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小規模サウナの台頭は時代の要請だった


※当アカウントから発行する記事は、温浴施設経営者向け有料メールマガジン「日刊アクトパスNEWS」(https://aqutpas.co.jp/mailmagazine/)の過去記事を再編集したものとなります。

(執筆日:2022/1/22)


「サウナは一過性のブームなのではないか?」と言われることが増えています。

確かに、流行りに乗ってやってきたビギナー客は、一定の期間を経れば他のブームに流れていくと思います。しかし、ブームでやってきた新たな客層の一部は固定ファンとなる可能性があり、この客層にいかにリピートしてもらうかが業界全体の課題だと考えています。

さて、今回は小規模サウナの登場について考えてみたいと思います。


(1)12年前に課題となっていたこと


 2009年に「小規模温浴施設が求められる時流」というブログ記事を書いたことがあります。
https://spa-net.cocolog-nifty.com/aqutpas_blog/2009/05/post-c2e3.html

かつての温浴施設は、集客力・競争力を高めるためにより大型化を志向した結果、不動産コストが安くて大規模敷地が確保しやすく、かつクルマでのアクセスが便利な郊外立地が主戦場となっていきました。

しかし高齢化が進むことによって車の運転をしなくなる人が増え、加えて首都圏では若者のクルマ離れも進み、日常の交通手段は徒歩、自転車、公共交通機関。必然的に移動距離は短くなり商圏の縮小が起きます。

日常型の温浴施設は、再び住宅街や駅に近接した立地条件の方が有利な時代になっていくのではないか、と予測したのです。

予測はしたものの、当時は小規模温浴施設の具体的な形をイメージすることがどうしてもできませんでした。

当時は500坪以上のスーパー銭湯が当たり前で、そこに岩盤浴やチムジルバンなどを加え、さらに「大きくて強い」施設にしていこうというトレンド。面積を縮小するのは競争力を棄てることになってしまうと感じていました。

以下当時のブログです。

ただし、温浴施設というのは100坪でも2,000坪でも相似形で自由自在につくれるかというとそうではありません。

銭湯、スーパー銭湯、健康ランド、日帰り温泉…業態によってバランスの良い施設面積というものがあり、それぞれが標準的なビジネスモデルとして検証された結果ですので、それを崩すというのは容易なことではありません。

また、事業規模に関わらず、一定のコストがかかるものがあります。代表的なところでは温泉掘削です。

温泉の掘削はその掘削深度によって、数千万円から1億円以上のコストがかかります。

いくら全体の事業費を圧縮しようとしても、温泉掘削自体のコストは圧縮しようがないため、事業費全体に占める温泉掘削のコスト比率が上がり、他の部分でそれを吸収するのは非常に難易度が高い作業となります。


「大きくて強い」を志向し続けた先は絶滅前の恐竜に行きつく。

時代の変化に対応するためには小動物になっていく必要がある。

しかし小規模施設の成功モデルが存在しないし、天然温泉なしで集客するのは難しい…

そんな悩ましい気持ちをブログに綴ったのが2009年だったのです。

2007年にお手伝いした、長湯温泉かじか庵さんの新築日帰り温浴棟「ゆの花」は116坪でした。内風呂に洗い場、浴槽3種、セルフロウリュサウナ、そして露天風呂、岩盤浴に貸切個室風呂。

設計を担当したアクアプランニングさんが、通常の温浴施設とそん色ない要素をギュウギュウに詰め込んで、重箱の隅をつつくように面積を削って削って達成したのが116坪だったのです。しかし、「ゆの花」は旅館との複合施設であり、炭酸泉で名高い長湯温泉ブランドがあるからやれたことで、大きなスーパー銭湯と競争するような場所だったら、実現できなかったプランかもしれません。

(2)サウナマルシン


 2013年に、笹塚にあるサウナマルシンさん、現在の天空のアジトマルシンスパのリニューアルをお手伝いすることになりました。

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