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三十六杯目「完璧な秋」

季節のブレンド秋味(自家焙煎 珈琲散歩
焙煎度記載なし
¥650/ 100g


完璧な秋だった。
犬コロがせっせと歩き、若者が辛子色のニット帽を被り、老夫婦は空をずっと眺めている。
「春が来た、夏が来たとは言うけれど、秋が来たって聞かないわよね?」と相方が言った。
確かに秋の定義は難しく、その階調には無数のグラデーションが感じられた。
「いくつもあるんだよ。秋ってやつはね」
僕らはいとも簡単に忘れてしまう。こんな完璧な秋のことも。
犬コロはせっせと歩き、若者は辛子色のニット帽を被り、老夫婦が空をずっと眺めていた。
その日は、やはり、完璧な秋だったのだ。


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(四月一)

君は友の、澄み切った空気であり、孤独であり、パンであり、薬であるか。みずからを縛る鎖を解くことができなくても、友を解き放つことができる者は少なくない