見出し画像

君に贈る火星の #ショートショートnote杯

 息子の悟が上京してから1年経った。
 月に一度の仕送りは受け取っているけれど、帰省もせず、こちらからの電話も取らない。

 少し心配になり、悟に連絡をさせる作戦を考えた。
 仕送りの中に、訳が分からない物を同封するのだ。不審に思って、連絡がくるかもしれない。

 私は、散歩中に見つけた赤くて綺麗な小石と、意味深なメッセージカードを入れた。

 ――君に贈る火星の

※ ※ ※

 その数日後、突然、悟が帰ってきた。作戦が成功したのかもしれない。

 だけど、久しぶりに会った悟は、見た目にも元気がないのが分かった。悟が好きだったお菓子も勧めてみたけれど、全く口を付けようとしない。悩みがあるのだろう。

「向こうで何かあったの? どんなことでも相談しなさいよ」

 悟は、カバンから何かを取り出して、私に問いかけた。

「ワタシが、悟に入れ替わった火星人であると何故バレた?」
 その手には、見覚えのあるメッセージカードが握られている。

 ――君に贈る火星の

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?