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雨に煌めく苔森

2021年6月、雨の北八ヶ岳白駒池。
苔森が広がるこの白駒池周辺の散策には雨が最高にマッチする。
駐車場から森の中へ10分も歩けばまさに某映画のような神秘的な世界が広がっている。

よく雪が降る様を『しんしんと降る』と表現することがある。
私は雪国出身ですが、本当に“しんしん”と音がするのだ。

雪は積もってゆくと周りの音を吸収してくれるので、雪に囲まれた山間の民家はまさに静寂に包まれる。夜に凍てつく窓を開けて外の様子を窺うと本当に雪が“しんしん”と降っているのが体感できる。

この北八ヶ岳の溶岩台地に広がる広大な苔森も少し似たようなところがある。

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街のアスファルトに雨が当たる無機質な雨音。
それがこの苔森では雪国でしんしんと降る雪のように独特な音がする。地面を覆いつくすような苔のカーペットが雨を受けて、なんとも表現できないような美しいBGMを奏でている。もちろん美しい歌声を惜しみなく披露しているミソサザイなど野鳥の囀りもそこに加わる。

こんな雨の日は登山客、散策客も少ない。

登山や散策は目に見える美しい風景はもちろん、この耳に入ってくる自然の呼吸音に包まれる時間がたまらなく魅力的だ。そこに土や苔、木々、葉、花など嗅覚を幸せしてくれる要素も加わり、それによって下界・外界の雑多から完全に解放される感覚がある。

そして頬で風を感じ、冷たい雨が顔を、手を濡らす。
そう、まさに五感が喜んでいるのを実感できる。

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この原始の森は朽ちてゆくものと新たに生まれてくるものの交差点、まさに生命のクロスオーバー。
朽ちていくものは新たな命の源になる。

それがこの自然、地球、宇宙の普遍的な法則。
自然を慈しむことによってこの普遍的な法則に改めて気づかせてくれる。

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駐車場から白駒池まで、早い人なら15分くらいで着くであろうか。
この日は白駒池周辺を4時間ほどかけて撮影。雨の中の撮影でしたが全く苦ではなかったし、あっという間に時間が過ぎたような感覚。

「もうこんな時間か…」

この素敵な場所では時間軸が下界とは違うようだ。



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