東映特撮監督変遷part1(1987~1993)

来週配信の燃えろ!!ロボコン第37話「モモコ史上最大の危機」が今もスーパー戦隊シリーズを一手に担い続ける主力監督、加藤弘之監督のデビュー回でして、それに便乗して東映特撮監督の変遷でも語ろうかなぁ…と思っていたのですが、かなり長いことになりそう(特に1990年代)なので、ちょっとずつ今から小出しにしていくことに。始まりは「仮面ライダーBLACK」が開始し、同時に4本の特撮が放送されていて一番監督が必要とされていたと思われる1987年からとします。ちなみに脚本家についてもちょっとだけ触れようかなと思ったり。

1987年

スーパー戦隊シリーズ…光戦隊マスクマン
メタルヒーローシリーズ…超人機メタルダー
東映不思議コメディーシリーズ…おもいっきり探偵団 覇悪怒組
仮面ライダーシリーズ…仮面ライダーBLACK

この頃で特筆すべきはスーパー戦隊シリーズでして、前年度の「超新星フラッシュマン」で堀長文監督がプロデューサー業へと移行し、山田稔監督が病気療養に入った結果、「フラッシュマン」の終盤から「ライブマン」の終了までの2年間、ほぼ全ての回を長石多可男監督と東條昭平監督2人だけで撮り続けるという凄まじいローテに。一応「マスクマン」の終盤から「ライブマン」の序盤までは山田稔監督が復帰しましたが、それでも1年のほぼ全てはこの2人で撮っていますし、3話撮りは勿論4話撮りまであったりと、いくら従来の30分から25分まで短縮されているとはいえ、この2人の活躍ぶりは凄まじい(^^;この頃の活躍もあってなのか、後の作品でもたびたびこの2人は3話撮りを任されていたりする印象があります(例えば長石監督は「アギト」に参加していましたが、「アギト」で3話撮りがあった回は全て長石監督の担当だった)。勿論だからと言って作品の質が悪いわけではなく、特に「ライブマン」は「チェンジマン」と並んで80年代戦隊の名作。

「超人機メタルダー」ではパイロット版を上手くとれなかった責任を取らされてか小笠原猛監督が序盤のローテから外れたり、冨田義治監督が序盤でTVシリーズを退いた穴埋めでか、「時空戦士スピルバン」でも監督を務めた伊藤寿浩監督、そして同年に終了した「特捜最前線」より三ツ村鐡治監督がローテ入り。特に三ツ村監督は「ビーファイターカブト」まで、メタルヒーローの主力監督として活躍することに(たまに東映不思議コメディーに顔を出したりしますが)。

「覇悪怒組」では辻野正人監督がデビュー。後にスーパー戦隊シリーズにも顔を出し、「電磁戦隊メガレンジャー」では年間を通してローテに入り活躍します。

「仮面ライダーBLACK」は序盤世話しないローテが続くものの、中盤からは
「BLACK RX」までシリーズの主力となる蔦林淳望監督と、メタルヒーローから引っ越してきた小西通雄監督と小笠原猛監督の3人でローテ。後半では蓑輪雅夫監督がローテ入りし、蔦林監督の後釜として活躍します。

1988年

スーパー戦隊シリーズ…超獣戦隊ライブマン
メタルヒーローシリーズ…世界忍者戦ジライヤ
東映不思議コメディーシリーズ…じゃあまん探偵団 魔隣組
仮面ライダーシリーズ…仮面ライダーBLACK RX

年間通して4本体制という凄く忙しい時期。「ライブマン」では相変わらず長石監督と東條監督が大忙しだったり、「ジライヤ」では三ツ村監督が3話撮りを何回もこなして20本越えを果たしたりというのはあるのですが、監督の出入りに関しては特にあまりいうことが無いのでこの年はさらっと。

1989年

スーパー戦隊シリーズ…高速戦隊ターボレンジャー
メタルヒーローシリーズ…機動刑事ジバン
東映不思議コメディーシリーズ…魔法少女ちゅうかなぱいぱい!&いぱねま!
仮面ライダーシリーズ…仮面ライダーBLACK RX

まず特筆すべきはRXの終了により、この年から再び3本体制に戻ること。これによりスタッフの内、小笠原猛監督、脚本家面では宮下隼一さんと鷺山京子さんがメタルヒーローシリーズに、蓑輪雅夫監督がスーパー戦隊シリーズに合流することになり、全体的にローテが安定しました。

「ターボレンジャー」では新井清監督が参加しやっと3人体制に。今作では蓑輪雅夫監督の参加までローテの一員として尽力し、この後数年ほど年に数回、作品参加が見られます。

この年は三ツ村監督が不思議コメディーに割と参加していたからか、代わりに不思議コメディーへの参加が多かった岡本明久監督が前年の「ジライヤ」に引き続き「ジバン」でローテのメイン格として奮闘。3本体制になったことによりローテに余裕が出来たからか、今作を最後にTVシリーズを離れることになります。

1990年

スーパー戦隊シリーズ…地球戦隊ファイブマン
メタルヒーローシリーズ…特警ウインスペクター
東映不思議コメディーシリーズ…美少女仮面ポワトリン

メタルヒーローが新機軸で成功を収め、ポワトリンも関東では年間視聴率が全て10%を越えるという絶好調ぶりを見せる一方、視聴率・玩具両面(視聴率はシュバリエのおかげで持ち直しましたが)で苦戦を強いられるファイブマンという明暗分かれる年になりましたが、この年の特筆すべき事項はやはり長石監督がこの年を持って「超力戦隊オーレンジャー」までTVシリーズを離れることになることでしょうか。長石監督の実質的な後継は「鳥人戦隊ジェットマン」に1年のみメインローテで参加した特殊事例の雨宮慶太監督を挟んで、「恐竜戦隊ジュウレンジャー」で監督デビューした渡辺勝也監督と言えます。渡辺監督については以下で。またメインライターの曽田博久さんもこの後2年間に渡って東映特撮を一時離れることになります。

この他「ポワトリン」では岩原直樹監督がデビュー。この岩原監督のデビューにより、東映不思議コメディーシリーズのメインローテの一員だった坂本太郎監督の自由が利くようになり、スーパー戦隊シリーズにシフトしていく形になります。

1991年

スーパー戦隊シリーズ…鳥人戦隊ジェットマン
メタルヒーローシリーズ…特救指令ソルブレイン
東映不思議コメディーシリーズ…不思議少女ナイルなトトメス

スーパー戦隊シリーズは歴代屈指の異色作「鳥人戦隊ジェットマン」。メインライターに井上敏樹、メイン監督に雨宮慶太と珍しい面子が並ぶ一方で、坂本太郎監督が序盤に参加し、スーパー戦隊シリーズへと活躍の場を移す前準備が見られます。

そしてこの年メタルヒーローシリーズにて、こちらも渡辺監督と同様30年選手として未だ監督として活躍する石田秀範監督がデビュー。割とこの段階でも作品によって作風の変化が激しいメタルヒーローシリーズなのですが、メインローテ入りしてからも正統派集団ヒーロー→日常系ギャグロボット物→シリアスな平成ライダーと参加している作品の作風が目まぐるしく変わり、その中で熟成された独特の作風が癖になる、個人的に好きな監督の一人です(笑)

1992年

スーパー戦隊シリーズ…恐竜戦隊ジュウレンジャー
メタルヒーローシリーズ…特捜エクシードラフト
東映不思議コメディーシリーズ…うたう!大竜宮城

戦隊とメタルの間で蓑輪雅夫監督と小笠原猛監督がトレード。そして「恐竜戦隊ジュウレンジャー」では前述の通り渡辺監督がデビューし、石田監督と同じく30年選手として活躍します(とはいえ石田監督はライダー、渡辺監督は戦隊と活躍の場がはっきり分かれており、この2人が共にローテで活躍したのは「クウガ」くらいですが)。またメタルヒーローシリーズのメインライターを3年担当した杉村升さんも小笠原猛監督と一緒に戦隊へ移り、メタルヒーローシリーズは宮下隼一さんがメインを担うことに。

渡辺監督は既に「ジュウレンジャー」で6話分任されており、その次の「五星戦隊ダイレンジャー」では年間10話ローテともう既にメインローテ入りしていて凄まじい勢いで階段を駆け上がっているのですが、流石に「ジュウレンジャー」ではメインローテは任されておらず、戦隊慣れしている東條昭平監督、メタル畑から入った小笠原猛監督と、この年では不思議コメディよりスーパー戦隊の方が参加本数が多かった坂本太郎監督でローテ。とはいえ坂本太郎監督は不思議コメディと掛け持ちのためローテ入りが安定しない時期もあったため、メイン監督の東條昭平監督が2話休んだら次の撮影、を2連続でやったり、3話持ちを2回やったりと流石の活躍ぶり。

1993年

スーパー戦隊シリーズ…五星戦隊ダイレンジャー
メタルヒーローシリーズ…特捜ロボ ジャンパーソン
東映不思議コメディーシリーズ…有言実行三姉妹シュシュトリアン

この年で不思議コメディが終了し、坂本太郎監督は戦隊へ本格的に移行、岩原直樹監督も少し休止期間を経てメタルヒーローシリーズへと移行。これにより、特撮は暫く2本体制となります。

「ダイレンジャー」ではベテラン東條・小笠原・坂本に早くも追いすがる形で渡辺監督が10本担当し、凄い活躍ぶり。また「ジャンパーソン」ではアクション監督の金田治監督が本編監督を担当。後の作品でも主に武部Pが絡んでいる作品でよく名前を見かけるようになります。この翌年には特撮監督の佛田洋監督も「忍者戦隊カクレンジャー」で本編監督デビュー。

また「ジャンパーソン」では曽田博久さんが復帰する一方、レスキューポリスシリーズに感銘を受けた小林靖子さんがデビュー。先の20年と後の20年を担う特撮の名脚本家が揃う数奇な年となりました。この他レスキューポリスシリーズから参加し続けていた増田貴彦、中野睦、酒井直行に加え、当時のラノベ作家だった浅香晶も加入するなど、新進気鋭の脚本家がメタルヒーローシリーズによく見られた時期になります。

次回、大変遷期の1994~1996年の予定。

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