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本の学び

冷静と情熱のあいだ Blu


この街はいつだって
光が降り注いでいる

光は相変わらず
クーポラの先端に
止まっている

記憶が
光によって攪拌され
いくつもの光景の
フラッシュバックが
おきる


冷静と情熱のあいだ


5月になると
この本を手に取る

江國香織さんの
Rossoのでは
アオイは
雨の日に
翻弄されていた


辻仁成さんのBlu

過去に囚われながらも
“光”に
フォーカスしていた

修復士
失われた時間を
取り戻すことができる
世界で唯一の職業

画家が生きた
遠い過去を
現代に近づけ
そして未来に届ける
時間の配達人


修復士の
作品との向き合い方
職人魂が
純正を通して
とても魅力的に
描かれていて
引き込まれた


後悔のない人生なんて
あるのだろうか

ぼくはずっと後悔を
しつづけている


過去に囚われ続けた
あおい

過去を後悔しながらも
光の先を見続けた純正


辻仁成さんの
言葉を借りれば
若いときは
江國香織さんの
描かかれる
あおいという
女性像が大好きで
Rossoを
”贔屓”していたけど


人間の業を
洗い流していくような
清々しさ

しんと静まり返った
境内を
一本の箒で
掃除をしているような
静かな感動


わたしの背筋も
ピンとする


音が戻り
光が跳ね
風が吹き抜ける
光景が見えた


今は
辻仁成さんの
背景や情景描写にも
うっとり
できるようになった

おふたりの世界観は
わたしを物語へ
どっぷり引き込む

職人としての
純正は自信に満ちていて
かっこいい


作業場での
エタノールの
つんと鼻につく匂いも
漂ってくるし

筆を握りしめ
手首の力を
抜いたり
込めたり

純正の
緊張感ある
息づかいまで
聞こえてくるようだ


純正は
人生とは
後悔の連続だ
と言っていた


何度読んでも
切なくて
歯がゆくて
心臓がどきどきする


本を読みながら
左手には
ぐっと力が入る
ただ祈ることしか
できないけど


江國香織さんと
辻仁成さんの
冷静さも情熱さも
わたしの中で
永遠に
色褪せることはない


今後
おばあちゃんと
呼ばれる
年齢になっても

この本を読んで
心臓どきどき
させることのできる

冷静さと情熱さを
ずっと
持ち続けたい










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