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<号外>EURO2024 ドイツvsデンマーク       レビュー

迫力、荘厳のドイツ 機能美のデンマーク

いよいよ決勝トーナメントが始まりましたね。ナーゲルスマン監督の下、
直近の親善試合で連勝し、大国としての自信を取り戻しつつあるドイツ。
自国開催という事もあり、カタールW杯のような醜態をさらす訳にはいきません。ビッグネームに今シーズン好調だったレバークーゼン、またシュツットガルトやライプチヒの実力者を揃え、チームの代謝、バランスも良好です。クロースに文字通り花を添えられるでしょうか。

一方のデンマーク。予選リーグから披露するその組織的戦術の極致。
一つの局面に対し全員が同じ認識を持ち、コンパクトネスを作りながら
ボールの出口を塞いでいく一糸乱れぬ守備。そしてボールを奪うや否や、
ポジティブトランジションという言葉など意味をなさぬような、縦へ斜めへと雪崩のごとく相手ゴールへ迫るオートメーション。
無駄を省き、合理を徹底するその機能美は素晴らしいの一言です。


違いを作るのはやはり・・・

ゲーム展開を振り返りましょう。
10分、ハバーツの動き出しを見逃さなかったリュディガーの裏への
ロングフィードをハバーツがダイレクトで合わせ、K.シュマイケルを脅かせます。その後も12分のムシアラのキレのあるドリブル、
14分ザネの切り込みとホームのドイツはタレントの違いをアピール。


デンマークも黙ってはいません。立ち上がりからチームのメンタルは冷静そのもので、20分、アンデルセンからエリクセンへのロングフィード、23分、
効果的に前を向いたエリクセンのシュート気味のパスからメーレの惜しいシュート、29分、右に左に大きくボールを動かしてからのカットインでFKを奪取、と虎視眈々とチャンスを狙い、こちらも好戦的なファイティングポーズを崩しません。

35分には雷雨によるサスペンデッドになり、両チームがロッカールームに。唸らされたのは再会後の両チームのテンションでした。20分程の空き時間があったのですが、それまでと全く同じと言ってもいいメンタル、強度での戦いを披露してくれたのです。中途半端な中断時間、天候とイレギュラーな条件下、解説の戸田、長谷部の両氏も再開直後の入りの重要性を説いていました。
ウォーミングアップ時間が少しあったとはいえ、ほとんどブレを見せない両チーム選手達の経験値は流石としか言いようがありません。もし日本代表がW杯本番で同じような状況に出くわしたら、100%適応してくれるでしょうか。

再会後も36分、ラウムの左サイドからのクロスをハバーツがヘッド、41分、
シュロッタ―ベックのミスをホイルンドが見逃さずシュート、49分、エリクセンの芸術的ワンタッチパスからの決定的チャンス、と文字通り一進一退の攻防が繰り広げられます。

こうして見てみると、チャンスを作る、違いを作る事ができるのは
個の能力、武器であると改めて思わされます。戦術理解を前提とした
スピード、ドリブル、パスセンス、オフザボール…etc の精錬度の高さが
やはりEUROのような大舞台で輝くには必須なのだと思います。


勝負を分けたのはほんの小さなディテール

後半早々47分、アンデルセンのゴールがVARで取り消されます。直後の51分にはペナルティーエリア内でのハンドで得たPKをハバーツが決めます。ドイツMFアンドリッヒがDFラインの中央へ落ちたり、失点後、デンマークが前線へのプレッシャーの強度を上げたりと、両チーム共それまでのプランを変え、ゲームが大きく動き始めます。

58分、ラウムからのやや後方にズレたパスを、右足で引きずるようにトラップして持ち出したハバーツ、65分、パススピードの上がったデンマークの1本の鋭い縦パスからホイルンドの放ったシュート、これら2つのプレーは本当に秀逸でした。

そして67分、ノイアーからパスを受けたシュロッタ―ベックがその左脚で
巻くように、遥か前方を走るムシアラに正確なフィードを通します。このパスでこの試合の行方は決まったと言って良いでしょう。この得点後のドイツは ”守り方を知っている”、 "ゲームの締め方を間違わない" というコンセプトを忠実に遂行するかのように、危なげなく勝利をものにしました。

振り返れば47分のデンマークのゴール取り消し、51分のドイツのPKと、足先数センチ、手にかすったか否か、という共に微妙なVAR判定で、旧来の判定ではいずれも見逃されていた可能性が非常に高いものでした。

シュロッタ―ベックのアシストもかなりのプレッシャーを受けながらのギリギリなもので、

”W杯カタール大会日本戦依頼の先発”、
”調子の良い悪いに非常に波がある”、
”決定的ミスを度々やらかす”、
”彼のホームであるジグナル・イドゥナ・パルク”

等、彼を取り巻く様々な要素が引き出したキック、と言えるものでした。

ドイツホームのサポーターの圧力も画面を通じてはわからない、相当な
ものがあったに違いありません。かのマイケル・オリバーも数々の判定で
ドイツ寄りのものが多かったように思います。


互いに自分達のチームのコンセプト、スタイルを貫いた誇り高き両チームの決着は、

「神は細部に宿る」

という言葉通り、ほんの小さなディテールが分けた、そんな試合だったように思います。


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