が優秀だと気付いていない者も少なくない。集落全体がとても薄暗く見える。私が居る場所とあまり変わらないように見える。周囲への気遣いは皆無。年長じゃは自分のことしか考えない。それが当たり前なのか年配層も同じだ。日々自分が満足できればいいという感じだ。下の層はそれを見ていても何も感じないらしい。外から見ていて私は歯がゆい感じがしたが、それでこの集落は成り立っているらしかった。特に奴隷制度というものもなく餓死者などもなくそこそこ平穏である。皆それで納得しているようだった。今日も周囲を気にすることなく上の層が自分本位に行動をする。この集落は年齢を重ねるごとに偉くなる制度を採用しているのかもしれない。でなければふざけた行動であると私は感じていた。誰も気にしない。当人もふざけた行動をしていると気にしていない。まさしく妖怪である。醜い行動を目の当りにし眩暈を起こしてしまう。嫌気がさすので他も見てみることにした。若者である。少なくとも年配の醜い妖怪よりかは優秀そうに見える。容姿も綺麗である。男、女ともに。しかし大人しい。なぜこれほど優秀なのに呆れてしまうほど愚者の下で生きるのか私にはまったく理解できなかった。それとも水面下でいつか当人たちが生きやすいようにするために企て辛抱しているのだろうか。しかし、そのような匂いは私には感じられない。まだ若いから大丈夫だと思っているのか。それともそもそもあまり感じていないのか。私がその身になると将来が恐ろしくてしょうがなく感じるが、私は初老に近い歳である。今だからこそ感じ取れるのかもしれない。若者は今が楽しければよい。少なくとも若者だった私はそうであった。おそらく若者でキレる者は疾うに行動を起こしているのかもしれない。そこから旅立ったり、絶対に誰にも企てを見抜かれないように演技をしていたり。この集落は表面的には大人しいが、なんだかその中身は非常に暴力的に感じる。非情である。感情が著しく乏しい。脳の発達があまりされていないのであろうか。それとも統治者に洗脳されているか。ところどころニヤけている。まるでペットに餌をあげる前のアピールのように。この妖怪たちは意思がないのだろうか。考えて行動をしているのか。しかし、自分の不利になると感じると露骨に怪訝な顔をし、時には狂暴になる。どちらかと言えば動物なのだろうか。特に今の生活をより良いものにしていこうという気もさらさらないらしい。疾うに過ぎ去った町に棲みついているというふうに見えるが、どうやらイチから町を作ったらしい。なんなんだこの町は。薄気味悪く、かと言って凄まじいほどの劣悪もない。それでいて自分で身を投げる。これは儀式なのか。誰も止める者はいない。かなり身を投げている。それを見ても誰も何も感じない。統治者も気にしていないようだった。この集落は政が機能しているのだろうか。しているらしい。とても不思議だ。統治者が賢い者なのだろうか。とにかく自分だけが満足のいくように統治する。完璧に。クーデターも出させない。それだけは凄いと感じた。ふと、白髪混じりで小太りの男を見かける。どうやらその男も独りらしい。この男も周囲に迷惑をかけ平気で行動している。しかしよく見ると怯えてみるようにも見えた。どうやら虚勢をはっているようだった。滑稽だった。誰も気にしていない。だが怯える目で周囲を見渡す男。このような男ばかりであった。とにかく虚勢をはるだけで精一杯な感じであった。それだけこの集落では競争が激しいのであろうか。私にはそう見えない。しかしあの怯えた目から感じるのはどうやらこの集落は何かしらの強制的な力が働いているのだろう。微かに可哀そうで同情に似たようなものも込み上げてきた。このまま見続けると既に腐っている私でもさらに腐敗していきそうで辛く目を逸らした。私だったらこの集落で生きたくはないとすぐに感じた。さまざま世界があるものだとしみじみと感じた。空を見上げると雲が幾重にも重なりあっており苦しそうであった。哀しみの集落であった。

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