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言い換えの魔力

ゴキブリのことは、これから蟑螂と呼ぼう。これが当記事の趣旨である。

なぜ多くの人間がゴキブリを嫌うのか。あのぬるっとした黒いボディが嫌なのか。小刻みに動く触覚が嫌なのか。素早い動き? 突然飛ぶところ?

私の考えはそのどれとも違う。「ゴキブリ」というネーミングが諸悪の根源なのだ。ゴキという歯切れが悪く不潔で粗暴な響きと、ブリというこれまたスマートさのかけらもないねっとりとした響きが合わさって我々の不愉快さを刺激する。

もとは食器の裏に隠れていたり、齧っていたりしていたことから「御器かぶり(被り、齧り)」と言う名前がつけられていたそうだゴキブリ。いつのまにか「か」が抜け落ちて、不気味な名前になってしまった。もし抜け落ちたのが「ぶ」だったら「ごきかり」になれたのに。

と、いうことで私は今日から彼らのことを「蟑螂(ちゃんらん)」と呼ぶことにする。ゴキブリの中国における名前だ。中国人のネーミングセンスには感動する。ゴキブリという骨張った不気味な名前が、中国に入った途端に「ちゃんらん」という涼しくて可愛らしい名前に変わるのだ。鈴みたいな音を立てて鳴きそうだ。

ちなみにドイツ語ではアイネ・キュッヒェンシャーベと呼ぶらしい。これもいい。なんかこれなら触れそうな気がする。

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