「ずっとお城で暮らしてる」を読んで
【ネタバレにご注意ください】
読む前に、どこかで「人間の悪意を表した本」という紹介文を読んだからか、もっとあからさまにどろどろした人間の悪意が描写されてると思った。どんどん読み進めていっても2人の姉妹にはほとんど変化がなくて、何か大きなどんでん返しもない、想像した以上に淡々とした2人の暮らしが書かれていた。ハラハラするシーンもなければオチというオチもなく、期待していた分、読み終わって拍子抜けする感覚だった。
でも考えてみたらそれがきっとものすごくリアルなんだと思う。
自分とは全く無関係の誰かに対して嫌悪感を抱いたり、排除したい、苦しめばいいと思う気持ちが、誰も、自分でも気がつかないうちに自然に日常に溶け込んでいるような話だった。
無意識のうちに人を嫌って、しかもそれが周りの人に静かに浸透して同調していくような印象を持った。
あと、直接2人に何かされたわけでもないのになんで村の人たちがあそこまで2人を嫌っていたのかということを考えてみた。
もちろん殺人があった家の人間だし、当然といえば当然だけど。
でもきっと村の人たちにとっては見えないこと、わからないことが1番怖かったと思う。メリキャットは別としてもコンスタンスは家から出なかったから人の目に触れることもない。村の人たちからすれば、家から出ずに暮らし続けるなんてどうかしてるし、どんな身なりで、どんは精神状態で、どんな生活を送っているかわからない得体の知れないものに対する恐怖が絶対にあったと思う。
だから単純な嫌悪感が悪意に変わり、それがだんだんと恐怖に変わっていったんじゃないかと思う。最後の方に村の人が食べ物を差し入れたり、お詫びをしたのはシンプルに申し訳ないという気持ちだけではないはず。正体不明の人物に対して取り返しのつかないことをしてしまったという焦りがあったはず。
読み終わった瞬間「これ誰かと答え合わせしたい!語りたい!」と思いました。残念ながら周りに読んだ人はいませんでしたが。
こういう謎が残る終わり方ってそれはそれで面白くて好きだな、と思った1冊です。
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