ペットと人間の倫理的地位について

例えば自分の飼っているペットが病気になったとする。すぐに動物病院に行って診てもらわなければ命に関わるような容態だが、当然そのためには幾らかの診察代や治療代が必要になる。

ここで、財布を手にして玄関に立った私には二つの選択肢が頭に浮かぶ。一つは、このまま愛しいペットを病院に連れて行って診てもらい診察代・治療代を払うという選択。もう一つは、その分のお金をそっくりそのまま貧困支援の慈善団体に寄付しに行くという選択。

もし、後者の選択によって一人以上の人間の命を救えるのだとしたら、私はペットのことは諦めて寄付の方を選ぶべきなのだろうか。仮に、人間の命が動物の命に対して無条件に優先するというのであれば、当然そうしなければならないということになるだろう。しかし、これは多くの人の素朴な直感には反するのではないか。

同じだけのコストでペットの命を救う選択肢と人間の命を救う選択肢がある時、当然人間の命を救う方を選ぶべきだ、というのは案外受け入れられていない価値観なのかもしれない。

そもそもなぜ人間というだけで他の動物よりも優先して倫理的配慮を受けられるのか。これを合理的に説明することは意外と難しい。人間と他の動物とはただ種が違うだけで、それ以外に何か倫理的に本質的な差異があるわけではないようにも思える。

本当に書きたいのはこの先の話なのだが、あまり書くべきことではないような直感が働いて、どうも気が引ける。

哲学に必要なのはまず第一に勇気で、私にはそれが足りない。これまで様々な問題を提起してきた勇敢なる哲学者たちに敬意を。