１億円の低カロリー　#ショートショートnote杯

「息子の田中正人を探しています」
「見つけていただいた方には、1000万円をお支払いします」
　こんなSNSの投稿を見つけた。連絡先が実家の電話番号であり、俺のことで間違いない。

　親父の急死により大学を中退した俺は、妹の学費を稼ぐために働き始めたが、すぐに嫌になり辞めた。家族に何も言わずに、家を出たのが半年前になる。

　だが、家族は、自分たちを捨てた俺を探してくれている。すぐには払えるはずのない高額な懸賞金も――。俺の足は、実家に向かい始めていた。

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　突然現れた俺を、母は、柄にもなく抱きしめてくれた。

　その直後、後頭部に痛みを感じた。朦朧とする意識の中で、後ろを振り返ると、妹が割れた花瓶を持って立っていた。

　意識が遠のいてくる。ぼんやりと母の声が聞こえた。

「若い身体を１億円で欲しがっている方がいるのよ。懸賞金も払う必要がなくなったし、低カロリーだったわ。実家に帰ってくること、誰にも言ってないでしょうね？」