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009. 京都大学ラグビークラブハウス 2/3   (宇治 京都 2012)

008から続く

2.経緯

 クラブハウス建設の話を聞いたのは、2008年2月のことである。当初から準備を手伝っていたラグビー部同期の今井君から設計協力要請を電話で受けて、その検討資料をメールで送付してもらった。
送付された資料には宇治グランド内に4つの候補地が記されてあった。また、簡略な平面図が作成されていたので、それらを手掛かりとして予算や施設の使い方など(試合後のアフターマッチファンクション、パントリー、トイレなど)を検討の上改めて具体的なプランと断面図のスケッチを作成し、これらを執行幹事会で使う資料として送付したところ、程なくして当時のラグビークラブ副会長から電話があり、ラグビークラブ代表幹事3名と新宿で打ち合わせをすることとなった。現役時代、コーチとしてグランドでお会いしていた大先輩達と差しでお話ししながらお酒を飲むのは、多分初めてであり少し緊張したが、お酒のピッチが速い打合せで久しぶりに大いに酩酊した。

3.ヒアリング

 実際に最もよく使う現役クラブ会員がどのように思っているのかを知りたく思い、2008年5月に、現役選手とマネージャーの皆さんから話を聞く機会をいただいた。設備機材等の要望が多かったが、そこからは、今後クラブハウスで行われる毎日の活動が見えてくるようでした。

●現役選手の要望
 1)トイレ(大便器)
 2)ビデオがすぐ見られる環境
 3)各パートのミーティングスペース(フォワードは毎日練習後ミーティングをする)
 4)冷暖房
 5)外に飲料用の水道
●マネージャーの要望
 1)お湯がでる環境
 2)製氷機3台
 3)炊飯器(合計3升が一度に炊けるように!)

 他大学のラグビークラブハウスの使われ方、日本ラグビー協会のジャパンクラブでのラグビー関係の記念物の展示方法。また、大先輩からは45年前(1980年頃)に所属していたというイギリスのクラブのラブビーハットの写真を見せていただいた。小さく家庭的な、とても愛らしい建物で、まわりの風景にすっぽりと納まっているのが印象的だった。また、クラブ会員からご提案頂いた、「環境対策、地場産業への配慮、地域との連携。時間をかけながら、現役とOBが作り上げていく建物」というお話も大変魅力的であった。
 これらの情報を参考にして、基本設計および詳細スタディーを詰めていった。


4.コンセプト

 「3.ヒアリング」を踏まえクラブハウス設計については以下の点について留意した。

1)コスト面、使用勝手から明快なプラニングを心がけること。
2)アフターマッチファンクション(室内約60名、外部テラスを入れて、合計100名)、現役の練習ミーティング、練習後の食事など、さまざまな用途に供する大きなスペースを用意すること。
3)季節の良い頃には、気持ちの良い通風が確保できること。
4)クラブ員全員で共有できる室内となること。また、京大ラグビー部の歴史を、倉庫にしまってしまうのではなくオープンにできること。
5)小さいながらも、大きなグランドから認知できるような建物とすること。

     竣工写真(2012年4月)とスタディーモデル(2008年5月)

なお、本稿は2020年に寄稿した「京都大学ラグビー100年史」を加筆・修正したものです。日本のラグビー界だけではなく、実業界のレジェンド等も興味深い記事を機構されているので、ご興味のある方はぜひお立ち寄りください。

https://www.kiurfc100.com/100contents

*010 京都大学ラグビークラブハウス 3/3 へ続く




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